お客さまの希望に寄り添う

コモンズ投信 伊井です。

本日は、取引所での年内最終取引が行われる大納会。コモンズ投信の仕事納めでもあります。
私は、毎年、年末になると「今年はどれくらいお客さまに喜んでいただけたのだろう。どれくらいお役にたてたのだろう。」と心の中で自分に問いかけます。

今年6月末、フィデューシャリー・デューティー宣言〝コモンズ投信の「お客さま本位の業務運営」の実現について”を発表しました。
その中でも、〝私たちが考えるお客さま本位とは、単なる投資に伴う経済的な成果だけではなく、お客さまとの長期的なお付き合いの中で、お客さまの「今日よりも、よい明日」を考える希望に寄り添い、少しでもお役に立つことを実践していくことと考えています。″と説明しています。
また、〝私たちは、商品を販売することがサービスとは考えていません。私たちは、商品を販売するのではなく、お客さまのライフスタイルをイメージして当社の価値(投資哲学、サービス、商品)を伝えていくことで、結果的に豊かなライフスタイルを実現させる手段として当社の商品が選ばれていくことを目指しています。″としています。
この一年間でこうしたことがしっかりと実現出来たのか、自問自答するわけです。

先日、社内全員が嬉しくなったことがありました。
それは92歳の男性が口座開設をされてつみたてNISAを申し込まれたことでした。
「このおじいちゃんは、どんな未来をみているのだろう。日々、どんな心の持ち方をされているのだろう。」と社員みんなで語り合い、おかげで自分たちも元気をもらった瞬間でした。

また、コモンズ30ファンドの基準価額が3万円を突破した記念に抽選で枡を贈ることを発表したところ、多数の応募と共にメッセージもいただきました。

少しご紹介させていただきます。
〝2人の息子共々、積み立てています!ワタシは老後資金、息子たちは教育資金に…ワタシの積み立てには息子たち程の夢がないかもしれませんが(笑)、まだ5歳と乳児の2人に、いつかなぜコモンズ30ファンドを積み立てたのか、話せる日を楽しみにして、これからも頑張ります!″
〝いつもお世話になっております。単なる投資ではなく、将来性のある理念のしっかりした基幹企業を支援するコモンズ30の姿勢が好きで続けております。祝3万円ですが、一喜一憂することなくしっかり続けて行き、少しでも世の役に立てればと思っております。引き続きよろしくお願いします!″
こうしたメッセージばかりでした。
すべてのメッセージに対して、感謝の気持ちで一杯です。

このようにお客さまの希望をシェアしていただけることは、直販投信ならではの喜びでもあり、改めて背筋を伸ばして業務に取り組む思いにつながります。

来年、コモンズ投信は運用を開始して10年目の節目を迎えます。
来年はもっともっと、皆さまの希望に寄り添い、少しでもお役にたてるよう、全役職員で頑張って参りますので、引き続き、よろしくお願い申し上げます。
それでは、どうぞよいお年をお迎えください。


*この写真は、コモンズ8周年イベントでのもの。
9周年は、2018年3月10日開催。
既に準備が始まっています。
ぜひ多くの方々に参加していただきたいイベントです。
1月に入りましたら詳細をご案内して参ります。
どうぞお楽しみにされいてください。
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コモンズ投信9周年イベント~未来を創る私のアクション~
2018年3月10日(土)10時~18時(予定)@コングレスクエア中野
https://www.commons30.jp/9th/
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手づくり感。。老舗蔵元とコモンズ

おはようございます&Merry Christmas! 渋澤健です。

土曜日に東京の浜松町からバスに乗り、千葉県の発酵の里こうざきに向かいました。
バス停の目の前に広がる利根川の向こう側は茨城県です。天気は、ちょっと肌寒かったですが、晴天に恵まれました!

そこから車で5分。寺田本家に到着しました。創業340年の老舗で、無農薬コメ、無添加、生もと造りにこだわっている日本酒の蔵元です。


生もと造りとは、自然界と生活してきた日本人の素晴らしい職人の技です。空気中から入ってくる雑菌や野生酵母を駆除するために、別に作っておいた乳酸で駆除するのではなく、もともと蔵の中などに生息している天然の乳酸菌が降りてきて、それを活用する手法です。

平たく言えば、良い菌が、悪い菌をやっつけてくれるのを人間が見守っている感じです。それも、手にも良い菌がついているらしく、寺田本家では蒸米造りや麹造りを素手で作業するようです。(寺田本家のサイトの「お酒造り」をクリックすると工程が写真付きで紹介されています。)

この手づくり感のおかげだと思います。お土産に持ち帰ったお勧めの「五人娘」を空けてみましたが、まろやかで、本当に美味しい!感激しました。


手づくり感を、ある意味で意識していたコモンズ投信が学べることが多々あるなと心強く感じました。

300年以上の歴史を持つ蔵元が(途中で大量生産へ舵を切って事業が困難に陥いたことで)たどり着いたところが「手づくり」であれば、持続的な価値創造を重視して「世代を超えられる」長期投資を目指している投信会社が「手づくり」を意識することは、筋が通っているのではないでしょうか。

「手づくり」では、大量生産は不可能です。でも、「手づくり」は、まろやかな味を出して感動やわくわくする楽しみを呼ぶこともできる。(実は、年によって同じ種類の酒の味が微妙に変わるようです。)

また、清潔・潔癖でガチガチになるのではなく、大らかに、自然体に「菌」を酒造工程に活用するとは、とても興味深いです。

これは、こじ付けではないですよw。
コモンズ投信の設立理念の再確認、言語化のためのグループ・アウティングに、ファシリテーターの方がアレンジしていたおかげで体験できた時間と空間だからこそ、色々な思いが交錯しました。

日中は、こんな蔵の中で、色んなディスカッションをしました。
何が、この蔵から降りてきたか。。。お楽しみに!


