企業価値の共創

こんにちは、福本です。

1.いやならやめろ
2.おもしろおかしく
3.出る杭になれ!

この中に、コモンズ30ファンド投資先企業の社是が一つ含まれています。
はい、答えは「おもしろおかしく」、堀場製作所です。
先週金曜日(24日)、滋賀県大津市にある同社のびわこ工場E-HARBORで、「統合レポートワークショップ&びわこ工場E-HARBOR見学」が実現しました!

あいにくの台風の影響で参加人数は半減。ですが笑顔で!


統合レポートワークショップを関西で開催するのは初めて。
また、びわこ工場E-HARBORは2016年5月より本格稼動した主力の自動車排ガス測定装置の開発・設計・生産を一貫して行う大規模施設です。


そもそも統合レポートとは、企業の売上などの財務情報と、環境や社会への配慮、知的資産から、ガバナンスや中長期的な経営戦略までを含む非財務情報をまとめたものです。

これをグループワーク形式にて読み解いていくコモンズ30塾で毎年開催しているイベントで、2011年に第1回目を開催して以来、今回は7回目、10社目となります。

各社からご担当者をお招きして、レポートに込めた企業の想い、製作過程での裏話など参加者のみなさまが企業の生の声を聴き、企業は皆さまからの意見・提言に耳を傾けるライブ形式の「直接対話」「意見交換」の場となっています。

堀場製作所さまからは、経営管理部IR担当の上杉様より、「HORIBA Report2017」についてご説明をいただきました。
経営管理部 IR担当副部長 上杉英太さま

堀場製作所は、統合報告書を“会社を最も正確に表現する年次報告書”と位置づけています。財務情報と財務情報に載らない情報(見えない資産=人財、技術等)で企業価値の向上ストーリーを語る。そして対象とするのは、長期視点の投資家です。



何を伝えれば投資家は堀場のファンになってくれるのかを突詰めて考え、その年に伝えるべきことを簡潔に表現しています。

また、ページ数や、紙質、持ちやすさにもこだわり、冊子の大部分をIR担当自らが執筆されています。その心は、各事業・部門の魅力など、長期の投資家に伝えるべきことは何か、IRの視点で伝えたいから。


その分、各部・担当者とのすり合わせは苦労の一つだそうです。

こうしたお話を丁寧に紹介いただきながら、その後は参加者同士がレポートについて忌憚なき意見交換を行いました。



「価値創造サイクルのページは構成からこだわりが伝わる」

「トップメッセージは、トップ自らが執筆していることがわかる。一方、一番伝えたい今年のメッセージがわかりにくい」

「中期経営計画のページはぱっと目を引いて読んでみようかな、という気になる」

様々な意見交換を通じ、参加者同士も他社の見るポイントを通じて同社への理解を深めていただいたようです。


続いては、いよいよE-HARBOR見学。
びわ湖畔にある広大な敷地に建てられた同施設は、世界のHORIBAグループの工場を”One Production“として牽引していく母港(ホームハーバー)と位置づけ2016年より稼動を開始しました。

工場といっても、開放的なエントランス、建物の中心部に設けられた吹き抜けの階段、ワンフロアに広がる開発部門など、いわゆるメーカーの工場というイメージとは全く異なる施設です。

一方、最高水準の自動車試験設備を備えたE-LAB(イーラボ)なども備え、“一気通貫で淀みなきものづくり”を実現しています。


主力の排ガス装置と言っても、なかなか我々が直接目にする機会はありません。生産現場は想像以上に少人数、大型機械やロボットが絶え間なく動いているという従来の工場のイメージとは全く異なり、まるですべてが研究施設のようでした。





また、印象的だったのは、工場ですれ違う従業員の方が、すべてにこやかに挨拶をしてくださること。ご参加いただいたお客様からも
「工場見学中、挨拶してくださる社員さんが何名もいらっしゃいました。
業績も大切ですが、働いていらっしゃる方も素敵だと思いました。」
といった感想も頂戴しています。


