未来予想図 2:ロボット有望株が空売りファンドの標的に?

未来予想図
2:ロボット有望株が空売りファンドの標的に?
2016-11-07-MON

10月4日「投資の日(1996年日本証券業協会制定)」、世耕弘成経済産業相は2020年にロボットの国際大会「ワールドロボットサミット」を開催することを発表しました。現時点で詳細は未定ですが、ロボットの作業の速さや正確さ、質などを競うことで、ロボットの研究開発を加速するとともに、現場での課題を解決することで人々の理解を深めることが目的のようです。 安倍政権では医療・介護分野ロボットの開発を推進しており、サイバーダイン社の開発した国産ロボット『HAL』は、世界で初めて医療機器として認可されました。 同社は、株式市場からも高い評価(2016年5月末株価2600円、時価総額約5300億円)を得ていましたが、この夏に大事件が発生しました。

2016年8月15日、シトロン・リサーチという米民間調査会社は、サイバーダイン社を強い売り推奨とするレポート(ターゲットプライス300円)を発行しました。その結果、同社の株価は急落、8月23日には1500円を割りこむまで売り込まれました。売り推奨の理由は、HALについて競合優位性の欠如、及び米国食品医薬品局(FDA)への申請経緯に対する疑義、同社が知的財産を所有していないことなどが根拠とされました。これに対し、8月19日サイバーダイン社は、いかに同レポートの分析が浅く、 事実誤認を含むものであり、投資家を無用に惑わせ、非常に問題があるという反論 をリリースしました。その後もシトロン社は同内容のレポートを2回発行しましたが、サイバーダイン社は即座に指摘された箇所全てに対して反論するリリースを行っています。両社は真っ向から対立しており、どちらが正しいかは、今後の事実が証明してくれることになるでしょう。 この案件については今後も引き続き注視していきたいと思います。ちなみに、シトロン社を創業したレフト氏は香港の裁判所から虚偽や風説に当たる情報を流したとして同市での5年間のトレーディング禁止を言い渡されており、シトロン社自体も香港の規制当局から調査を受けているようです。

日本では今年、伊藤忠商事が同様の手口で株価が急落しましたが、海外ではこうした空売りを専門とする調査会社が株式市場を荒らすことは珍しくありません。調査会社が「空売りポジションを保有しており、株価が下落すれば、相当の利益が実現する立場にある」と、明記したうえで調査リポートを公開すれば、法規制に抵触しないと解釈されているために横行しているのです。 しかし、日本取引所グループの清田瞭CEOは7月28日の記者会見で「倫理的に疑問を感じることがある。自主規制法人などで調べることはできる」と牽制するなど、今後議論が活発化しそうです。真実に反する情報によって強引に株価を下落させたとしても、株価はいずれ適正水準まで回復する傾向が見られます。言い換えれば、こうした手口によって株価が急落した銘柄は、強い売り推奨の根拠が事実と異なることを仮に確認できれば、むしろ「絶好の投資機会」となり得るということです。情報が錯綜する局面で投資判断を下すには、 その銘柄について深く調査できていなければなりません。私が運用を担当するファンド「ザ・2020ビジョン」では、中長期的視点でのボトムアップ調査を基本としており、仮にこのような「絶好の投資機会」があれば逃すことなく、迅速な投資行動の実践を目指しています。ただし、決して株価急落を望んでいるわけではないのであしからず。