こつこつ♪つみたてコラム「インデックスvsアクティブ つみたてにおける違いは?」

(こちらの内容は、2017/8/26の
”コモンズのファンドでつみたてする意味”を加筆編集したものです)

今回は、「インデックスファンドでのつみたて投資」と「アクティブファンドでのつみたて投資」の違いについて考えてみたいと思います。

コモンズ投信が運用する「コモンズ30ファンド」「ザ・2020ビジョン」はいずれもアクティブファンド(決められた運用方針に基づき、市場の平均以上の利益を目指そうとする運用方法)です。

【1】「アクティブファンドへの投資」と「インデックスファンドへの投資」の違い

投資というのは、今よりも価値が高まっていくと思うものに、自分が妥当だと思った価格で資金を投じることです。

アクティブファンドに投資するというのは、「”価値がある”と思っているものの集合体」に資金を投じること、と言えるでしょう。

一方、インデックスファンド(市場平均と同じような動きをする運用を目指すファンド)への投資は、市場全体という集合体に資金を投じることと言えますが、その集合体の中身すべてに価値があるかどうかまでは考えていません。

【2】「一括投資」と「つみたて投資」の違い

上記のそれぞれの集合体の価値(Value)は毎日のように変動するわけではありませんが、価格(Price)は需要と供給の関係などで変動します。例えるならば、Aさんという農家さんが栽培しているほうれん草が、今日と明日でその品質はほとんど変わらなくても、仕入などの関係で店頭に並ぶ際には値段が違うような感じです。

このように価格が動くものに対して、自分の投じたい資金をあるタイミングで一気に投じてしまうのが一括投資で、一定金額ずつ価格の変化に応じて買える量だけを買い続けるのがつみたて投資です。

「買いたかったものを買う」という意味ではどちらの方法も一緒ですが、つみたて投資は(自動的に)価格が高いときにはあまり買わず、価格が低いときにはたくさん買える、というメリットがあります。

【3】アクティブファンドにつみたて投資をする意味

1、2、から、アクティブファンドへのつみたて投資とは、価値があると思っているものの集合体に、その価格の変動に応じて買う量を変えていける投資、ということになります。「価値があって応援したい企業(群)」に、「価格が低いときほどたくさんの応援資金を投じることができる」というわけです。


アクティブファンドでつみたてをする効果はどんなところで発揮されるのでしょうか。

これはあくまで私(福本)の個人的な考えですが、長く続けられるかどうか、というところに一番違いが出てくるのではと思っています。

”このファンドを信じて託したい”と自分で選択し、その投資先の中身も見える、運用者がどんな想いで運用しているかも知っているものに積立をするのと、”市場平均が投資では一番効率が高い”という理由(それだけではないこともあるでしょうが)で選択し、そこまで思いいれも無く積立をするのでは、つみたて投資を続けることに迷いができたり、思うように結果が出ずやめたいと思ったときなどに踏みとどまれるかどうかが違ってくると思うのです。(もちろん、アクティブファンドだからといってそこまで想い入れが無ければインデックスファンドを選んだ場合と一緒になりますが。。。)

少し話はそれますが、つみたて投資の一番のは「途中でやめてしまうこと」だと私は考えています。続けるだけでしょ?と思うかもしれませんが、これが意外に難しいのです。

続けていても殖えている実感が無くて1年程度でやめてしまったり、積立しているお金をちょっと他に回したいなー、という誘惑が働いて休止してしまったり。

そういう例をたくさん見てきました。私自身似たような経験があり、それを後からとても後悔したことがあります。

だからそんな時に、ふと立ち止まって「あれ?私どんな想いでこのつみたてを始めたんだろう、どうしてこのファンドにしたんだっけ?」ということを思い返し、自分が選んだファンドやその運用している人たちの顔を思い浮かべて「いかんいかん、これは続けなければ結果は出ないのだ」と思えるかどうか。

そして、そう思い返したときに、私たちコモンズ投信の2つのファンドは、「がんばって続けていこう」と思っていただけるものでありたいなあ、と思っています。

つみたて投資の極意が学べる!こちらの読み物もぜひ参考になさってください!
★過去のバックナンバーはこちら★
1:投資と資産形成って違うの?
2:コモンズ君のつみたてデビュー物語・上
3:コモンズ君のつみたてデビュー物語・中
4:コモンズ君のつみたてデビュー物語・下
5:インデックスorアクティブ つみたてにおける違いは?
6:コモンズ君つみたての評価額の計算の仕方
7:いつからはじめたらいいの?
8:いつまで続けたらいいの?
9:結局みんな、どうしてる?

コモンズ30ファンドのリスクと費用についてはこちら 
ザ・2020ビジョンのリスクと費用についてはこちら 


POINT最終候補者の願い

本日、ザ・2020ビジョンのお仲間のみなさま(2017年12月18日ファンド決算日時点におけるザ・2020ビジョン受益者)に、POINT(ポイント)応援先選定協力のお願いのメールを出させていただきました。

選ぶにあたり、どの団体を選ぶか困ってしまう。。。悩みます。。というお声を毎回たくさん頂戴いたします。

そこで、各団体より、「POINT受賞で叶えたいこと!」をお聞きしてみました。

ぜひ下記も選定のご参考としていただけましたら、幸いです。

POINT最終候補者の願い
~もし、POINTを受賞できたら~
<<候補者1>>
【団体名】特定非営利活動法人日本パラ・パワーリフティング連盟
【ビジョンワード】筋肉で日本を持ち上げる
【発信者名】事務局長 吉田寿子
【Webサイト】http://jppf.jp/
【事務局長 吉田寿子さん と広報などを担当する吉田彫子さん】
「もし、ご寄付を頂ければ、IPCの最高峰といわれるコーチの招聘に使いたいです。

本年からそのコーチを招聘することができるようになりましたが、資金的に難しく、本年は年3回、一回3,4日程度の指導を受けました。
それでも、選手の意識が変わり始め、出来れば、一週間程度の合宿を毎月でも開始し、東京に向けて選手強化をぜひ、実行したいです。」