統合レポートワークショップと、びわこ工場見学を通して感じたのは、まさに社是「おもしろおかしく」という企業文化の浸透です。


今回IR担当としてイベントにご協力頂いた社員さまの中にまだ入社1ヶ月の方がいらしたのですが、「入社してびっくりしたのは、朝会などの場でどんどん発言が求められることです。色んなメンバーにたくさんのチャンスが与えられ、役職などに捉われないチャレンジが出来る会社だと実感しています」とおっしゃっていましたが、まさにそうした文化が、同社の成長と進化を支えているんだな、と実感しました。


その他、M&Aの秘話等、30塾の詳しい内容はレポートにてお伝えする予定です。

投資先企業、受益者(お客さま)、コモンズ投信の3者が対話を通じて価値の共創に取組むこうした場を今後も多く作ってまいりたいと思います。

丸井グループのtsumiki証券に期待!

おはようございます。渋澤健です。台風19号、20号が通り去った週末は、好天に恵まれた地域も多かったと思います。(しかし、暑かったですね~)

先週の金曜日、台風20号の影響が残っている東京で、丸井グループが月次に開催する中計経営企画推進会議に招かれました。今夏に設立されたグループ子会社のtsumiki証券の社内説明会に、当初の取り扱いラインアップのつみたてNISA対象のファンドを提供させていただくレオス・キャピタル・ワークスセゾン投信、そして、コモンズ投信の代表三名(草食投資隊)もパネルディスカッションに登壇しました。

(同日、堀場製作所のE-Harborで開催されたコモンズ統合レポートワークショップにご参加いただいた皆様、日程のバッティングでご一緒できなく、ごめんなさい!)

1200名以上の応募者から、会議室のキャパの関係上、事前提出された1ページのレポートから300名強の参加者が選別され、組織の上下関係は考慮されない会議です。(役員席は会場の後方に設置されてました。)会場の当事者意識の高い熱量が檀上にも深々と伝わり、金融機関の内部研修会では見たことがない風景が目の前に広まっていました。


我々三人のパネルディスカッション・質疑応答が終わって退室した後に、参加者の小グループの対話タイムが設けられました。我々が丸井グループの青井浩社長と社員食堂で昼食(Table for Twoの定食、390円!)をいただいてから、控室でコーヒーを飲みながら談話した一時間強、対話が予定時間オーバーで継続していました。

和気あいあいと語り合っている姿を会場の外から拝見し、本当に感銘を受けました。話の内容を後から聞いたら、グループ社員としてどのように「tsumiki証券を普及させるか」「まず、自分たちが始めなければ」等の声が上がっていたようです。すばらしいです。

tsumiki証券の社長の寒竹明日美さんは小売り現場の店頭に立ってから、財務、IRなどの仕事も熟し、青井社長が指名した初めてのグループ会社の女性社長です。40代と青木社長から聞いています。もっとお若いと思っていました。(^^; 証券業協会のオジサンたちは、びっくりしているでしょうw。

新しい風を吹き込んでいる丸井グループがtsumiki証券を通じて金融業界の常識では表現できないような感性と当事者意識の熱量で、顧客本位の本質を日本社会へ提供することを大いに期待しています。特に次代を担う世代のフィナンシャル・インクルージョンに共創パートナーとして協働できることを大変光栄に、かつ、楽しみにしています!

9月中にサービススタートです!

株式相場は難しい局面ですが

コモンズ投信 伊井です。

今年の株式相場は、近年になく難しい相場環境が続いています。
世界経済は米国中心に好調を維持していますが、IMF(国際通貨基金)も7月の世界経済見通しにおいて、2018年と2019年の世界経済の成長率3.9%を維持しつつ、貿易摩擦の長期化がもたらす経済成長のバラツキとリスクの高まりを示唆しています。

さらに今週は、トルコリラの急落から新興国リスクが懸念されました。9月には自民党総裁選挙、11月には米国中間選挙と株式相場に影響を与えそうな政治的なイベントも続きます。

