『10周年。コモンズ投信が大切にしてきたこと』3.こどもの未来

シリーズ第3回の今回は、コモンズ投信の代名詞ともいえる「こどもとこどもの未来」についてお伝えしていきたいと思います。

親から子、子から孫へと世代を超えられる投資の実現のため、私たちは超長期で保有できる商品を提供しています。
また、次世代育成という位置づけの重要な取り組みとしてこども向けセミナーも実施しています。

コモンズ投信がこどもたちの未来に注力する理由はこちらのエントリーもお読みください
こどもたちの未来に、私たちが今、できること。


上の動画は2013年、こどもトラストセミナー第1回目を記念して制作したものです。
あれから6年。
ヤマトHDのしゃちょうさんへの手紙
これまで多くのこどもたちを迎え、様々なこどもトラストセミナーを開催してきました。
コモンズ投信の寄付のしくみコモンズSEEDCapに賛同して集まってきてくれた社会起業家の先生たちからは、最先端の技術を利用した途上国支援、児童労働によるカカオ栽培、命の誕生、東日本大震災、森林保全、視覚障害者の世界、手話の世界、などなど、わたしたちが生きている世界や社会で起きていることを幅広く伝えていただきました。

シスメックスの工場見学&体験
また、ヤマトHD、ダイキン、シスメックス、セブン&アイHDといった投資先企業に「こども投資家」として訪問し、企業の担当者から仕事の上で大事にしていることを教えていただいた後に、こども投資委員会を開催し「社長さんへの手紙」を書くという企業編も実施しました。
投資や寄付そのものについてのお金の教室も開催してきました。

今まで様々なかたちで開催してきたこどもトラストセミナーですが、第1回目から大切にしていることは一貫して変わっていません。
毎回、参加するこどもたちひとりひとりの中にあるそれぞれの考えを尊重し、引き出し、自分たちの言葉で発表するということです。
こどもたちはこどもたちなりの発想で、目の前にある課題を考え、答えを導き出すことができます
それを繰り返していくうちに、自分たちが暮らしている社会で起きていることを「他人ごと」とせずに、主体的に考え、行動していける人間に成長していけるようになると考えています。

寄付の教室
昨年12月、年末恒例のこどもトラストセミナー「寄付の教室」を開催しました。
冒頭にいつもこどもたちに決まって尋ねることがあります。
「お金持ちってどんなイメージ?」
すると、こどもたちからは「悪い人だと思う」という答えがぽつりぽつりと返ってきたりします。
その理由を聞いてみると、「自分のことしか考えていないから」。
確かに、こどもたちが目にする童話やお話には、意地悪そうな、悪賢そうな、自己中心的な人物がお金持ちとして登場するケースが多いようです。
でも、お金はいいことにもたくさん使えるんだよ、と伝えます。
日本では、こどもと大人がお金の話を正面から話をする機会が少ないので、こどもたちは少しどきどきとした表情になりますが、関心を持って聞いてくれます。
「いいお金持ちを目指してもいいんだ・・・」

お金の教室
犬猫の殺処分を例に出して話をすると、こどもたちは殺されていく犬や猫のことを放っておきたくないと言います。
見学した企業がしている仕事を大切に思って、応援したいといいます。
寄付や投資が、自分たちに代わって社会課題に取り組んでくれている活動(事業)を可能にしてくれていることを知ります。
みんなで少しずつ出し合えば大きな力になり、一人が多くのお金をもっていなくてもこの「応援」は可能だということも知ります。
寄付や投資、お金にはそんな力があることを改めて知ることができます。

こどもトラストセミナーが始まる時間は、いつもこどもたちの表情は不安そうです。
大抵、お父さん、お母さんに連れて来られるケースが多いからですね(笑)。
ただ、こどもトラストセミナーから帰る時にはいつもこどもたちはハイタッチ!
自分たちの頭と心で自分たちの世界を考えることができた!そんな達成感をこどもたちの表情から感じることができます。
最初の頃に参加してくれていたこどもたちの中には、もう大学生になった子も。
先日、中学受験を終えた子もいます。
彼らの中に「未来を信じる力」が育ち続けていることを願いながら、これからもこどもトラストセミナーを開催していきます。

次回に続く。

こども投資委員会
「議題:この会社に投資したいと思う?」

 ・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
10周年コモンズフェスタ
3/16京都、4/6東京、2都市で開催される10周年コモンズフェスタ。投資先企業の豪華なゲスト、お客さま、寄付先の皆さま、社会課題に立ち向かうチェンジメーカーが一同に会する1年に1度の大イベントです。大人気こどもトラストセミナーも同時開催!ご家族・ご友人もお誘いあわせのうえ奮ってご参加ください!