<<候補者2>>
【団体名】(一社)日本知的障害者水泳連盟
【ビジョンワード】水泳を通じて世界の舞台へ
【発信者名】事務局長 黒田 岳史
【Webサイト】http://jsfpid.com/
【事務局長の黒田岳史さん】

「大会などで実際に競技を多くの方々に見ていただきたく考えています。
応援者となるみなさまに表彰のプレゼンターをお願いするなど、選手と触れ合えるようなイベントを考えています。
連盟の大会では種目ごとに表彰をしているので、1日に30種目以上行います。
その中のいくつかの種目をお願いし、選手と触れ合い、覚えてもらう。まずはそのようなことを足がかりに競技の認知を広げるのに役立ててたいと考えています。」
【選手たちによる色紙:レース後に表現がうまくできない選手たちの中には、絵がとっても上手な選手も】
選手たちの練習風景
<<候補者3>>
【団体名】(特)日本視覚障害者柔道連盟
【ビジョンワード】視覚障害者柔道のさらなる未来
【発信者名】専務理事 遠藤義安
【Webサイト】http://www.judob.or.jp

「この夏に、コモンズPOINTの寄付金も活用して、こども向け体験教室を開催さていただくことができました。選手たちと一緒にこどもたちに視覚障害者柔道を体験してもらうことができ、また視覚障害についても知ってもらう機会ともなりました。
ただし体験用に使用した柔道着8着は子どもには大きすぎた為、小学生にあうサイズが必要だと考えています。また多くのこどもたちが参加してくれたため、8着をイベント内でまわすのが大変な状況でした。寄付金を使って、追加して購入できたらと考えています。

また地方の投資家の皆様にもご参加いただける、地方での講演会や体験会の費用とさせていただけたらと思っています。」

中央が遠藤監督。大会に観戦に伺った際に、社長伊井とPOINT担当馬越と一緒に。

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ザ・2020ビジョン受益者のみなさま(2017年12月18日ファンド決算日時点)に、推薦をお願いするメールを本日12月20日午後に送信させていただいております。

メール内でお知らせしておりますが、入力フォームよりご返答ください。
また下記ブログ内の各団体のアピール文もご参考にされてください。

寄付のしくみ POINT(ポイント)の次期最終候補者はこちら!
https://park.commons30.jp/2017/12/point.html

また日本財団パラサポセンターのサイトで注目選手などもご覧いただき、ご検討ください。

みなさまの奮ってのご参加お待ちしております!
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コモンズ30ファンド基準価額3万円突破記念プレゼントを実施し枡!

コモンズ30ファンド基準価額3万円達成を記念して、コモンズ投信にてコモンズ30ファンドをお持ちの受益者の方を対象に、プレゼント企画を実施し!!

今回、プレゼントにさせていただいたのは、今年度SEEDCap応援先、more trees(モア・トゥリーズ)さんの【一合枡コモンズオリジナルバージョン!】

側面にコモンズのロゴ、コモンズ30ファンド基準価額3万円記念の印字、
底面にmore treesのロゴ入りです!


more treesさんは、「都市と森をつなぐ」活動の一環として、国産材を有効活用し、都市で活動するデザイナーや地域の職人と協働で、オリジナルプロダクトの企画等を行っています。今回、3万円達成を記念したオリジナル【枡】を製作いただきました。

基準価額3万円の突破は、ひとえに投資先企業のたゆまぬ価値向上への取り組みと、それを応援し続けてくださった受益者のお仲間の皆さまによって実現したものです。
もちろん、通過点であり、まだまだ「よりよい明日」のために一歩一歩、しっかりと歩んで行きたいと思っています。

今回、こちらの【枡】
コモンズ30ファンド受益者の方、10名を対象にプレゼントさせていただきます!

応募方法等
申込期間:本日12/19~12/25(発送:12/26)
対象となる方:コモンズ投信でコモンズ30ファンドをお持ちの方
選定方法:コモンズ社員による厳選なる抽選
申込方法:対象者の方に、応募フォームのURLが記載されたメールをお送りしました。
(12/19送信、メールタイトル: 【プレゼント応募フォーム】コモンズ30ファンド基準価額3万円突破記念プレゼント)
当選発表:プレゼントの発送を持って、発表にかえさせていただき!!

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さてさて、この「枡」どんな使い方があるでしょう?!
え?ペン立てにしちゃうのー?でもアリかも-💓💓💓

小腹を満たすお菓子いれにもぴったりだわ💃

お子ちゃまの小物入れにも😄

でもやっぱり・・・枡と言えばこれっしょ!!!🙆🙆🙆🙆

今後とも、コモンズ投信をどうぞ、よろしくお願いいたします。

(3)ここから2020年、そしてそれ以降

2020年、その先へ
~あの頃の未来に僕らはたっているのだろうか~

■ここから2020年、そしてそれ以降

―  ここまで、過去を振り返ってきましたが、ここから2020年まで、そしてそれ以降をどのように見ているのかも聞かせてください。

2013年12月に「ザ・2020ビジョン」の運用をスタートして以来、一貫してマーケットは2020年までに日経平均で3万円を目指すとお話してきました。もちろん、ファンドは日経平均やTOPIXと比較していませんし、絶対リターンを目指しています。
が、さきほどまでお話してきたような日本が新たなステージに立ち、企業も稼ぐ力を高めることで、日本株には上昇余地が大きいと考えてきたのです。

―  現時点でも2020年までに日経平均で3万円という見方は変わりませんか?

はい、変わりません。日本企業の稼ぐ力はいよいよ花開く時期にようやく来ているところですが、ROE(株主資本利益率※)が上昇することで、株価にはまだまだ上昇余地があると思います。

―  世界の景気拡大も引き続き続くのでしょうか。

目先、2018年の世界経済の成長は少し鈍化するかもしれません。ただ、大きく崩れる感じはありません。もちろん、円高リスク、地政学リスク、また景気に配慮した金利コントロールがうまくいかない場合の金利上昇リスクなどはありますが、これもファンドの運営においては、引き続き株式組入れ比率をコントロールすることで吸収していきたいと思っています。

―  では、2020年以降についてはいかがですか?