今年前半の国内株式市場と当社の2つのファンドの騰落率を確認しますと、年初から6月末まででTOPIX配当込(東証一部株価指数)はマイナス3.7%、日経平均株価マイナス2.0%、東証マザーズ指数マイナス11.5%、コモンズ30ファンドはマイナス1.0%、ザ・2020ビジョンはプラス2.4%となっています(年初から6月まで積み立てをした場合の同期間の損益では、両ファンドともにプラス2.5%程度)。

今年前半の当社の2つのファンドは、なんとか頑張った結果が出ていると思いますが、7月から8月はやや苦戦しています。
コモンズ30ファンドは、世界で活躍する企業が多数組み込まれていますので世界的な貿易摩擦が影響していますし、ザ・2020ビジョンは小型株の需給が崩れている影響がでています。
しかし、4-6月決算がほぼ出揃って内容を確認しても両ファンドの投資先企業の業績は概ね好調であり、先行きに対しても強気な企業が多いです。

これまでの株価の水準に比べても、安くなってきている銘柄も増えていますので、「実りの秋」を目指して現在はしっかりと買い増しを行っています。
銘柄によっては、かなり安く仕込めていると思っています。

また、8月24日にはコモンズ30ファンドの投資先企業である堀場製作所のびわこ工場にお客さまと伺い、統合レポートワークショップ&びわこ工場E-HARBOR見学を行います。同社の長期的な価値創造の仕組みをしっかり学ばせていただく予定です。

両ファンドともにこうした難しい局面こそ、丁寧で地道な企業分析によって乗り越えて参ります。

引き続き、ご期待ください。

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「トルコ・ショック」で思うこと

おはようございます。渋澤健です。

この数週間、グローバル金融市場を最も騒がせているトルコ・リラ。5年間の対円では6割以上下落しています。高金利に惹かれてトルコ・リラ建ての投資信託や債券を購入している投資家は痛い傷を舐めているでしょう。


私はトルコの専門家ではないので一般論になりますが、為替は交換レートなので絶対的な価値ではなく、相対的な価値を示します。つまり、いくらトルコ・リラが「安く」なってもゼロにはならないということと、為替市場は特に周期的に変動する傾向があります。

(ただ、これは一般論です。戦後の日本は新円への切り替え、預金封鎖によって旧円の価値はほぼゼロになりました。)

また、5年前にトルコ国債が「高金利」だと思っていたようならば、びっくり。
現在のトルコ国債は20%ぐらいの利回り(人気が低下すると価格が下がり利回りが上がる)です。

思わず手を出したくなるレベルですが、この金利水準はトルコ国債の不履行の可能性がかなりあるという市場の判断です。なので、トルコ政府の信用リスクを取ることはお薦めできません。

でも、現在の水準が異次元であることは確かなので、いつになるかわかりませんが、正常化の時代が訪れば、リラは戻して、金利も現在より低くなるでしょう。

そういう意味で、私が気になっているのは「トルコ」そのものではなく、むしろ、その状況の背景です。政治が過剰に介入することによって国境を超える交易の壁が立ちはだかっている世界情勢。これは、トルコに限ったことではなく、米国、中国、欧州、そして、日本のビジネスの展開の弊害となっています。世界の経済にとってボディブローになっているという懸念があります。

これが株式市場にどのような影響を与えるかは予測が難しいです。業績がしっかりと株価を支えている企業は少なくありません。一方、将来の業績拡大への期待というプレミアムが付きにくくなっていることは確かだと思います。株価を支えるのは業績の実態と将来へのプレミアムです。

長期投資家は、このような現状のときは目先の収穫への期待は控えるべきでしょう。むしろ、これからは、仕込む時期に入っているという心構えが必要だと思います。コツコツと積み立てる投資を継続させることです。価格が下がるようであれば、同じ金額で仕込める口数(量)が増えます。

長期的な視野では、ショックがいずれ訪れることは想定内です。そして、ショックの後こそ、一番美味しい仕込みのタイミングということは長期投資家は知っています。ただ、ショックとは、いつ、どの程度のものが起こるかわからない。だから、「ショック」と言います。

タイミングを図っていたら、ショックの後に投資することはほぼ不可能だと思います。もっと下がるかもしれないという恐怖に縛られてしまうからです。あるいは、底値で買えたとしても、また下がるかもしれないと思って、ちょっと値上がりしたら売却してしまうかもしれません。

でも、つみたて投資を実践していたら、必ず、そのショックの後はしっかりと買えています。コツコツと積み立て投資を継続すること。時間は、ショックを和らげてくれる戦友です。

その時間をこれからも有効に使いましょう。コツコツ、コツコツと。

こどもトラストセミナーで【セブン&アイ】を体験しよう!