◆メインイベントの詳細・お申込は< こ ち ら >から(特設ページ)

◆懇親会のお申込
【京都】https://commonsfesta10thkyoto.peatix.com/

【東京】https://commonsfesta10thtokyo.peatix.com/

良いファンドとは・・・

おはようございます。渋澤健です。ちょっと、春の予兆を感じるようになってきましたね。

さて、今月の中旬の「ニーサの日」(2月13日)にtsumiki証券主催のセミナーでセゾン投信の中野さんと登壇しました。


セミナールームは、有楽町マルイのお洒落なカフェで目の前には新幹線が通過します。100名弱ぐらいのご来場で満員でした。ほぼ全員が現役・若手、そして、半分以上が女性でした。今まで、証券会社や銀行が主催するセミナーでは見たことがなかった風景です。

つみたてNISA」などの後押しもあり、新しい変革の風が業界に吹いていることを感じました!

良いテンポで進んでいるトークセッションで司会役のtsumiki証券の仲木さんが問いかけました。「良いファンドとは何でしょう?」

私は、「アクアパッツァのようなファンドです」と答えました。


我が家ではSTAUBという鉄鍋でアクアパッツァをつくりますが、その鍋が「ファンド」であり、具が「投資先企業」と考えてみましょう。アクアパッツァの鍋のふたを開けたときに、色々な食材がそれぞれの形を保って存在感があり美味しそうですよね。また、それぞれの食材の味もきちんと味わうことができます。そういう意味では、食材の厳選は大事です。

また、STAUBでアクアパッツァを調理すると水差しが必要ありません。調味料は塩だけです。それだけで食材の味が引き立って、本当に美味しい。

このようなファンドが「良い」と思います。きちんと厳選されているので投資先がわかり、それぞれの「味」を楽しむことができて、余計なものが入っていない。

コモンズ投信の基幹ファンドであるコモンズ30ファンドは今年で10周年を迎えました。設定来、このように「シンプル・イズ・ベスト」なファンドの運用にこだわりました。良い「食材」を厳選して使えば、色々と手を加えなくても、美味しいリターンが期待できるのです。

ただ、今までの業界の売れ筋の投資信託とは、ふたが開けられることがあまりなく、「食材」(投資先)があまりはっきりと見えない。そして、見栄えをよくするために、色々な余計なものが混ぜ込まれていました。

また、インデックス・ファンドもシンプルというメリットがあります。ただ、インデックス・ファンドは冷蔵庫の中にある全ての材料をミキサーでかき混ぜたようなもの。美味しい食材もあれば、美味しくない食材も入っている。ただ、栄養分は取れることは間違いないです。

でも、アクアパッツァをミキサーでかき混ぜたら、栄養分は全く変わらずですが、形が全く見えなくドロッとしたスープになって、果たして美味しいでしょうか? まあ、テイストの問題なので、構わないと思う意見もあるでしょうが、私は勘弁してほしいですw。

テイストはそれぞれです。ただ、「良いファンド」には、良い投資先という「食材」の味が引き立っている。これには間違いありません。

<トークセッション>株式会社デンソー「アライアンスに必要なすり合わせの考え方」

コモンズ30塾「企業との対話」~統合レポートを読み解く~株式会社デンソー セミナーレポート

【トークセッション】
杉浦正則さん(株式会社デンソー グローバル戦略部長)
           ×
渋澤健(コモンズ投信株式会社取締役会長)

「アライアンスに必要なすり合わせの考え方」

コモンズ投信会長渋澤健
渋澤   ありがとうございました。今回の統合レポートワークショップは、非常良いタイミングだなと思いました。
と言いますのも、まさに今日の日本経済新聞で統合レポートを取り上げた記事があり、企業の非財務的な価値に目を向けることの重要性が高まっていると書かれていました。今後、さまざまな国際機関が、非財務的な価値に関するスタンダードを作っていくことになるでしょう。
また、それと同時に今、デンソーとアイシン精機、アドヴィックス、ジェイテクトの自動車部品4社が、自動運転の統合制御ソフトウェアを開発する会社を、共同出資で立ち上げます。そのニュースを聞いた時に思ったのは、財務的な価値のところでさえ、違う会社が一緒になるのは結構大変なことではあるのですが、非財務的な価値は数値化できないだけに、さらに大変なのではないかと察するわけです。たとえば企業文化なんてその典型例でしょう。そこをどうすり合わせていくのか。一緒に仕事をしていく以上、そこは絶対に避けては通れないわけです。
そこで伺いたいのが、このように企業文化が異なる複数社のアライアンスをする時、特に非財務的な価値のすり合わせは、どのように行うのでしょうか

杉浦   弊社はここ数年、アライアンスという観点では出資や提携を急激に増やしてきましたが、まだ具体的な成果が出ているものは多くはありません。まさに今は、成果を出すために一所懸命に取り組んでいる真最中です。
ただ、実際にアライアンスを行っていて思うのは、目的を共有しなければならないということです。決して、自社のことだけを考えていたのでは、決してアライアンスは成功しません。これは3社アライアンスでも、4社アライアンスでも同じことで、皆がウインウインウインにならなければならない。
どうしても議論していると、自分たちの目標を達成するために、自分たちの利益のためにと考えてしまいがちですが、これではうまくいくのもうまくいかなくなります。シナジー効果とよく言いますが、一緒になることで、すべての会社が成長していくという視点がないと、アライアンスは成功しません