コーポレートガバナンス改革についても一定の成果が出て、次のステージに入っているでしょうね。具体的には競争力を高められる企業が残り、それ以外は淘汰が進むと思っています。そういった意味では、生き残った企業はすべて成長株に変わっているといっても過言ではないかもしれません。

―  まだまだ株価の上昇余地があるということでしょうか?

引き続きROEを高め続ける動きは続くでしょう。今、日本企業には解散価値(PBR1倍以下)にも満たない株価に甘んじている企業がたくさんあります。こうした企業が、コーポレートガバナンス改革によって少なくとも解散価値まで上げていくフェーズが2020年までとすると、それ以降はそれをより高めるステージです。先ほども話したように、その間は競争も激化し、淘汰も進むかもしれませんが、生き残った企業のPBRは上昇していくと予想します。結果、資本効率を高める経営が進展し、ROEも上昇するという流れです。

―  そうした流れの中でポイントになるのはどんなことなのでしょうか?

マネジメントでしょうね。経営陣が柔軟に環境変化に応じた経営ができるか、それは、M&Aなども含め、買われたほうが有利という場合には躊躇無くそれを選べるような、そんなマネジメント力が問われる時代になると思います。

―  産業面での変化というのはありますか?

この産業が無くなる、この産業が伸びるといったような話ではないでしょうね。
もちろんデジタル化は進展するというのはありますが、それぞれの分野で競争力を高めた企業への収斂が進むということなのではないでしょうか。
さらにその先には、AIやブロックチェーンの活用で成功した会社が出てくるといったことはあると思います。そういった変化を常に捉え、ファンドに体現していきたいと考えています。2020年以降もまだまだ企業の変化によって日本企業の価値が高まっていくと考えています。

(※)株主資本利益率・・・株主が投資した金額で、企業がどのくらい利益をあげているのかがわかる指標。ROEが高い銘柄ほど、効率的に株主資本を活用できているといえる。


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(2)アベノミクス3本目の矢がいよいよ花開く

2020年、その先へ
~あの頃の未来に僕らはたっているのだろうか~

■アベノミクス3本目の矢がいよいよ花開く

―  著書(2020年までに資産を倍にする法)の中では、2014年以降、2020年までを3つのステージに分けて予想していましたが、すでに足元ではその最後の局面、2016年7月~2020年までの局面にあります。そこでは、アベノミクス3本目の矢(成長戦略)がいよいよ花開くステージにあるだろうということでしたが。

即効性のあるコーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード(※)の効果が強く出ると予想していました。これは究極には日本企業の稼ぐ力、すなわちROE(株主資本利益率=株主から預かった資本を元手に、1年間でどれくらい稼ぐことができたかを見る指標)の上昇が目的でした。2014年時点では、日本企業の平均のROEは9.1%と、他の先進主要国が10~17%の水準にあるのに比べてもとても低かったのです(P69)。
もちろん、これは本来、個々の企業の努力に委ねられるものであって、しっかり結果を出せばそれに株価はついてくるわけですから、本来政策云々ではありません。
しかし、日本企業は総じてそれが低いことが問題視されてきました。言い換えれば、まだまだ資本効率を上げながらしっかり稼ぐ余地がある、とも言えるわけです。

―  これを後押ししたのが、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードだったというわけですね。

そうです。コーポレートガバナンス・コードとは、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化に向けて、企業が尊重すべき事項を定めた規範です。具体的には、株主との対話促進や、持ち合い株を保有する理由・方針の開示、女性を含めた多様性確保の推進、独立社外取締役を2人以上選任すること、などの規範を定めました。これは義務ではなく任意適用ではありましたが、守れない場合は、その理由を開示する義務があるのです。

―  企業経営に緊張感が生まれますね。

その通りです。そして実際は、企業統治に真剣に取り組んでいた企業というよりは、その”余地”の大きかった企業にとって大きな契機となりました。いかに資本効率を高めるか、株主還元は適切か、社外の意見をいかに取り入れるか、など、直接であれ間接であれ、ROEを高めるために必要な要素に期限付きで取り組まねばならなくなったわけです。

―  スチュワードシップ・コードの整備はどんな役割を果たしましたか?

スチュワードシップ・コードは、企業の持続的な成長を促す観点から機関投資家(コモンズ投信もそのひとつ)が、受託者としての責任を果たすための原則です。具体的には、株主としての議決権の行使にあたって、運用会社としての方針を示したり、その行使結果を公表するなどです。例えば、取締役の選任や、配当金額の決定に関する議案などでは、自分たちが掲げた原則に従って賛成・反対票を投じることになります。これまで日本企業の中には株式の持ち合いなど、なれ合いともとれる関係の中で議決権行使においても”甘え”がないとはいえない状況がありました。しかしこの原則に則って機関投資家が受託者責任をしっかり果たしていくことになるので、企業にとっても、企業価値を上げるための努力がより要求されることになるのです。

―  これら2つのコードが、まさに「日本企業の稼ぐ力」を高める施策だったのですね。

そうです。そして今、これらがスタートして3年目になり、いよいよその成果が具体的に現れる局面に入ってきています。こうしたことをこれまで当たり前のようにやっていた企業より、まだまだ手付かずだった企業が3年かけていよいよ成果を問われるときがやってきていると言えるのです。2018年の株主総会では、大きな変化が見られると思っています。

(※)コーポレートガバナンス・コード・・・企業が自らの経営のチェック体制を明確にした規範。企業の持続的成長、及び中長期的企業価値の向上が目的。上場企業は当コードの実施、実施しない場合はその理由の明記が求められる。
スチュワードシップ・コード・・・機関投資家(お客様の資金を代わって運用する企業)に定められた行動規範。機関投資家は、お客様の利益のために、投資先企業に対して持続的かつ中長期的な成長を積極的に要求すべきだという考え方。投資先企業の成長が不十分な場合は、経営者の交代を要求する。

次のページへ:(3)ここから2020年、そしてそれ以降

(1)2013年に見ていた「2020年」

2020年、その先へ
~あの頃の未来に僕らはたっているのだろうか~

■2013年に見ていた「2020年」

―  約3年前に書かれた「株・投信で2020年までに資産を倍にする法」の中で、2020年までの大局観を示されていますよね。

2013年は2020年の東京オリンピックが決まった年でした。戦後、1964年の東京オリンピックは大きな飛躍を日本にもたらしました。また、パラリンピックという言葉が使われたのも1964年の東京大会が初めて。2020年の大会も、高齢化が世界一進む日本にとって、高齢者に優しい都市づくりが進む契機となり、新たなサービスや企業も生まれると考えました。

―  単にオリンピックが景気の下支え要因になるということではなく、大きな変革が起きると予想されていましたよね?