おはようございます。渋澤健です。お盆休みに入っている方々も多いと思います。猛暑から逃れるところで、どうぞごゆっくりと休養くださいませ!

さて、大勢がお休みを利用して各地と足へ運んでいる土曜日の午前中にコモンズ30ファンドの投資先であるセブン&アイ・ホールディングス伊藤研修センターの皆様のご協力のおかげでコモンズこどもトラストのお仲間たち対象の親子セミナーを開催することができました!


お盆休みに入っているため施設が貸し切り状態。贅沢な空間と時間を過ごすことができました。本当にありがとうございます!


まず、本プログラムに入る前に目に付いたのは、言葉を大切にする会社であるということでした。



また、社史も大事にする会社であることも視感でわかります。自分たちの会社だけではなく、日本の小売業の発展も説明する展示は大変勉強になりました。



そして、本プログラムが開始!我々のために色々と行き届いたご準備をいただき大変感銘を受けました。


髙木研修長のプレゼンには笑いもあり、問いかけられた質問に子供たちの積極的な応答で盛り上がりました。


親子一緒に学べることはすてきですね。


お話をお伺いしてから体験プログラムへ。最初はレジ打ちです。


正確に、素早く、そして、笑顔ではっきりとした声で応対することを学びました。


また、食品を扱う会社ですから衛生管理は徹底しています。


ちゃんと洗ったと思っていた手を暗闇で特殊な光を当てると・・・


手が白く光るということは、きちんと汚れを洗い取っていない証拠です。 


出直して、手をきちんと洗ってから次の体験プログラム。寿司づくりを学びます!


シャリの上にネタを乗せる方向、また、海苔に表(光っている方)裏(ザラザラしている方)があること、私は初めて気づきました。。。


出来栄えはいかがでしょう?


いずれ、結果は自己責任ということで。。。w 美味しくいただきました!


さて、本番はコモンズこどもトラストセミナーの定番。お世話になった企業の社長へ手紙を書きます。


参加してくれた子供たち全員はコモンズこどもトラストに入っていただいています。つまり、コモンズ30ファンドの受益者としてセブン&アイ・ホールディングスの間接的な株主なんです。株主として、社長へモノ申すことは大切です!w


子供たちが本日の体験から感じた想いを込めたメッセージを井坂社長へお送りします。コモンズ30ファンドは、企業との対話を重視している長期投資ファンドです。お返事、返していただけるかな。


売れ残った食料品をムダにしなく、家畜の餌や農産物の肥料としてリサイクルしていることを知ったことがとても印象的だったお子さんもいらしゃったようです。


皆さんのおかげで最高に楽しいプログラムでした。子供はもちろんのこと、大人たちの笑顔も多かったです。笑顔が多い長期投資は、良いですね。



未来予想図 21:デジタル・トランスフォーメーションに注目

未来予想図
21:デジタル・トランスフォーメーションに注目
2018-8-7-TUE

7月2日に日本銀行が発表した2018年度ソフトウェア投資額計画(6月調査」は、前年度比+6.4%で高い成長の継続と、8年連続プラス成長となる見通しです。

現在、ITソフトウェア業界はコスト削減などの「守りのIT投資」に加えて、売上拡大・競争力強化につながる「攻めのIT投資」が堅調に拡大しており、上記のような長期に渡る成長トレンドを描いていますが、2020年東京オリンピック・パラリンピック以降も、同業界は着実に安定成長していく見通しを持っています。