トークセッションの様子
渋澤   アライアンスを組むのは、やはり時代の変化に対応していくために必要だという認識ですか。

杉浦   そうですね。先ほど申し上げましたように、弊社の技術だけで自動運転に必要な技術要素を全部カバーすることは出来ませんし、ソフトやAIの領域においては、次から次へとスピードを持って、新しい技術を必要としていますので、アライアンスを組むことが必要になってきます
そうなると、企業文化も自分のところに固執するのではなく、やはり少し変えながら、他のアライアンスを組む企業とすり合わせていかなければなりません。良いところは残しつつも、新たな時代に対応するために会社を変えていくという刺激も必要だと思います。

渋澤   これまでの自動車は内燃機関で、ガソリンや軽油で走るというイメージでしたが、これからは電気自動車もどんどん出てくると思います。さらに運転も自動化されていきます。そのなかで、デンソーはどのように変わっていくのでしょうか。

質問に答えるデンソー杉浦さま
杉浦   やはり新しいものをどんどん開発していくしかないでしょうね。これまで自動車は4年、あるいは6年くらいでモデルチェンジしてきました。それに際しては、技術者だけでなく、自動車メーカーや販売店を通じて入ってくるお客様の声だったり、仕入れ先の方だったり、いろいろな方の意見を聞きながら、それをすり合わせていって、少しでも良いものを作っていくという仕事の仕方でしたが、これからはどうも違うかもしれないという感触はあります。
なんというか、ソフトが全てを決めていくとでも言うのでしょうか。すり合わせの工程を省いて、ある時、突然としてポンと新しいものが組み立てられていくイメージですね。そうなると、これまでのように4年、6年という時間をかけて新しいものを開発しているのでは、世の中のスピードについていけなくなります。
iPhoneなんて毎年、新しいモデルが登場しています。もちろん、自動車の場合、そこまで頻繁にモデルチェンジをするわけにはいきませんが、そのくらい変化が早くなっていることは意識しなければならないでしょう。
ただ、スマートフォンが壊れても、恐らくそうそう使っている人の命に関わるような問題にはならないと思うのですが、自動車の場合、走っていたのが急に停止してしまうとか、別な方向に行ってしまうということが起こった時、下手をすると乗っている人の命に関わる重大な事故を引き起こす恐れがあります。なので、開発スピードはもちろん大事なことですが、同時に品質をいかに引き上げていくかということも、重視していく必要があると認識しています。

渋澤   おっしゃる通りだと思います。今日はどうもありがとうございました。

前へ
デンソー統合レポートワークショップ|プレゼン抄録1
デンソー統合レポートワークショップ|プレゼン抄録2
デンソー統合レポートワークショップ|トークセッション

<プレゼン抄録2>株式会社デンソー「ハードからソフトへ」

コモンズ30塾「企業との対話」~統合レポートを読み解く~株式会社デンソー セミナーレポート

パラダイムシフトに対応するための長期ビジョン

コモンズの視点を紹介する運用部の上野
株式会社デンソーは、1960年代に他社に先駆けてカーエレクトロニクス分野に注目し、60年代、70年代のモータリゼーションの流れに乗って成長してきた会社です。
80年代に入ってからは、日米自動車問題をはじめとする貿易摩擦問題がクローズアップされたことから、海外に生産拠点を設けました。こうして年々、海外拠点が増えていき、売上規模も海外中心にどんどん拡大してきました。
こうしたなか、2017年に私どもは新しい長期ビジョンを制定しました。そのスローガンは「地球に、社会に、すべての人に、笑顔拡がる未来を届けたい」というものです。
すでに大勢の方もご存知かと思いますが、自動車業界は今、100年に1度の大変革期に直面しています。さまざまな技術革新が、本当にいろいろなところで起きています。そのなかで、さらに会社が伸びていくためには、少し先を見据えて、何に力を入れていくべきかを考える必要性が高まっています。今までの延長線上で物事を考えていては取り残されてしまいます。
ワークショップ中の参加者の様子
自動車業界はさまざまな社会的課題を抱えています。地球温暖化、大気汚染、交通渋滞など、これらの社会課題を今後、どのようにして解決へと導いていくかについては、もちろんこれまで以上の努力をすることで、課題解決への道を模索していきます。
ただ、自動車業界はこのような過去から続いている社会的課題だけでなく、新しい変化の波にも直面しています。
デジタル化、AIといった新技術がどんどん登場し、物凄いスピードで進化しています。これにより、人々の価値観、消費行動が多様化し、それにともなってビジネスモデルも変化してきました。それも日本国内というよりは、米国や中国において、さまざまな変化が現れてきています。
まさにパラダイムシフトです。自動車、モビリティ社会において、電動化、自動運転、コネクティッド、シェアリングといった、今までに無かった新たな動きが、物凄いスピードで進行しています。その中で、弊社として何を大事にして事業に取り組んでいくべきかを考えたのが、前述した長期ビジョンです
そもそも自動車は、普通に走るだけで排気ガスを出しますから、環境にとって決して良いものではありません。また交通事故で人命を奪うこともあります。私たちの生活の利便性は確かに高まりましたが、環境や人命などを犠牲にしてきた面があることは否定できません。ただ、もう社会全体を考えた時、自動車の負の側面に目を瞑るわけにはいかないと思います。社会全体を見つめて、私どもに出来ることは何かを考えるべき時期に来ていると認識しています。
参加者の様子
長期ビジョンを取りまとめたのは、まさにそういう時代の機運が高まりつつある時期と一致していました。自動車業界では、資源問題のために燃費を改善していこうとか、排気ガスを無くしていこう、あるいは交通事故を出来るだけ減らしていこうということが、盛んに議論されてきましたが、もう少し広い視野を持って、社会全体、あるいは自動車業界以外の人たちと協力することによって、皆が安心して暮らせる社会を創っていこうというのが、今の状況です。
統合報告書を取りまとめたのは、私どものこうした取り組みについて、世の中にしっかり伝えていきたいという気持ちがあったからです。財務情報だけでなく、非財務情報、あるいは将来への期待も含めて、ステークホルダーの皆さんにお伝えし、共感を得たり、さまざまなフィードバックを頂戴することによって、私たちがそれを経営に活かして、さらなる成長につなげていく。そういうサイクルを作っていきたいと思います。