明治維新以上の転換点になると予想していました。というのも、第2次世界大戦後、急速な発展を経てバブル崩壊も経験した日本は、失われた20年と言われたようにその後永らく低迷が続いています。急速に進展する少子高齢化や財政の問題等、大きく改革しなければいけない時期を迎えていました。そこにオリンピック・パラリンピックの開催が決まったわけですが、それが、失われた20年で傷んだ財政や経済を立て直し、日本が政治・経済、そして文化面においても世界の中でプレゼンス(存在感)を高めていく契機となるだろうと考えたのです。

―  具体的にお聞きしていきますね。まずはちょうど2014年ごろから2020年にかけては、大小の景気循環の波がすべて上向くと予想されていました。(詳細は本書のP30参照)

戦後過去5回しかない、大小の景気循環の波がすべて上向く局面がまさにこのタイミングに来ると予想されていました。実際、現在「適温経済」とも称されるように世界景気は緩やかな拡大が続いています。輸出、設備投資、消費がバランスよく拡大する一方、主要国のインフレは抑制される中で、株価上昇など資産効果が出ているのです。

―  明治維新の現代版こそ、アベノミクスであるとも書かれていましたね。
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第1章で述べたように、日本はいま瀬戸際、「超悲惨な将来」に向けてギリギリの状況にあります。2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まり、国民のマインドが変わりつつあるとはいえ、超悲惨な将来を食い止め、日本が新たな成長を実現するには、適切な目標と確かな政策が不可欠です。その目標と政策を担うのが、安倍政権が掲げるアベノミクスであると筆者は考えています(P34)
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第1の矢である大胆な金融緩和、第2の矢である機動的な財政政策、この辺りは着々と実行されてきました。第3の矢である民間投資を喚起する成長戦略についても、着実に実行されているという実感があります。
その中の一つである①稼ぐ力を取り戻す具体例として、企業統治の指針であるコーポレートガバナンス・コードの実施、機関投資家の行動指針である「スチュワードシップ・コード」の整備が着実に進みました。

―  担い手を生み出す施策として出された、女性の活動促進や外国人労働者の活用についてはいかがでしょう?

この数年来で「女性の活躍」は進展しましたよね。保育所の問題などまだまだ解決すべき課題はあるものの、企業でも女性の管理職を増やす取り組みが進むなどしていると思います。また、外国人労働者についてもずいぶんと増えてきているというのは実感としてあるのではないでしょうか。

―  雇用・医療・農業分野での規制改革はどうでしょう?

これはまだ道半ばでしょうね。ただ、雇用については、「働き方改革」が叫ばれるようになっていることからも変化は出ています。ちょうど今、政府が3%の賃上げを経済界に要求していますが、これは、働き方改革によって総賃金が下がる人が出てきているわけで、そうした人たちにも賃上げによって総所得が減らないよう働きかけているのです。総所得が減ってしまえば、当然、消費も減ります。それが景気に影響することを避けるためです。

―  まだまだ具体的な所得が上向いてきたとまでは言えませんが、人不足があらゆるところで叫ばれ、消費マインドもかつてないほど高まっているのは実感しますよね。

そうですね。そこにさらに規制改革を推し進めることが出来れば、よりアベノミクスは効果を発揮することができると考えています。

―  総括すると、ここまでの流れは想定通りと言えますか?

思った以上といっても過言ではないかもしれません。特に企業の稼ぐ力を取り戻す取組は着実に成果が表れていると考えています。


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2020年、その先へ ~あの頃の未来に僕らはたっているのだろうか~

2020年、その先へ
~あの頃の未来に僕らはたっているのだろうか~

■プロローグ

ザ・2020ビジョンが産声を上げた2013年は、2020年の東京オリンピックの開催が決定した年でした。
一方、日本はデフレから脱却できず、円高や少子高齢化の進展による様々な課題にも直面していました。当時の日経平均は、16000円台、ドル円は100円前後です。
オリンピック開催が決まったとは言え、永年くすぶり続けるマーケットに希望を見出したとはいえなかった2015年2月、糸島の著書「株・投信で2020年までに資産を倍にする法」が上梓されました。
その中で”2020年が「新生日本」の起点となり、様々な変化によって日本は再び飛躍する、また、その牽引役として日本企業が稼ぐ力を取り戻し、株価も大きく上昇する、と予言しました。

―あれから4年

世界景気は拡大局面にあり、日本では、コーポレートガバナンス・コード(※)の制定、スチュワードシップ・コード(※)の整備などにより、日本企業の「稼ぐ力」は高まりつつあります。また、この間、2度の衆議院選挙に勝利した安倍政権は戦後最長記録の更新も視野に入っており、日銀と二人三脚で進めてきたデフレ脱却のための超金融緩和政策の効果もあり、2017/12/11現在の日経平均は22,938円まで上昇、ドル円相場も113円前後にあります。
また、2013年12月に運用を開始したザ・2020ビジョンも15526円と、ファンドスタートから約4年で5割上昇したことになります。
当ファンドは、常に5-10年先を見据えた運用を行うファンドです。すでに2年後に迫った2020年のその先を見据える時期に入っています。

これまでとこれからを、糸島に語ってもらいました。

(※)コーポレートガバナンス・コード・・・企業が自らの経営のチェック体制を明確にした規範。企業の持続的成長、及び中長期的企業価値の向上が目的。上場企業は当コードの実施、実施しない場合はその理由の明記が求められる。
スチュワードシップ・コード・・・機関投資家(お客様の資金を代わって運用する企業)に定められた行動規範。機関投資家は、お客様の利益のために、投資先企業に対して持続的かつ中長期的な成長を積極的に要求すべきだという考え方。投資先企業の成長が不十分な場合は、経営者の交代を要求する。

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【寄付月間公式認定企画】こどもトラストセミナー「寄付の教室」開催しました!