その根拠としては、デジタル・テクノロジーの進化によって生み出された新しいビジネスモデルが社会基盤や人々の価値観そのものを大きく変化させているという事実です。

例えば本を買う場合、以前は営業時間内に店舗を訪れて店頭在庫から本を探すか、取り寄せて後日再び訪れるという行動が一般的でした。

しかし今はスマホでいつでもどこでも注文でき、指定の場所と日時に配達してもらうことが可能で、品揃えはどの本屋よりも充実しています。

リアルな書店の良さが完全に失われるわけではありませんが、人間は一度こうした便利な経験をすると過去に戻りたくないと感じるものです。
洗濯機の登場によって洗濯が劇的に楽になったことと同じです。

デジタル・テクノロジーの進化により、今までなし得なかった高い利便性を低価格で提供されるサービスは、社会や人々から圧倒的に高い支持を集め、これまでの圧倒的な地位を築いていた企業や、既得権益に守られてきた企業であっても、一気に企業存亡の危機に直面する可能性があります。
したがって、企業はこぞって「攻めのIT投資」を増やし、ITを幅広く活用した競争力のあるビジネスモデルの開発を進めているのです。
こうしたデジタル・テクノロジーによる時代の再定義のことを流行語では「デジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)※」といい、株式市場でも高い注目を集めています。

当ファンドでは、DXそのものによってビジネスを拡大させる企業に加えて、DXの進展により変化するIT需要の恩恵を享受できるITサービス業の成長を見据えた投資を積極化しています。

※デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation:略称DX)とは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン (Erik Stolterman) 教授が提唱した「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」という概念。現在は幅広くITを活用した企業競争力強化の全般を指す。

運用部シニア・アナリスト 鎌田 聡



未来予想図 20:2050年に向けたエネルギー転換・脱炭素化への挑戦

未来予想図
20:2050年に向けたエネルギー転換・脱炭素化への挑戦
2018-7-6-TUE

7月3日、日本政府は第5次エネルギー基本計画を閣議決定しました。

今回の計画は、「2050年に向けたエネルギー転換・脱炭素化への挑戦」とし、長期的な展望まで盛り込んでいる点が特徴です。

主な施策として、再生エネルギーの拡大、原子力の依存を可能な限り低減する、高高率な火力発電の有効活用、省エネの徹底、水素/蓄電/分散型エネルギーの推進、などが示され盛りだくさんな内容となっています。

エネルギー・電力問題は、2011年の東日本大震災後によく議論された日本の産業が抱える「六重苦」(超円高、高い法人税率、自由貿易協定の遅れ、電力価格問題、厳しい労働規制、厳しい環境規制)問題の1つで、いまだに解決されていません。

昨年来の動きとして、再生エネルギー事業に取り組む企業の高い売電価格を保証するため、そのコストが家庭向け料金などに上乗せされ電力料金が上昇していることや、今年1月から2月にかけての厳しい寒さで首都圏の暖房需要が膨らみ電力需給が逼迫するなど、電力に関わる課題が顕在化しています。

私の日々の企業などへの取材活動でも、エネルギー・電力問題について多くの企業は高い関心を持っています。
今後は、再生エネルギーの主要電源化、蓄電技術の向上、水素社会に向けた取り組み、などがこの問題を解決する大きなテーマになってくると思われます。

水素は、無尽蔵なエネルギー(化合物として地球上に多数存在し、水の電気分解からも取り出し可能)、ハイパワー、クリーン、電気エネルギーを大容量かつ長期間貯蔵することが可能、などにより次世代エネルギーとしての期待が高まっています。

再生可能エネルギーの電源開発や売電をする新しい成長企業が出てくる一方、潜在的な成長性が高い水素社会に向けた取り組みを強化する企業も見受けられます。
引き続き注目していきたいと思います。

運用部シニア・アナリスト 上野 武昭



未来予想図 19:コーポレートガバナンス・コードの改訂版を発表

未来予想図
19:コーポレートガバナンス・コードの改訂版を発表
2018-6-7-TUE

東京証券取引所は6月1日、上場企業に企業価値の向上を求める「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)、以下CGコード」の改訂版を発表、同日付で施行し、12月末までの対応を求めました。

