『10周年。コモンズ投信が大切にしてきたこと』2.長期投資を考える

シリーズ第2回の今回は、コモンズ投信のアイデンティティ「長期投資」について考えてみたいと思います。

2008年夏、本格的な長期投資のファンドを創りたくて、私たちが尊敬する経営者の方々に、ご意見を伺いにいきました。
ソニーのトップも務めた出井さん、堀場製作所の堀場さん、当時ローソンの新浪さんに「30年目線の長期投資のファンドをはじめたい。ご意見やアドバイスをいただきたい」と。
それぞれの経営者の皆さまからは、「海外には、良い長期投資家がいて、経営の参考にもなるが、日本では皆無だ。是非やってほしい。グローバル企業と競争しているとき、経営者と同じ長期的な目線の日本の投資家が株主としているといないでは大きな違いだ。」と言われ、背筋が伸びたことを昨日のことのように覚えています。
昨年の9周年イベントでは資生堂の魚谷社長からも同様のお話がありました。
ザ・2020ビジョンの投資先でもあるラクスルの松本社長からも海外の投資家訪問をしてこられた感想で「日本の金融発展、個人資産の金融活用のためには、独立系投信が発展することが大切だと実感します」とコメントいただきました。

生活者の皆さまの長期的な資産形成に貢献するためには、優れた企業の長期的な成長に株主として参加するのが一番だと考えています。
5周年イベント対話セッションでのエーザイさん
そして、投資信託を保有いただいている皆さんにも、そこに参加して欲しくて創業時から「コモンズ30塾」や「周年イベント」の機会を設けてきました。
2009年3月に開催した記念すべき第1回目の周年イベントに登壇いただいたのは、コモンズ30ファンドの運用開始時の投資先である「エーザイ」でした。
エーザイ側からは「日本の投資家には無かった長期投資の文化を一緒に育むためだったら、ぜひ、協力したい」と快諾を頂いての会でした。
運用開始時の投資金額は1000万円程度でしたが、担当役員及びIRチーム全員の皆さんに参加をいただき、エーザイの見えない価値について学ぶ機会となりました。
こうした投資先とお客さまとの対話は、コモンズ独特の価値ある場となっています。

運用開始から10年、コモンズ30ファンドの現在の投資先30社の平均保有年限は8年を超えてきました。
欧米の本格的な長期投資家の平均保有年限も7~8年ですから、ようやく欧米の長期投資家と、保有期間では肩を並べるようになりました。

長期投資は、単なる買いっぱなしとは違います。
企業も人間と同様に生き物ですから、調子が良い時も悪い時もあります。
8年も投資を続けていると、調子が悪い局面を迎える企業も少なくありません。
この調子が悪くなったときの見極めが、その後のパフォーマンスに大きな違いをもたらします。
次の好調場面がその先に予想出来れば、この株価の下落は大きなチャンスになるからです。

企業業績が下降局面に入ると、当然、株価は下がってきます。
そうなると当社は、対話を増していきます。
そのためには、日ごろからよく対話して関係を作っておくことが大切です。

例えば、資生堂は投資期間が10年を超えてきました。
この10年間で資生堂の株価は、安値から約10倍に上昇しました。
ファンドが設定された2009年1月、アジアでの成長や、永年かけて築いたブランドを誇る老舗企業と経営改革に取り組んでいる精鋭経営者への期待などで投資しました。
投資を開始してから、2011年資生堂は社長交代で経営の若返りを図りました。
ところが国内事業の経営再編において新社長はなかなか手腕を振るうことができず、また、中国マーケットも鈍化するというダブルパンチを受けて、業績は低迷し始めます。
市場での評価は下がるいっぽうで、2012年ごろからコモンズ投信の投資委員会でも全売却を推進する意見が出ていました。
しかし、資生堂のポテンシャルはまだまだ高いのではないか、そうした喧々諤々の議論が続き、最終的には1万株のみ(純資産比率で0.3%程度)残し、保有し続けることを決めたのです。
こども投資家から手紙を受け取った資生堂魚谷社長
9周年イベントにて
そこから約半年かけ、議論と調査を続けました。
同時に、競業の化粧品メーカーにも出向き、ヒアリングを重ねたのです。
2013年には資生堂は赤字に転落し株価も大きく下落しました。しかしそのタイミングで私たちは投資を再開したのです。
その時点では、資生堂の商品力は高い、ただし、マーケティング力に課題があるという状況でした。
また、この時期、前社長である会長が再び社長に着任するという異例の事態へと展開したのですが、こうしたガバナンスの状況についても確認を重ね、むしろ投資のチャンスと捉えたのです。
そしてその後の資生堂が社外から社長を招き入れるという経営再編の行方をじっくりと見極めることにしたのです。
それが、現社長の魚谷社長です。
魚谷社長のリーダーシップにより、資生堂の業績は急回復。
140年もの歴史をもつ老舗企業は2018年に史上最高値を更新しました。
あのときの多面的な議論と、辛抱強い対話、そして投資委員会という意思決定の仕組みが、ファンドの超過リターンへとつながったと自負しています。