毎年恒例となってきましたコモンズこどもトラストセミナー寄付の教室&クリスマスパーティー。
今年は、寄付月間で出逢った寄付の妖精 ふじぽんが こどもたちの応援に来てくれました!

こどもたちは初めての会場に、初めてのお友達、そしてほとんどの子がこどもトラストセミナー参加が初めてと、初めてだらけでしたので、ふじぽんがお出迎えしてくれてとっても助かりました!
こどもたちのどきどきした表情が一気に明るくなって、リラックスモードに!


さ、早速こどもトラストセミナー「寄付の教室」スタートです。

「お金ってどんなことに使ったことがある?」
こどもたちから「ためる」「つかう」とぱらぱらと答えが返ってきますが、「寄付する」と答えた子は1人、2人くらいでした。「投資する」「増やす」はほとんどいませんでした。

お金って毎日接ししているものですが、もしかしたら改めて考えてみることは少ないかもしれません。親子で話し合うことも少ないかもしれません。
「自分なりのお金とのつきあい方」ってなんだろう。

「今日は、『寄付』というものを通して、みんなといっしょにお金とのつきあい方を考えてみるよ」

さて、「捨てられた犬や猫が殺されてしまっている、ってことを知っている人はいるかしら?」

突然そんな悲しいお話をされて、一瞬のうちにこどもたちは息をのむような、ことばを失うような表情に。

「え、そんなことあるわけない」
「そんなことはだめだよ」

「そうだね、大切な命、守りたいよね。」
「じゃ、みんなにお願いがあるの、今日から30匹、おうちで飼ってくれないかしら」

こどもたちは困ってしまいます。
それはちょっといくらなんでもできなさそう。。。

「ではね、飼い主さんを探してきてくれないかしら」

「餌だけでも50匹分集めてきてくれないかな?でも毎日必要なの。。。」

こどもたちはじぶんたちにはできないと頭を横に振ります。

「じゃ、仕方がないね。。犬や猫が殺されてしまうのをあきらめるしかないかしら」

こどもたちはその答えもいやだと頭を横に振ります。


「実はね、よかったよね。みんなが学校に行ったり、お父さんお母さんがお仕事に行ったり、自分たちが今一生懸命やらなければいけないことをがんばっている間に、みんなに代わって、行き場のなくなったわんちゃんやねこちゃんのお世話をしてくれている人たちがいるの。

でもどうかしら、わんちゃんたちのエサ代とかどうするのかしら。
何かを売ったりするお仕事ではないから、その人たちはお給料とかをどうやってもらっているのかしら。。。」

「実はそこで『寄付』が役立つの。」

『寄付』は、だれかが自分に代わって、自分が本当は放っておきたくない悲しいことに、またずっと守っていきたいとおもっていることのために、飛んでいってがんばってくれる活動に使えるお金のこと。
ひとりひとりの力が小さくても、みんなが集まれば大きな力にもなるもの。

そこで今回の「寄付の教室」でも、寄付先を選ぶ練習をしてみます。

こどもたちに社会課題に取り組んでいる3団体を紹介して、自分自身の考えで寄付先を選んで発表してもらいます。

なぜここで「自分なりの理由」も一緒に発表するのが大切なのか。

それは、自分なりの理由がしっかりわかっていると、応援し続ける力が湧いてくるからです。寄付した後もその団体の活動がどうなっているのか気になりますし、またもし団体に元気がなくなってしまっても、その団体がこどもたちが選んだ理由を大事に活動し続けくれていたら、応援し続けようと思えるからです。

今回ご紹介したのは、
聴導犬、盲導犬、介助犬の存在を社会に広く知ってもらうための活動をしている日本介助犬情報センター
長期入院で闘病生活にあるこどもたちのもとにピエロが訪問。こどもたちに笑顔を届ける活動をしている日本クリニクラウン協会
日本の森を元気に、世界の森を元気に、そして都市と森を繋ぐ活動を続けるmore trees






 そして、もし1万円のお金が自分にあったら、自分はどうお金をわけるかな?のワークもしてみました。

こどもたちはどんな理由で、どの団体を選んだでしょう。
こどもたちは実際にお金を手にして、自分の考えで使えるとしたら、どんな風にわけて使うでしょうか。
それはどんな考えで。

発表の様子と、こどもトラストセミナーの後に開催したクリスマス会の様子はまた次回に!

どうぞお楽しみに。

こどもトラストセミナー
寄付の教室担当 馬越

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<パネルディスカッション>デンソー「社内のコンセンサスづくりに統合報告書を活用する」


デンソーとの対話
<パネルディスカッション>「社内のコンセンサスづくりに統合報告書を活用する」

粕谷知恵子様(株式会社デンソー広報部担当課長)
渋澤健(コモンズ投信取締役会長)
上野武昭(コモンズ投信シニアアナリスト)

渋澤   統合報告書の肝は、最初にめくるページにあると思うんですね。そこでどういうメッセージを伝えてくれるのかということですね。デンソーさんの統合報告書の場合、「クラフティング・ザ・コア」という言葉が、まず目に入ってきます。すごくシンプルで伝わりやすい言葉ですが、想像するに、デンソーのような大きな会社だと、社内にいろいろな部署があり、そこにはさまざまな想いを持っている人が大勢いますから、この言葉にまとめるのかなり大変だったのではないかと思います。