主な改訂ポイントは3つ、
1 .政策保有株式に関する規定の厳格化(保有適否の検証と開示)、
2 .自社資本コストを把握した上での収益力・資本効率等に関する目標の提示、
3 .取締役会等におけるCEO選解任の手続き確立(独立取締役を主な構成員とする指名・報酬委員会の有効化)です。

改訂についてのパブリックコメントによると、企業側からは「政策保有株式には守秘性の高い内容が含まれており開示説明は困難。資本コストの把握は困難で非現実的。

CEOの解任について具体的な解任事由を設けると硬直的な運用を招くので反対」など改訂に否定的コメントが散見されました。

一方、私が取材させて頂いた企業からは「今回の改訂点については対応済み、制度が後からついてきた。」という趣旨の話を複数回伺いました。企業側だけでなく、機関投資家でも考え方や事情は大きく異なるので、浸透には少しハードルがあるかもしれません。

当ファンドはESGなどの良し悪しや、CGコードの順守状況に関係なく(説明は必要)、『変化』を通じた中長期目線での株価上昇を見込める企業が投資対象となります。
そもそも全く同じ企業は一つとして存在しないので、最適なコーポレートガバナンスは各社各様であって然るべきではないでしょうか。
したがって、重要なことはGCコードをどれくらい順守しているかではなく、中長期目線で企業価値を向上させていくために、企業が最適だと思うガバナンス体制をどの程度構築できているのかではないかと考えます。

CGコードという形式的な基準は参考情報として、今後も質の高い調査を心がけ、ファンドのパフォーマンスに貢献していきたいと思います。

シニアアナリスト兼ポートフォリオマネジャー
鎌田 聡


未来予想図 18:日本の創薬型ベンチャーへの期待

未来予想図
18:日本の創薬型ベンチャーへの期待
2018-5-9-TUE

経済産業省は2018年4月27日に「バイオベンチャーと投資家の対話促進研究会(バイオ対話研究会)」の報告書として、伊藤レポート2.0「バイオメディカル産業版(本ガイダンス)」を発表しました。

弊社が運用する「ザ・2020ビジョン」では、積極的に創薬型ベンチャーへの投資を行っているため、日本の創薬型ベンチャーの成長を後押しする本ガイダンスの発表をポジティブに評価しています。

本ガイダンスが策定された背景には、日本の創薬型ベンチャーを取り巻く環境が米国のみならず世界標準に比べて、金融市場制度・資金調達面において劣後しており、結果的に国内上場バイオ企業の時価総額合計が1兆円程度とアジア諸国の中でも小さい水準に留まっていることが挙げられます。

日本政府としては、今後拡大が予想される創薬型ベンチャーを育成するため、バイオ対話研究会の立ち上げや、「未来投資戦略2017」の中でバイオ分野への投資加速を盛り込むなど、バイオ産業の育成に向けた取り組みを打ち出しました。

本ガイダンスは2部構成となっており、第Ⅰ部では創薬型ベンチャーの経営者が経営理念やビジネスモデルなどを投資家へ適切に伝えるための手引きとすること、及び機関投資家(クロスオーバー投資家※も含む)が中長期的な観点で創薬型ベンチャーを評価・投資判断するための手引きとすることが示され、両者間における対話の質を向上させる「共通言語」として機能させることが重要であるとされています。

第Ⅱ部では、創薬型ベンチャーの成功が次の投資を加速させるという米国などで見られる好循環を生み出すために、解決すべき課題が提起されています。

日本の創薬型ベンチャーを取り巻く環境が少しでも改善し、欧米諸国に見劣りしない成長産業となるために、本ガイダンスの果たす役割は重要であると考えています。

創薬型ベンチャーへの投資を積極的に行っている当ファンドにおいて、追い風になってくれることを期待しています。

※プライベート投資(期限の定めのある投資)とパブリック投資(期限の定めのない投資)を両方行う投資家


シニアアナリスト兼ポートフォリオマネジャー
鎌田 聡


未来予想図 17:注目のがんゲノム医療

未来予想図
17:注目のがんゲノム医療
2018-4-6-TUE

2018年4月1日から「がんゲノム(遺伝情報)医療」が全国111病院でスタートしました。

がんゲノム医療とは、がん患者個々の遺伝子を解析してどの遺伝子に異常があるか見つけ、その結果に基づいて最適な治療薬を選択するなどの治療方針を決定するもので、効果が高く副作用の少ない医療として期待されています。