ハードからソフトへ

私どもが社会にご提供できる価値とは何か。基本的には、事業活動を通じて、いかにして社会課題を解決できるかという点に尽きると思います。具体的には、環境と安心を社会に届けていくことです。私どもが持っているさまざまな資本を活用して、しっかりした戦略のもとに、価値を生み出していきます。
その価値創造プロセスのなかで、私どもが留意しなければならないのは、社会が今、大きな変革期に差し掛かっていて、自動車業界もそれは例外ではないことです。結果、私どもも大きく変わらなければなりません。
従来は自動車部品をはじめとして、ハード面を作っていくのが私どもの中心的な仕事であり、そのために技術や技能に磨きをかけて、競争力を高めてきました。
でも、これからはハード面だけに力を入れてもダメです。もっとソフト面にも目を向けていく必要があります。いや、むしろハードよりもソフトの領域において、新しい価値がどんどん生まれてくる時代ですから、それに合わせて、事業領域、人材育成についても対応していく必要があります。特に自動運転などは、ハードだけでは成り立ちません。もちろんそれも大事ですが、ソフトもそれと同等か、それ以上に重要な要素になってきます。
また、その分野で活躍する人も、アマゾンやグーグルの出身者であったりして、既存の自動車業界で働いてきた人たちとは、発想が根本的に異なります。私たちは、そういう人たちと、これからグローバルに競争をしていかなければなりません。それが私どもの課題であり、そういう領域でも成長できるような戦略を立てています。
テーブルごとに質問を受けたり意見交換を行った
一方、企業価値を高めていくために、サスティナビリティ経営を重視していきます。前述したように、もともと社会課題を解決するために、環境や安心に配慮した経営を心がけていこうという観点から、長期ビジョンを取りまとめたわけですが、まさにSDGsの枠組みにぴったりということもあり、これからそれにもしっかり取り組んでまいりたいと思います。

<プレゼン抄録1>株式会社デンソー「研究開発とモノづくり、人づくりを重視」

コモンズ30塾「企業との対話」~統合レポートを読み解く~株式会社デンソー セミナーレポート

2019年2月4日、コモンズ30ファンドの投資先のひとつ、株式会社デンソーをお招きして、統合レポートワークショップを開催しました。これまでコモンズ投信が開催した統合レポートワークショップは7回で今回が8回目。株式会社デンソーは2017年の第6回に登場して2回目になります。
当日は株式会社デンソーの杉浦グローバル戦略部長のプレゼンテーションに続き、コモンズ投信取締役会長の渋澤健が、杉浦部長と共にトークセッションを行いました。
・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・

【プレゼンテーション】株式会社デンソーが統合レポートで訴えたいこと

株式会社デンソー グローバル戦略部長 杉浦正則さま

分かりにくいことを分かりやすく伝えるための「統合報告書」

まず、デンソーという会社の紹介からさせていただきます。
弊社、株式会社デンソーは1949年に設立され、今年ちょうど70周年を迎えます。と申しましても12月ですから、まだ少し先ですね。
売上は、5.1兆円です。この数字は2017年度決算のもので、初めて5兆円企業になりました。営業利益は、連結ベースで4127億円となりました。営業利益が4000億円に乗ったのも初めてです。このように2017年度は、売上、利益とも非常に良かった1年でした。
従業員数はグローバルで16万8813人です。このうち日本の従業員数は7万4604人で、デンソー単独だと4万人弱です。これに日本のグループ企業を含めると、前述した7万4604人になります。それ以外が海外拠点で働いている従業員数です。海外拠点は北米、欧州、アジア、その他南米というようにグローバル展開しています。
今までの70年間を振り返ると、数字はほぼ右肩上がりで成長してき
ました。主な事業は自動車部品の製造、つまり、自動車という完成品の中に組み込まれているパーツを作っています。そういうこともあり、日頃、私どもの製品を目にする機会は、あまりないと思います。BtoCというよりもBtoBであり、どういう事業を行っているかという点は、消費者向けのサービスや製品を提供している会社に比べて、分かりにくいところは多分にあります。
統合レポートワークショップ中の参加者の様子
そういう意味でも、統合報告書はとても大事だと考えています。私どもの事業を少しでも分かりやすくお伝えすることによって、一人でも多くの人に、デンソーが行っている事業への理解を深めていただき、デンソーという会社に興味を持っていただければと思います。