粕谷様   私自身、直接関わったわけではないのですが、社内調整にはかなり手間がかかったようです。特に、この「クラフティング」という言葉をなぜ使うのかということだけでも、ずいぶんと議論があったと聞いています。未来を創る、価値を創造するという意味で、「クリエイティング」という言葉もありますが、敢えて「クラフティング」という言葉を使ったのはなぜか。それは、私たちがモノづくりの会社であり、技術を伝承していくという観点では、クリエイトよりもクラフトの方が、手作り感のようなものが伝わるという考え方です。

渋澤   上野さん、デンソーってどんな会社ですか。上野さんが、担当アナリストとして、デンソーにどういう印象を持っていて、なぜコモンズ30ファンドに組み入れるべきだと考えたのか、そこを教えてください。

上野   コモンズ30ファンドは長期投資の投資信託です。だから、長期的に価値を創造し続けられる会社かどうかをまず考えるのですが、自動車のマーケットは、新興国を中心にこれからも成長していくのは分かっています。そのマーケットの中で、トヨタを中心に、それ以外の世界の自動車メーカーを含めて、グローバルにビジネスを展開できる会社だということに注目しました。

渋澤   今、自動車業界を取り巻く環境を見ると、動力が内燃機関から電気に変わりつつあり、そのなかで自動運転の可能性が模索されるなど、一大変革期を迎えています。ただ、自動運転になろうと、電気自動車になろうと、絶対に必要なのは、体で言えば神経部分です。デンソーのビジネスは、まさにこの神経部分に深く関わっており、普遍性があります。それだけに成長性が期待される事業だと思います。

上野   今、統合報告書を読んでいたのですが、社外取締役のジョージ・オルコットさんと名和さんのお二人が対談していて、デンソーという会社が外から見ると、どういう会社なのかを3ページに亘って書かれています。これが面白い。デンソーの常識は社会の常識とズレている部分があるのではないかといったことを、真剣に議論している。では、ズレている部分とは何なのか。これからどう変えていくのか。今まで失敗と成功を繰り返してきたという話もありますが、過去、どういう失敗をして、それを克服するために何をやろうとしているのか、将来に向かってどう成功に変えていくのかなど、興味深い内容が盛りだくさんです。それらを知ることができれば、デンソーの企業文化が分かり、10年後、20年後にどういう会社になっていくのかを予測できるのではないかと思いました。

渋澤   この手のレポートもそうですが、広報の仕事は、なるべく会社の良いところを見せたい、伝えたいという意識が強く働くと思うのですが、過去にこういう過ちがあったとか、もう少しこういう工夫をすればよかったということを謙虚に認められる企業の方が、環境の変化に対応できるのではないでしょうか。投資家としても、その方が逆に安心感を得られると思います。そういう意味では、統合報告書にある社長メッセージはとても大事ですね。「第二の創業」というキーワードを使っていらっしゃいますが、それは自動車業界が、昔のビジネスモデルの延長にこだわっていると、もう未来がないという危機感の表れではないかと私は理解しました。それが現場で働いている方々に、どういう形で伝わっているのでしょうか。

粕谷様   実務的な話で恐縮ですが、広報という枠組みの中で、経営者の理念、考え方などを、社内にどう浸透させるかというのは、とても重要な課題だと思います。なので、紙では伝わりにくいものがあれば、社長自ら動画で、グローバルに発信するなど、試行錯誤しています。

渋澤   そうですね。御社の統合報告書を見ると、社外に使うだけではなく、社内にも使えるコンテンツがたくさんあるように思いました。バランスシートや損益計算書のような数値情報ではなく、数値には表れないけれども、企業が成長していくうえで必要な情報を把握するうえでも、統合報告書は大切ですね。今日はどうもありがとうございました。

粕谷様   こちらこそ。

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このあと、先進安全装置などを製造する大安工場(三重県いなべ市)にバスで移動し、デンソーのものづくりの現場を見学させていただきました。ここは安全製品を製造している工場で、帽子・安全メガネ・静電服の着用、上靴の履き替えをして入ります。直接その空気に触れ、同社のものづくりにかける情熱とエネルギーを肌で感じることができました。






デンソーの皆さまどうもありがとうございました。

<講演抄録2>デンソー「ステークホルダーとの対話を重視」

株式会社デンソー
広報部担当課長 粕谷 知恵子 様

■ステークホルダーとの対話を重視

統合レポートのなかで特に注力した部分は3つあります。
第一に、「提供する社会的価値/解決する社会的課題の明確化」ということ。単純に経営方針を示すのではなく、現在、会社を取り巻く環境はこうなので、会社としての強み、経営戦略などを駆使して、問題点をどう解決するか、つまり会社として社会にどのような価値を提供でき、社会の課題を解決できるかということを示しています。
第二は、統合レポート全体を通してストーリーを重視すること。デンソー基本理念やスピリットを説明している箇所もありますが、ここに込められた想いを、はっきりと書いてはいないものの、統合レポート全体を通じて、私たちがどういう想いを持って活動しているのかを、読み取っていただけるような内容にしています。
第三は、ESG情報の中でも特に、投資家の関心が高いテーマや、弊社として大切だと思っているテーマを選定し、掲載していることです。具体的には、投資家にとって最も関心が高いと思われるガバナンスについて、社外取締役の方に対談をお願いしていますし、最高の品質、安全な製品を提供するために社員一人ひとりが最大限の能力を発揮している点を強調し、それに必要なものとして、ダイバーシティや健康経営に力を入れている点を説明しています。
さらに、環境経営についても触れています。それは素材から自動車が出来、それを廃棄するまでのところを、すべて環境に配慮したうえで経営を行っていこうという考え方を、「エコビジョン2025」という形でまとめました。
以上3点に、あえて付け加えるとしたら、それは社会との対話を重視していることです。ステークホルダーと良好な関係を構築することが、企業価値の向上につながると考えています。