資生堂さんをお招きして女性の活躍セミナー
また、投資先企業として資生堂とお付き合いを続行し、同社の非財務的な価値の可視化を高めるために、担当役員をお招きして「女性の活躍セミナー」も実施しました。
世間的には「資生堂ショック」といわれた出来事でしたが、トップマネジメントに実際のお話をうかがうことで、「さすが資生堂」という見方を、受益者の方にも持っていただくことができました。

長期投資とは、まさに胆力が必要であり、本質を問い続ける定点観測から成り立っているのです。

次回に続く。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
10周年コモンズフェスタ
3/16京都、4/6東京、2都市で開催される10周年コモンズフェスタ。投資先企業の豪華なゲスト、お客さま、寄付先の皆さま、社会課題に立ち向かうチェンジメーカーが一同に会する1年に1度の大イベントです。ご家族・ご友人もお誘いあわせのうえ奮ってご参加ください!

◆メインイベントの詳細・お申込は< こ ち ら >から(特設ページ)

◆懇親会のお申込
【京都】https://commonsfesta10thkyoto.peatix.com/

【東京】https://commonsfesta10thtokyo.peatix.com/


『10周年。コモンズ投信が大切にしてきたこと』1.コモングランド

コモンズ投信がファンドの運用を開始してから、10年が経ちました。
10年を機に、『10周年。コモンズ投信が大切にしてきたこと』と題してこれまでの取組みについてじっくり想いを廻らし一つ一つ丁寧に言葉にしてお伝えする本連載。

まず初回である今回は、全体を俯瞰してコモンズが持っている世界観「コモングランド」についてです。

コモンズ投信のコモンズはコモングランド(共有地)から来ています。
コモングランドは、今日よりもよい明日を願う、願うだけでなくそのために行動している、想いを持った人たちが寄り集まる場所というイメージを持っています。
そこには投資家という名の普通の生活者がいて、新しい価値を創造することをミッションとしている企業とそこで働く人(もちろんこの働く人たちも普通の生活者でもあります)がいます。
また、生活に不便を感じながらも同じように今日よりもよい明日を願う障がいのある人や立場の弱い人も、そういう社会の課題を解決しようと活動している人もいます。

社員も、お客様も、投資先企業も、コモングランドにいる人たちが共通して持っているコアバリューこそ、「今日よりもよい明日を願い未来を信じる力がある」ということ。そういう人たちが寄り集まっている場所がコモンズ投信です。

コモンズ投信は投資信託というしくみを使って世の中をよりよくできると考えています。

コモングランドのなかで、投資家の想い(資金)をコモンズが受け取り、企業に投資する。企業と対話をしながら長期に共に歩む。
企業の努力によって生み出された価値は世の中をより豊かにし、またその果実はファンドを通じて投資家に還っていく。
新たにうまれた価値の一部は寄付に回す。

コモンズが橋渡し役となって、未来を育む場所や機会を創る“インベストメントチェーン”を実現しています。
10年間、その循環が滞ることなく続けられたこと、これからも長くそして大きく続くことは、皆の力を合わせてよりよい明日を切り拓いている証でもあります。

相場が荒れるような時期も、未来を信じる力を持ったお仲間がどっしりとファンドを支えてくださり、昨年は「受益者の97.7%の方が利益を出していて、数ある金融機関の中で一番だった」という大変うれしい調査結果が発表されました。
そのようなお仲間と歩みを進めていることこそ、コモンズ投信が持つ力、他社にまねできない圧倒的な強みだと思っています。

(次回に続く。)

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
10周年コモンズフェスタ
3/16京都、4/6東京、2都市で開催される10周年コモンズフェスタ。投資先企業の豪華なゲスト、お客さま、寄付先の皆さま、社会課題に立ち向かうチェンジメーカーが一同に会する1年に1度の大イベントです。ご家族・ご友人もお誘いあわせのうえ奮ってご参加ください!

◆メインイベントの詳細・お申込は< こ ち ら >から(特設ページ)

◆懇親会のお申込
【京都】https://commonsfesta10thkyoto.peatix.com/

【東京】https://commonsfesta10thtokyo.peatix.com/

◆イベント運営をお手伝いくださるボランティアスタッフを募集しています
【京都】http://www.seminars.jp/s/394150

【東京】http://www.seminars.jp/s/394162

元ヘッジファンドの伝道師からの提案

おはようございます。渋澤健です。インフルエンザ推定患者数が過去10年で最大の228万人という報道がありましたが、皆様、いかがでしょうか。どうぞご自愛ください。インフルエンザ・バリアを張りたいですね。

さて、土曜日の日経新聞のトップ記事に、ちょっとびっくりしました。このようなニュースを大きく取り上げた意図は何だったのか。


カネ余りに「敗北」 膨らむリスクのマグマ

おそらく、その意図とはヘッジファンドそのものではなく、「カネ余り」の悪現象として捉えていることでしょう。つまり、超金融緩和により、全体が押し上げられ、市場の「価格発見機能」が失われているパッシブ化です。それには、リスクがあるということの警戒です。