事業の柱は6つ

具体的に、株式会社デンソーの事業内容について説明してまいります。現在、自動車部品以外の事業も含めて6つの事業分野を持っております。(非自動車部品事業を1つとしてカウント)
統合報告書の「事業別概要」に製品別の概況が書かれています。売上の28.4%が「サーマルシステム」といって、カーエアコン関連の事業で占められています。
参加者からの質問に答える杉浦さま
次いで「パワトレインシステム」で、これが24.7%です。パワトレインシステムとは、エンジン周りの製品で、インジェクター(燃料噴射装置)や排気ガスを浄化するためのシステムです。
「エレクトリフィケーション」は、これから市場が大きく拡がっていくと期待されているもので、ハイブリット自動車や電気自動車に採用されているインバーターやモーター、バッテリーをコントロールするためのECUを製造しています。現時点で、売上全体に占める比率は15.9%で、主力のサーマルシステムには及びませんが、今後の成長が大いに期待できる部分でもあります。
売上の4番目を占めるのが「モビリティシステム」で、14.4%です。これも将来性の高い分野ですね。自動運転がいよいよ現実化しており、自動車の走行進路にある障害物を検知するためのセンサーやカメラ、それらを制御するためのコンピューター、走行状況などを表示するためのメーターやナビゲーションシステムのディスプレイなどが、この事業に該当します。エレクトリフィケーションと共に、モビリティシステムもこれからの成長が期待できます。
5番目が「電子システム」で12.0%です。この中で最も大きな部分を占めているのがエンジンの制御関連です。エンジンの出力や燃料噴射を制御するためのコンピューターがこれに該当します。
以上、ここまでは基本的に自動車関連の部品ですが、実は非車載事業ということで、自動車以外の分野にも力を入れ始めました。特にロボット関連がそうです。もともとは自社の工場で使う産業用ロボットを内製していたのですが、最近はIoTが大きな流れになるなかで、飛躍的な生産性の向上という共通の課題を持った他社向けの外販にも力を入れようということで、ロボットをメインにした生産システムも販売しています。ここはこれから伸ばしていきたい分野のひとつです。現在の売上に占める比率は3.1%と小さいのですが、まだまだ伸びしろはあるとみています。
テーブルごとにディスカッションしながら理解を深める
そして、売上全体に占める比率は1.5%と、これまた小さいのですが、その他として農業にも進出しています。デンソーが農業というと、関連が見えないかもしれませんが、弊社の最大の事業はカーエアコンということで、温度や湿度をコントロールするための技術を持っていますので、まずはこれを農業に活かせないものかと考えているわけです。

研究開発とモノづくり、人づくりを重視

以上の6分野において、私どもは事業展開を図っているわけですが、統合報告書にも
記載しておりますように、デンソーとして一番大事にしているのは研究開発とモノづくり、そして人づくりです。いずれもデンソーが創業以来培ってきた強みでもあります。
研究開発については未来を見据えた先端研究に力を入れていますし、世界初の製品を生み出すことに注力しています。
モノづくりに関しては、創業以来、一貫して内製技術にこだわり、設備、生産ライン、素材、加工方法に至るまで、自社で設計・製造しています。
そして、それらを支えるのはやはり人ですから、人づくりには力を入れています。特に若手技能者の育成です。これまで培ってきた技術を伝承していくため、さまざまな取り組みを行っています。その証左として、世界最高レベルの技を競い合う技能五輪国際大会のメダリストを多数輩出しています。2017年10月にアラブ首長国連邦のアブダビで開催された「第44回技能五輪国際大会」においては、日本、タイ、インドネシア、ベトナム、メキシコから8業種、17名が出場し、金、銅のメダルを獲得しました。

ワークショップに参加したコモンズ運用部の原嶋
さらに、デンソーとして大事にしてきた取組み姿勢や価値観を、デンソースピリットとして明文化しております。日本人だけで働いていた時は、何となく阿吽の呼吸で、会社の精神、価値観を共有できましたが、2000年前後から海外拠点を積極的に展開するようになり、社員もグローバル化が進みました。何しろ売上の6割は海外ですし、従業員も6割は日本人以外の国籍を持った方々です。今や、デンソーのビジネスは海外なしでは成り立たちません。ですから、海外の従業員の方たちとも、デンソーの諸先輩方が築き上げてきた精神、価値観を共有していきたいということで、デンソースピリットとして明文化しました。

「先進、信頼、そして総智・総力の精神」というのがそれです。先進はデンソーにしかできない驚きや感動を提供する、信頼はお客様の期待を超える安心や喜びを届ける、総智・総力はチームの力で最大の成果を発揮する、というものです。