例えば取引先に対しては、仕入先総会で対話する場を年に一回必ず開き、そこで意見交換をしたり、社員と経営陣との労使懇談会も開いたりしています。会社経営は経営陣だけでなく、社員も一緒に考えることが大事だというのが、デンソーのスタイルです。
さらに地域においては、昨年から社員がプロボノ活動を行っています。自分が持っている、仕事で培った技術を活かして、社会に貢献しています。そして、株主総会の場で、株主との対話の場をつくっています。このように、さまざまなステークホルダーとの対話を大切にしながら進めています。

■ESG重視の企業社会に

弊社を取り巻く事業環境は、特に2015年から大きく変わりました。というのも、グローバルにおいては、国連が「持続可能な開発目標(SDGs)」を出したことによって、各国が2030年に向けて、その目標を達成するべく、さまざまな問題の解決を迫られています。その中で、企業はイノベーションを通じて問題解決にあたるという社会的責任を負っています。日本政府も積極的に関わっていますし、弊社が所属している経団連でも、一所懸命やっていこうと話し合われているところです。
さらに言えば、弊社の売上の半分以上を占める、トヨタグループ以外の自動車メーカーの中には、サスティナビリティに対する意識の高い欧米メーカーも多く含まれており、彼らからその取り組みについて、かなり厳しく言われています。こうしたことから、弊社としても、より積極的にESGに取り組む姿勢を見せていく必要があります。
このように、企業が取り組むべき社会的責任が明確になってきたことで、企業価値を高めるのに、ESGの考えがこれまで以上に重視される時代になったと思います。そのなかで、統合レポートを通じてさまざまなステークホルダーとコミュニケーションを取っていくことが、これからの企業には一層、求められるのではないでしょうか。 <終>



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<パネルディスカッション>社内のコンセンサスづくりに統合報告書を活用する
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<講演抄録1>デンソー「統合レポートの構造を読み解く」

定期的に開催されているコモンズ30塾。今回(2017年11月23日開催)は株式会社デンソーの広報部担当課長の粕谷知恵子さんをお迎えし、統合レポートの注目点や、企業としてなぜ統合レポートを重視しているのか、といった点について話を伺いました。また後半では、コモンズ投信会長の渋沢健、デンソーの担当アナリストである上野武昭の3人で、統合レポートに関するディスカッションも行われました。
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株式会社デンソー
広報部担当課長 粕谷 知恵子 様
「統合レポートの構造を読み解く」

グローバルに展開するデンソーのビジネス

まず、当社の事業内容を簡単に紹介させていただきます。
設立は1949年です。トヨタ自動車の電装・ラジエーター部門から独立してできた会社で、間もなく設立70年を迎えます。
売上高は昨年度が4兆5000万円。従業員数は年々増加しており、現在は15万人を少し超えるくらいになっています。グループ会社も増えており、38カ国・地域に、226拠点あります。
デンソーというと、トヨタグループというイメージが強いと思います。確かにその通りですが、お客様別の売上高構成比をみると、トヨタグループは半分を切っており、トヨタグループ以外にも、グローバルに多くの自動車会社と取引しています。
製造・提供している製品は、自動車部品です。ただ、ドライバーの目に触れる部品は、ほとんど作っていません。見えるものはエアコンのパネルやメーターくらいです。それ以外の、目には見えないけれども、自動車を走らせるうえで重要な技術、製品を納めています。
また、売上高の1割程度は、自動車関連以外のものを作っています。たとえば、バーコードやQRコードの技術開発が代表的なところです。さらに最近では、ロボット開発や、藻の研究もしており、その研究過程で生まれた、藻を素材としたハンドクリームなども作っています。


デンソーファンをつくるための統合レポート

「統合報告書2017」でも触れていますが、今年10月の決算時に、2030年に向けての長期方針を発表しました。
今、自動車産業は100年に1度の大変革期を迎えています。自動車はとても便利な乗り物ですが、近年は地球温暖化をはじめとする環境問題や交通渋滞、自動車事故といったネガティブな側面もクローズアップされてきました。
その一方で、AIやIoT、コネクトなど、いろいろな技術が進歩しているのも事実で、弊社は2030年に向けて、新しい価値を創出して豊かな環境を広げ、誰もがこの社会で安全、快適かつ自由に移動できる社会の実現を目指し、世界中の1人でも多くの人に笑顔を届けたい、そしてこの想いを世界中のあらゆる人々に知っていただき、デンソーに共感いただきたい。そこで、「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい」という想いを、長期方針に込めて発表させていただきました。

当社は、昨年、初めて統合レポートを発表しました。今年で2年目ですから、歴史は浅いのですが、当初から経理部IR、経営企画部、広報部の3部署でワーキンググループを立ち上げ、満を持してスタートしています。統合レポートは自動車に例えると理解しやすいと考えています。まず財務情報。バランスシートや損益計算書は、自動車のメーターに相当します。これだけ走りました。燃費はこうでした。現在のスピードはこれくらいで、エンジンの回転数はこうです、といったことが示されています。対して非財務情報は、事業を支える基盤ですから、自動車の車体、フレームに該当します。それらに加えて統合レポートの流れでいくと、将来を見据えた情報も開示する必要があります。この会社は将来、どの方向に進んでいくのかという経営戦略に関する情報のことで、それを決めるのがドライバーです。
そして、エンジンは価値創造の原動力であり、天気は会社を取り巻く経営環境。未来は常に変わっていくので、天気予報さながらに予測を立てますし、実際に走る時はサイドミラーで競合相手がどういう状況にあるのかを確認するでしょう。
このように、自動車を走らせる時にはさまざまなものを総合的に組み合わせて、初めて目的に向かって進めるわけですが、統合レポートというのは、まさにそれと同じだと思います。かつては財務情報、非財務情報など、個別のパーツで見せていたものを、すべて総合的に見せるための開示資料なのです。クルマ購入にあたり、クルマのシャシだけ、あるいはメーターだけでは判断されることはないと思います。クルマ全体をみて、実際の走りを見て総合的に購入を決定するのではないでしょうか?
そして、それを作成する目的は、財務情報のように見える力と、非財務情報のような見えない力を伝えるコミュニケーションツールであり、それを通じて長期的にデンソーのファンをつくるためのものと考えています。

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