リンナイとの対話<パネルディスカッション>助け合いから生まれるチームワークを大事にする会社


リンナイとの対話
<パネルディスカッション>
小杉將夫様(リンナイ株式会社取締役専務執行役員経営企画本部長)
渋澤健(コモンズ投信取締役会長)
伊井哲朗(コモンズ投信代表取締役社長兼CIO)
上野武昭(コモンズ投信シニアアナリスト)

(敬称略)
渋澤   まず、伊井さんに伺います。なぜリンナイに投資したのですか。

伊井   2009年1月に運用開始したコモンズ30ファンドで、2011年7月から投資しました。当時の株価は5000円台でしたが、6年が経過して、現在の株価は1万円台です。コモンズ30ファンドは短期的な業績のみで投資判断は下しません。大事なのは、長期的に企業価値を上げていけるかどうかです。リンナイは創業から100年が経過しようとしていて、海外競争力も高い。各国の文化に合わせた製品づくりを徹底しており、環境に対する意識も高い。何よりも、当時在席していた弊社の女性アナリストが、リンナイのコンロをとても誉めていて、その良さを、パンフレットを開きながら熱心に語ってくれたのです。その女性アナリストは、「台所仕事をするのに、リンナイ以外の製品は考えられない」と断言していて、それならばと言うことで、実際に会社を訪問したのがきっかけです。

渋澤   海外展開については、どう考えているのでしょうか。

小杉   ポイントは環境省エネ政策ですね。年々、熱効率に対する基準、排気ガスに対する規制が厳しくなっています。現状はEUがリードしており、他の国もそれに引っ張られています。米国もそうですね。当社は、環境省エネの技術に強いので、環境規制が厳しくなるほど、他社との差別化要因になります。また、これからガスが普及していく国はたくさんあります。その流れに乗って、タイミング良く商品を提供していきたいと思います。


渋澤   海外売上のうち、輸出と現地生産の比率はどうなのですか。

小杉   売上に占める輸出比率は13%。そのうち3割程度は現地生産拠点を持っている国への輸出で、残り7割が現地生産工場を持たない国への輸出です。

渋澤   上野さんは、アナリストの視点から何か質問はありますか。

上野   コモンズ30ファンドのアナリストの上野です。改善提案の件数について、従業員1人につき5件をノルマにしていると聞きました。これだけきちんと整理された工場なのに、まだ改善するべきところがあるのでしょうか。

小杉   確かに1人で5件は大変だと思いますが、その時はチームで助け合いながら、その目標を達成してもらえればという考え方です。むしろ、それによって助け合い、チームワークの意識が生まれてくることが大事なのです。

上野   あと従業員の数ですが、今では工場も自動化の時代で、工場にいる人の数も少なくなっていますが、リンナイの場合は、結構大勢の従業員が働いているように見えました。この点についてはいかがでしょうか。

小杉   自動化できる工程は多いのですが、連続して同じタイプの製品をラインに流すのではなく、違うタイプの製品を流しているので、それぞれの製品に合った部品を、間違わずに取り付けなければなりません。それを機械でやるにはコストがかかるので、人による作業が多くなるのです。

上野   人口減少によって、将来的には人の採用も苦しくなると思いますが、そこはどうするのですか。

小杉   暖房機、給湯器は10月、12月が一番売れる時期で、4月、5月は売れません。仕事の負荷が1.8倍くらいは違うでしょう。そこは在庫をうまく調整しながら、出来るだけ作業負担が均等になるようにしていますが、構造的に人口が減少する際の対応については、これからの大きなテーマとして考えていく必要があると思います。

渋澤   伊井さんは名古屋出身ですよね。リンナイに対して、どのようなイメージを持っていたのですか。

伊井   いや、あらためて凄いなと思いました。工場のライン見せてもらい、整然としている中に、さまざまな工夫がある。働いておられる方が、きちんと挨拶して下さる。素晴らしいと思います。

渋澤   現地生産する時、リンナイの文化をどう伝えるのですか。

小杉   現地から研修に来てもらい、日本の工場などを見学してもらって、その雰囲気を体感してもらいます。そこで感じ取ったことを、自分の国に戻って、他の人に伝えてくれれば、徐々にではありますが、変わっていくと信じています。

伊井   ガスが普及していない国の需要は期待できそうですね。実際、海外旅行で泊まったホテルのシャワーを使ったら、いつまで経ってもお湯が出て来ないという話は、よく聞きます。米国でさえ、安定してお湯が出ません。

小杉   日本では、お湯が当たり前のように出てきますが、米国はタンクにお湯を溜めておくタンク型の給湯器が大半です。96%がタンク型で、大量にお湯が出るのは、大きなタンクがあるからだと信じている。2000年に、米国へタンクレス型の給湯器を持って行った時は、信じてもらえませんでした。そこで、全米各地にトラックで給湯器を運び、そこで実験したら、皆、「信じられない」と言い始め、ようやく浸透し始めたところです。オーストラリアも100%タンク型だったのですが、この7、8年でタンクレス型に切り替わりました。

上野   1970年代から海外展開をされたということですが、日本もまだまだ成長市場なのになぜそんなに早い時期から取り組まれたのでしょうか。

小杉   創業者の時代から、人間が存続する限り熱は必要なので、熱で世界に貢献したいと考えていたそうです。ただ、製品としては、もとは欧州製品のコピーからスタートしたわけです。それが自社製品に徐々に自信が付いてきて、アジアでは台湾、欧米では米国、ブラジルあたりにニーズがあると考え、海外進出を始めました。欧州もまさに今、伸びているところです。

上野  創業の経緯で、青い炎に惹かれ、欧州のコンロのコピーからスターとしたとのことですが、いつか欧州を見返したい、という想いはあったのでしょうか。

小杉  見返すと言うか、「恩返し」ですね。我々がよりいいモノを作って、いずれは欧州で「恩返し」していきたいという想いがあります。

渋澤   人を採用するにあたって、どういう能力に注目していますか。

小杉   コア技術にこだわっている会社ですから、何かにこだわり続けてきた人ですね。たとえ仕事に直結しないことでも、何かに熱中した経験のある人は、仕事にも何かのきっかけで熱中する可能性があります。あとは、個人が持っている技術、スキルに注目しています。

渋澤   本日はありがとうございました。