次へ
デンソー統合レポートワークショップ|プレゼン抄録1
デンソー統合レポートワークショップ|プレゼン抄録2
デンソー統合レポートワークショップ|トークセッション


『10周年。コモンズ投信が大切にしてきたこと』2.長期投資を考える

シリーズ第2回の今回は、コモンズ投信のアイデンティティ「長期投資」について考えてみたいと思います。

2008年夏、本格的な長期投資のファンドを創りたくて、私たちが尊敬する経営者の方々に、ご意見を伺いにいきました。
ソニーのトップも務めた出井さん、堀場製作所の堀場さん、当時ローソンの新浪さんに「30年目線の長期投資のファンドをはじめたい。ご意見やアドバイスをいただきたい」と。
それぞれの経営者の皆さまからは、「海外には、良い長期投資家がいて、経営の参考にもなるが、日本では皆無だ。是非やってほしい。グローバル企業と競争しているとき、経営者と同じ長期的な目線の日本の投資家が株主としているといないでは大きな違いだ。」と言われ、背筋が伸びたことを昨日のことのように覚えています。
昨年の9周年イベントでは資生堂の魚谷社長からも同様のお話がありました。
ザ・2020ビジョンの投資先でもあるラクスルの松本社長からも海外の投資家訪問をしてこられた感想で「日本の金融発展、個人資産の金融活用のためには、独立系投信が発展することが大切だと実感します」とコメントいただきました。

生活者の皆さまの長期的な資産形成に貢献するためには、優れた企業の長期的な成長に株主として参加するのが一番だと考えています。
5周年イベント対話セッションでのエーザイさん
そして、投資信託を保有いただいている皆さんにも、そこに参加して欲しくて創業時から「コモンズ30塾」や「周年イベント」の機会を設けてきました。
2009年3月に開催した記念すべき第1回目の周年イベントに登壇いただいたのは、コモンズ30ファンドの運用開始時の投資先である「エーザイ」でした。
エーザイ側からは「日本の投資家には無かった長期投資の文化を一緒に育むためだったら、ぜひ、協力したい」と快諾を頂いての会でした。
運用開始時の投資金額は1000万円程度でしたが、担当役員及びIRチーム全員の皆さんに参加をいただき、エーザイの見えない価値について学ぶ機会となりました。
こうした投資先とお客さまとの対話は、コモンズ独特の価値ある場となっています。

運用開始から10年、コモンズ30ファンドの現在の投資先30社の平均保有年限は8年を超えてきました。
欧米の本格的な長期投資家の平均保有年限も7~8年ですから、ようやく欧米の長期投資家と、保有期間では肩を並べるようになりました。

長期投資は、単なる買いっぱなしとは違います。
企業も人間と同様に生き物ですから、調子が良い時も悪い時もあります。
8年も投資を続けていると、調子が悪い局面を迎える企業も少なくありません。
この調子が悪くなったときの見極めが、その後のパフォーマンスに大きな違いをもたらします。
次の好調場面がその先に予想出来れば、この株価の下落は大きなチャンスになるからです。

企業業績が下降局面に入ると、当然、株価は下がってきます。
そうなると当社は、対話を増していきます。
そのためには、日ごろからよく対話して関係を作っておくことが大切です。

例えば、資生堂は投資期間が10年を超えてきました。
この10年間で資生堂の株価は、安値から約10倍に上昇しました。
ファンドが設定された2009年1月、アジアでの成長や、永年かけて築いたブランドを誇る老舗企業と経営改革に取り組んでいる精鋭経営者への期待などで投資しました。
投資を開始してから、2011年資生堂は社長交代で経営の若返りを図りました。
ところが国内事業の経営再編において新社長はなかなか手腕を振るうことができず、また、中国マーケットも鈍化するというダブルパンチを受けて、業績は低迷し始めます。
市場での評価は下がるいっぽうで、2012年ごろからコモンズ投信の投資委員会でも全売却を推進する意見が出ていました。
しかし、資生堂のポテンシャルはまだまだ高いのではないか、そうした喧々諤々の議論が続き、最終的には1万株のみ(純資産比率で0.3%程度)残し、保有し続けることを決めたのです。
こども投資家から手紙を受け取った資生堂魚谷社長
9周年イベントにて
そこから約半年かけ、議論と調査を続けました。
同時に、競業の化粧品メーカーにも出向き、ヒアリングを重ねたのです。
2013年には資生堂は赤字に転落し株価も大きく下落しました。しかしそのタイミングで私たちは投資を再開したのです。
その時点では、資生堂の商品力は高い、ただし、マーケティング力に課題があるという状況でした。
また、この時期、前社長である会長が再び社長に着任するという異例の事態へと展開したのですが、こうしたガバナンスの状況についても確認を重ね、むしろ投資のチャンスと捉えたのです。
そしてその後の資生堂が社外から社長を招き入れるという経営再編の行方をじっくりと見極めることにしたのです。
それが、現社長の魚谷社長です。
魚谷社長のリーダーシップにより、資生堂の業績は急回復。
140年もの歴史をもつ老舗企業は2018年に史上最高値を更新しました。
あのときの多面的な議論と、辛抱強い対話、そして投資委員会という意思決定の仕組みが、ファンドの超過リターンへとつながったと自負しています。

