【開催レポート】住宅遺産のための作戦会議 〜伊藤邸(旧園田高弘邸にて)〜
こんにちは。
一般社団法人住宅遺産トラストの応援リーダーを務める運用部 奥翔子です。
7月29日の午後、第9回社会起業家フォーラム登壇者で第13回コモンズSEEDCap最終候補者でもある木下壽子さんが理事を務める、一般社団法人 住宅遺産トラストとイベントを開催しました。
今回の会場は、著名建築家の吉村順三氏により建てられた旧園田高弘邸でした。
今回の会場は、著名建築家の吉村順三氏により建てられた旧園田高弘邸でした。
到着した瞬間に私はうろたえました。
門構えや緑、玄関の様子が私の祖母の家によく似ていたからです。眼前に電撃的に現れた"故郷"に思わず隠れて泣いてしまいました。こういった家が無くなって欲しくない、と改めて思わされました。
中へ入ると照明が控えめで奥ゆかしさと懐かしさを感じさせる空間がゆったりと広がっています。とりわけ登録有形文化財に指定されている部屋は、日が落ちて影が伸びてくると一段と陰翳の美に惹き込まれます。
時を経て建付けの悪くなった障子や雨戸を開けて縁側越しに見える葉っぱの揺れ、木々の間から漏れ出る柔らかな光は、東京にいることを疑ってしまうほどの安らぎを与えてくれます。
ピアニスト園田氏が使っていたピアノでコンプライアンス部長梶川が奏でるクラシックの優美な調べを耳に入れながら、もう完全に自分の世界に入り浸ってしまいました。
さてイベントが始まると、理事の木下さん・吉見さんによる現状の解説をお聞きしました。
地価が高い都市部では古い家を解体して土地を分譲した方が不動産業者やデベロッパーの利益が大きくなること、相続税の支払い期限までに継承者が見つからないと売却するほかなく、結果として貴重な建物が解体されてしまうこと、住宅遺産の所有者にとって建物の維持費、庭の管理費、固定資産税、相続税は大きな負担であることなどを教えて頂きました。
特に東京23区内の住宅は継承しようにも地価が高過ぎて手が出せません。定期借地権や移築といった土地建物分離の発想がカギになりそうです。
また、日本の文化財の仕組みにも課題があるとのことです。
欧米と異なり日本の文化財は所有者の承諾を前提としており、文化財に指定されることのメリットよりもデメリットが大きいと考える所有者は文化財指定を積極的に受けないケースも多いそうです。
参加者のみなさんがチームに分かれて解決策を考える作戦会議の時間もあり、
「相続税分を低利で貸し出す」
「大きな土地に移築先になる一時保管所を作る」
「式場などとして収益物件にする」
「データを採取・保存し、レプリカを作る」
などのアイデアが発表されました。
住宅遺産トラストへの質問や持続的運営のアイデアもたくさん飛び交い大盛況でした。
活動状況のお話では、住宅遺産トラストの創設から15年を経て、住宅遺産を巡る社会的課題に対する社会的認知がじわじわと広がっているそうです。
不動産会社の方から相談が来たり、物件の買い取りから1年は継承者が現れるのを待ってくれたりするようになったりと、今までには考えられなかった状況だそうです。
参加者のみなさんは様々な専門分野の方々で、中には金融、建築、不動産関係の方も少なくなく、住宅遺産トラストのおふたりにとって有意義なご意見、ご感想も多々お寄せくださいました。
参加募集開始早々に満員御礼となり、当日も欠席者なく積極的にご参加くださったみなさんのお姿からは、住宅遺産トラストの大きな飛躍を予感させられました。
参加できなかった方もご安心下さい。
10月に第2弾を京都で企画しています。
ぜひお楽しみにされていてください!