今回臨床試験の対象となるのは、標準的な治療が効かなくなった進行がんや希少がんなどで、実際に遺伝子の異常に基づいた治療を受けられるのは検査した患者の10~20%になる見通しです。

今回スタートしたがんゲノム医療は、がんゲノム医療推進コンソーシアムの一環として、がんゲノム情報の集積・利活用により革新的新薬の開発やゲノム医療提供支援などを実現することで、国民がより有効で安全な個別化医療を早期に受けられることを目的としています。

この背景として、がんは1981年から死因第1位であり、現状では生涯のうち約2人に1人が罹患すると推計され、国民の生命と健康にとって今後も対策を強化しなければならない重大な疾患であるということです。

第3期がん対策推進基本計画(2018年3月9日閣議決定)では、「がんの予防」、「がん医療の充実」、「企業がんとの共生」が2022年度までの全体目標3本柱とされ、中でもがんゲノム医療は患者本位のがん医療の実現として具体的に取り上げられています。

日本は世界一の高齢社会であり、がんゲノムを集積・利活用できる環境は恵まれていると言えるでしょう。

現時点で日本はゲノム医療の普及において、欧米だけでなく、中国や韓国から相当な遅れを取っていますが、日本固有の好環境を大いに活用して、革新的な治療法の開発や医療費削減への仕組みを構築する可能はあると思っています。

がんゲノム医療の基盤は国民共有の財産であり、国益に資する日本企業の利益・時価総額の増大などの経済効果を期待しています。

シニアアナリスト兼ポートフォリオマネジャー
鎌田 聡


未来予想図 16:Fintechが生み出すサービス

未来予想図
16:Fintechが生み出すサービス
2018-3-7-TUE

弊社では2018年3月10日に9周年イベントとして、株式会社マネーフォワード(※)取締役執行役員兼Fintech研究所長の瀧 俊雄様をお招きしまして、「(仮題)Fintechで変わる金融サービス、そして社会」を開催いたします。

こなれた感の出てきたFintech(フィンテック)ですが、元々はIT(情報技術)を利用した新しい金融サービスを表すもので「Finance(金融)」と「Technology(技術)」をかけ合わせた造語です。
今では決済・送金・資産運用などの領域で相当数の新サービスが誕生しました。

これらの多くは、長年に渡り既存の金融機関が独占的に提供してきた「高い、遅い、不便」なサービスの代替として、「安い、速い、便利」な利用者目線のサービスになっています。

したがって、既存の金融機関は自分たちの仕事が奪われしまう存在として強い脅威を感じているようです。

PWCが実施した「グローバルフィンテック調査2017 日本分析版」では、91%もの日本の金融機関が自社のビジネスの一部がフィンテック企業に奪われる脅威にさらされていると回答しました。

ちょうど、人工知能の発展が人々の仕事を奪う存在になりうると脅威を感じるようなものです。Fintechをインターネットで検索すると、銀行の破壊者だとか、銀行の利益を3割消滅させるなど過激なことが書かれています。

果たしてどうなるのでしょうか。
このテーマは投資に直結するため、非常に強い関心を持っています。
3月10日のセミナーではこのようなことも瀧様にご教授頂きたいと思っています。

※株式会社マネーフォワード: 2012年5月設立、2017年9月に東証マザーズ市場上場。主にPFM(Personal Financial Management: 個人のお金に関わる情報を統合的に管理するサービス)である「マネーフォワード」、事業者向け会計等サービスプラットフォーム「MFクラウド」を展開。

シニアアナリスト兼ポートフォリオマネジャー
鎌田 聡