資生堂さんをお招きして女性の活躍セミナー
また、投資先企業として資生堂とお付き合いを続行し、同社の非財務的な価値の可視化を高めるために、担当役員をお招きして「女性の活躍セミナー」も実施しました。
世間的には「資生堂ショック」といわれた出来事でしたが、トップマネジメントに実際のお話をうかがうことで、「さすが資生堂」という見方を、受益者の方にも持っていただくことができました。

長期投資とは、まさに胆力が必要であり、本質を問い続ける定点観測から成り立っているのです。

次回に続く。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
10周年コモンズフェスタ
3/16京都、4/6東京、2都市で開催される10周年コモンズフェスタ。投資先企業の豪華なゲスト、お客さま、寄付先の皆さま、社会課題に立ち向かうチェンジメーカーが一同に会する1年に1度の大イベントです。ご家族・ご友人もお誘いあわせのうえ奮ってご参加ください!

◆メインイベントの詳細・お申込は< こ ち ら >から(特設ページ)

◆懇親会のお申込
【京都】https://commonsfesta10thkyoto.peatix.com/

【東京】https://commonsfesta10thtokyo.peatix.com/


『10周年。コモンズ投信が大切にしてきたこと』1.コモングランド

コモンズ投信がファンドの運用を開始してから、10年が経ちました。
10年を機に、『10周年。コモンズ投信が大切にしてきたこと』と題してこれまでの取組みについてじっくり想いを廻らし一つ一つ丁寧に言葉にしてお伝えする本連載。

まず初回である今回は、全体を俯瞰してコモンズが持っている世界観「コモングランド」についてです。

コモンズ投信のコモンズはコモングランド(共有地)から来ています。
コモングランドは、今日よりもよい明日を願う、願うだけでなくそのために行動している、想いを持った人たちが寄り集まる場所というイメージを持っています。
そこには投資家という名の普通の生活者がいて、新しい価値を創造することをミッションとしている企業とそこで働く人(もちろんこの働く人たちも普通の生活者でもあります)がいます。
また、生活に不便を感じながらも同じように今日よりもよい明日を願う障がいのある人や立場の弱い人も、そういう社会の課題を解決しようと活動している人もいます。

社員も、お客様も、投資先企業も、コモングランドにいる人たちが共通して持っているコアバリューこそ、「今日よりもよい明日を願い未来を信じる力がある」ということ。そういう人たちが寄り集まっている場所がコモンズ投信です。

コモンズ投信は投資信託というしくみを使って世の中をよりよくできると考えています。

コモングランドのなかで、投資家の想い(資金)をコモンズが受け取り、企業に投資する。企業と対話をしながら長期に共に歩む。
企業の努力によって生み出された価値は世の中をより豊かにし、またその果実はファンドを通じて投資家に還っていく。
新たにうまれた価値の一部は寄付に回す。

コモンズが橋渡し役となって、未来を育む場所や機会を創る“インベストメントチェーン”を実現しています。
10年間、その循環が滞ることなく続けられたこと、これからも長くそして大きく続くことは、皆の力を合わせてよりよい明日を切り拓いている証でもあります。

相場が荒れるような時期も、未来を信じる力を持ったお仲間がどっしりとファンドを支えてくださり、昨年は「受益者の97.7%の方が利益を出していて、数ある金融機関の中で一番だった」という大変うれしい調査結果が発表されました。
そのようなお仲間と歩みを進めていることこそ、コモンズ投信が持つ力、他社にまねできない圧倒的な強みだと思っています。

(次回に続く。)

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
10周年コモンズフェスタ
3/16京都、4/6東京、2都市で開催される10周年コモンズフェスタ。投資先企業の豪華なゲスト、お客さま、寄付先の皆さま、社会課題に立ち向かうチェンジメーカーが一同に会する1年に1度の大イベントです。ご家族・ご友人もお誘いあわせのうえ奮ってご参加ください!

◆メインイベントの詳細・お申込は< こ ち ら >から(特設ページ)

◆懇親会のお申込
【京都】https://commonsfesta10thkyoto.peatix.com/

【東京】https://commonsfesta10thtokyo.peatix.com/

◆イベント運営をお手伝いくださるボランティアスタッフを募集しています
【京都】http://www.seminars.jp/s/394150

【東京】http://www.seminars.jp/s/394162

元ヘッジファンドの伝道師からの提案

おはようございます。渋澤健です。インフルエンザ推定患者数が過去10年で最大の228万人という報道がありましたが、皆様、いかがでしょうか。どうぞご自愛ください。インフルエンザ・バリアを張りたいですね。