私は、今では長期的なつみたて投資のメッセージを伝えるために日本全国へ巡回していますが、実は2000年代の前半まで「ヘッジファンドの伝道師」と呼ばれていたこと、ご存知でしたでしょうかw
1980年代のバブル崩壊で日本の機関投資家の存在感が薄れる中、ヘッジファンドの存在感が増してきて自分が最初にヘッジファンドと接点を持ったのは1991年ぐらいでした。その後、彼らの存在に魅了され、自分もヘッジファンドで働きたいという希望が叶ったのは1996年。大手のグローバルマクロのヘッジファンドでトレーディングの仕事に携わり、翌年には東京駐在員事務所の代表を務めました。
それまで自分が経験した米系インベストメントバンクとは違う世界が広がってました。少数精鋭でも、金融市場で大きな仕事ができることがわかりました。ヘッジファンドで仕事をしなかったら、コモンズ投信という少数精鋭の運用会社を立ち上げるという発想は芽生えなかったと思います。

元々、ヘッジファンドは金融業界のベンチャーです。小資本で、実勢もない。だから、儲かったら成功報酬を与えようという考えです。また、ボリュームを増やして稼ぐのではなく、運用パフォーマンスを重視する顧客と目線を合わせるという意味でも成功報酬制は合理的でした。
2001年に独立して、ヘッジファンドなど「オルタナティブ投資」を日本の機関投資家にご案内するアドバイザリー事業を始めました。しかし、少々気になる傾向がありました。ヘッジファンドが雨の後のタケノコように増えて、「なんちゃってヘッジファンド」も目にするようになりました。目当てが高報酬であったことは間違いありません。
数が増えると収益チャンスが減る。市場の非効率性を収益源泉としているヘッジファンドでは特に、これは当たり前のことです。

外交官・ジャーナリストであったAlfred Winslow Jonesが世界初のヘッジファンドを設立したのは1949年です。1966年のフォーチュン誌に、その前の10年間、Jones氏のヘッジファンドの運用実績は670%であり、同期間のミューチュアル・ファンド(投資信託)の358%を多く上回ったという記事が掲載されました。その後、それまで一般的に知られていなかったヘッジファンドの設立が増えるようになり、数が増えて、運用実績が伸び悩み、多くのヘッジファンドが1970年代には黄昏を迎えました。しかし、淘汰されることなく生き延びたヘッジファンド・マネジャーもいました。伝説的なGeorge Soros氏です。

とうことは、これから多くのヘッジファンドが閉鎖される可能性がありますが、その淘汰を生き残るヘッジファンド・マネジャーもいるということでしょう。

コモンズ投信が投資信託会社として発足したのは2008年。その前後に多くの独立系投信会社が設立されました。「価格発見機能」や「市場の非効率性」という意味ではヘッジファンドと同じと言えるかもしれません。

しかし、ヘッジファンドの存在意義とは、年次のマネジメント・フィーおよび成功報酬を差し引いた後の「ネット・リターン」の絶対的収益、つまり、株式市場の動きにかかわらず毎年プラスになっていることです。
そういう意味で、単年度、(上昇している)株式指数よりヘッジファンドが下回っているということは本質的ではなく、マイナスにならない、つまり、リスク・フリー・レート+リスク・プレミアム(ハードル・レート)より高いことが本来の目的です。株式指数との比較ではないのです。リスク・フリー・レートが下がっているのであれば、ヘッジファンドのリターンも下がるのは当たり前と正当化できます。
そのリスク・フリー・レートがゼロ(か、マイナス!)の場合、高いマネジメント・フィーおよび成功報酬を支払う意味があるのか。この疑問にヘッジファンドは応えなければなりません。

一方、コモンズ30ファンドの場合はマネジメント・フィー(=信託報酬)は税引前0.98%で、成功報酬はありません。そして、我々が目指す投資とは、単年度の絶対的収益ではなく、長期的な絶対的収益です。
つまり、「価格発見機能」や「市場の非効率性」に加え、「持続的な価値創造」が収益の源泉となります。価格発見機能が失われたとしても、持続的な価値創造する企業は残るであろうという考えです。
長期的な年率化した運用実績が(信託報酬後)7%以上であれば、それなりの仕事をしていると思って、ファンドを立ち上げました。十年を経て、コモンズ30ファンドの年率化した運用実績は11%台です。もちろん、これは、これからの10年の実績を保証している訳ではありません。カネ余り現象、価格発見機能が失われていく株式市場のパッシブ化は、コモンズ投信にとっても気になることです。
しかし、持続的な価値創造が可能なよい企業に長期投資を託すこととは、『黄昏になっても、夜明けは再び訪れる』という「未来を信じる力」を用いて前進することです。是非とも、ご一緒にどうぞ!