さて、土曜日の日経新聞のトップ記事に、ちょっとびっくりしました。このようなニュースを大きく取り上げた意図は何だったのか。


カネ余りに「敗北」 膨らむリスクのマグマ

おそらく、その意図とはヘッジファンドそのものではなく、「カネ余り」の悪現象として捉えていることでしょう。つまり、超金融緩和により、全体が押し上げられ、市場の「価格発見機能」が失われているパッシブ化です。それには、リスクがあるということの警戒です。

私は、今では長期的なつみたて投資のメッセージを伝えるために日本全国へ巡回していますが、実は2000年代の前半まで「ヘッジファンドの伝道師」と呼ばれていたこと、ご存知でしたでしょうかw
1980年代のバブル崩壊で日本の機関投資家の存在感が薄れる中、ヘッジファンドの存在感が増してきて自分が最初にヘッジファンドと接点を持ったのは1991年ぐらいでした。その後、彼らの存在に魅了され、自分もヘッジファンドで働きたいという希望が叶ったのは1996年。大手のグローバルマクロのヘッジファンドでトレーディングの仕事に携わり、翌年には東京駐在員事務所の代表を務めました。
それまで自分が経験した米系インベストメントバンクとは違う世界が広がってました。少数精鋭でも、金融市場で大きな仕事ができることがわかりました。ヘッジファンドで仕事をしなかったら、コモンズ投信という少数精鋭の運用会社を立ち上げるという発想は芽生えなかったと思います。

元々、ヘッジファンドは金融業界のベンチャーです。小資本で、実勢もない。だから、儲かったら成功報酬を与えようという考えです。また、ボリュームを増やして稼ぐのではなく、運用パフォーマンスを重視する顧客と目線を合わせるという意味でも成功報酬制は合理的でした。
2001年に独立して、ヘッジファンドなど「オルタナティブ投資」を日本の機関投資家にご案内するアドバイザリー事業を始めました。しかし、少々気になる傾向がありました。ヘッジファンドが雨の後のタケノコように増えて、「なんちゃってヘッジファンド」も目にするようになりました。目当てが高報酬であったことは間違いありません。
数が増えると収益チャンスが減る。市場の非効率性を収益源泉としているヘッジファンドでは特に、これは当たり前のことです。

外交官・ジャーナリストであったAlfred Winslow Jonesが世界初のヘッジファンドを設立したのは1949年です。1966年のフォーチュン誌に、その前の10年間、Jones氏のヘッジファンドの運用実績は670%であり、同期間のミューチュアル・ファンド(投資信託)の358%を多く上回ったという記事が掲載されました。その後、それまで一般的に知られていなかったヘッジファンドの設立が増えるようになり、数が増えて、運用実績が伸び悩み、多くのヘッジファンドが1970年代には黄昏を迎えました。しかし、淘汰されることなく生き延びたヘッジファンド・マネジャーもいました。伝説的なGeorge Soros氏です。

とうことは、これから多くのヘッジファンドが閉鎖される可能性がありますが、その淘汰を生き残るヘッジファンド・マネジャーもいるということでしょう。

コモンズ投信が投資信託会社として発足したのは2008年。その前後に多くの独立系投信会社が設立されました。「価格発見機能」や「市場の非効率性」という意味ではヘッジファンドと同じと言えるかもしれません。

しかし、ヘッジファンドの存在意義とは、年次のマネジメント・フィーおよび成功報酬を差し引いた後の「ネット・リターン」の絶対的収益、つまり、株式市場の動きにかかわらず毎年プラスになっていることです。
そういう意味で、単年度、(上昇している)株式指数よりヘッジファンドが下回っているということは本質的ではなく、マイナスにならない、つまり、リスク・フリー・レート+リスク・プレミアム(ハードル・レート)より高いことが本来の目的です。株式指数との比較ではないのです。リスク・フリー・レートが下がっているのであれば、ヘッジファンドのリターンも下がるのは当たり前と正当化できます。
そのリスク・フリー・レートがゼロ(か、マイナス!)の場合、高いマネジメント・フィーおよび成功報酬を支払う意味があるのか。この疑問にヘッジファンドは応えなければなりません。

一方、コモンズ30ファンドの場合はマネジメント・フィー(=信託報酬)は税引前0.98%で、成功報酬はありません。そして、我々が目指す投資とは、単年度の絶対的収益ではなく、長期的な絶対的収益です。
つまり、「価格発見機能」や「市場の非効率性」に加え、「持続的な価値創造」が収益の源泉となります。価格発見機能が失われたとしても、持続的な価値創造する企業は残るであろうという考えです。
長期的な年率化した運用実績が(信託報酬後)7%以上であれば、それなりの仕事をしていると思って、ファンドを立ち上げました。十年を経て、コモンズ30ファンドの年率化した運用実績は11%台です。もちろん、これは、これからの10年の実績を保証している訳ではありません。カネ余り現象、価格発見機能が失われていく株式市場のパッシブ化は、コモンズ投信にとっても気になることです。
しかし、持続的な価値創造が可能なよい企業に長期投資を託すこととは、『黄昏になっても、夜明けは再び訪れる』という「未来を信じる力」を用いて前進することです。是非とも、ご一緒にどうぞ!