<9周年イベントレポート>        企業との対話トークセッション       コモンズ×コマツ×三菱商事

<企業との対話>
横尾和浩さま(株式会社コマツ)
武久裕さま(三菱商事株式会社)
渋澤健(コモンズ投信会長)
伊井哲朗(コモンズ投信代表取締役社長&CIO)
末山仁(コモンズ投信シニアアナリスト)

「コモンズ30ファンド設定当初から投資し続けているコマツ、三菱商事の魅力を探る」
右から、三菱商事武久さま、コマツ横尾さま、コモンズ投信伊井、末山、渋澤

渋澤   コマツも三菱商事も、コモンズ30ファンドが設定された2009年からずっと保有しています。伊井さんに伺いますが、なぜコマツと三菱商事に投資したのでしょうか。

伊井   2007年にコモンズを立ち上げ、投資信託を設定するために組入銘柄の調査を始めました。2008年から調査活動も活発になり、それこそ毎日ワクワクし通しでしたが、実は投資委員会では1銘柄も決まっていませんでした。
当時、3400社あった上場企業から30社まで絞り込むわけですから、なかなか大変な作業だったわけです。
そのなかでコマツに着目したのですが、普通、コマツの投資価値を検討する場合は、日立建機やコベルコといった国内の同業他社と比較します。
しかし、コモンズ30ファンドは、長期的な投資価値を追求するファンドなので、建機で世界最大だった米国のキャタピラー社と比較しました。
過去20年分のアニュアルレポートをいただいて分析したり、ガバナンスを調べたりしました。
で、結論してはキャタピラー社と互角に勝負できると考え、投資に踏み切りました。
当時の株価は、確か900円前後だったと思います。
また三菱商事は、日本を代表する会社の一つではありましたが、総合商社という業態で比較できる企業が無く、たとえばトヨタと比較してみてはどうかなど、議論が盛り上がり、最終的に企業としての強さに注目して、投資対象にしたのです。

ところで、コマツは海外の売上比率が8割ですが、グローバル展開する時の人材確保、人の育成はどうやっているのですか。


横尾さま   かつて海外に進出する時は、トップをはじめとして全員が日本人でした。でも今は、現地採用した人たちの中からトップを選ぶようにしています。
中国は完全に現地化しました。現地採用し、コマツウェイという企業文化を認識させて、一緒にやっていく。
その方が定着率も良くなります。グローバル化は着実に進んでいます。

伊井   三菱商事は貿易から事業投資、さらに事業経営へと舵を切ってきたわけですが、事業経営となると、経営幹部として投資先に入ることになります。それに相応しい人材の育成は、どうやっているのですか。

武久さま   例えば20代の社員がいきなり経営幹部として投資先に入り込んでいくのは非常に困難です。なので、まずは経営幹部としてではなく投資先に出向させ、現場での経験を積ませます。
その後、本社に戻して、どうすれば投資先の企業価値が上がるのかを学ばせ、知見や経験を積んだ上で、経営者として投資先企業に行かせます。


末山   コマツは「ダントツ」をテーマにして、先進的な無人ダンプの運用を行っています。今後、どのように進化していくのでしょうか。


横尾さま   無人ダンプはコマツオリジナルではなく、その技術を持つ米国の会社を買収しました。というのも、危険の高い現場では無人化が必要だと考えたからです。
無人ダンプはこれからさらに進化していきます。
現在、運用している無人ダンプは有人車両をベースにしているので運転席が付いていますが、今、開発している無人ダンプは、最初から無人を想定しているので、運転席そのものがありません。
運転席を無くすことで、四輪に均等に荷重が掛けられる設計になります。数年後には実用化されるでしょう。



末山   三菱商事が、事業投資から事業経営に舵を切ったきっかけは何だったのでしょうか。また鮭鱒事業に関してですが、三菱商事ならではの強みはどこにあるのでしょうか。


武久さま   事業経営は、2年前に垣内社長が就任した時から強く掲げられるようになりました。成長するためには、投資先である事業会社の価値を上げる必要があります。
そのためには黙って配当を受け取るだけでなく、投資先に入り込み、自ら企業価値を高める努力をする必要があります。
鮭鱒事業については、三菱商事の持つバリューチェーンが最大の強みです。
たとえばセルマックで生産した鮭の切り身は、生活産業グループの子会社である東洋水産で加工され、物流は同じく子会社である三菱食品が担います。
最終的に鮭鱒の切り身はローソンのおにぎりの原材料にもなっています。このようなバリューチェーンの幅広さが強みです。

伊井   ESGについてはどう考えていらっしゃいますか。

横尾さま   ESG重視の投資家からは、「石炭の採掘を止めろ」と言われることもあります。
建設機械はCO2の排出量が多いのですが、ではEV化を進めれば問題が解決するかというと、実はEV化を進めるには大量の銅が必要であり、銅を生産するには別の環境問題が絡んできます。
なので、ハイブリット化を推し進めることによって、いかにCO2の排出を抑えるかを考えています。あちら立てればこちら立たずということで、全方面で環境に良い方法を見つけるのは難しいのですが、出来る範囲で、きちんと対応していきます。

武久さま   弊社の社長は、持続可能な成長に向けて、経済価値に加えて環境価値と社会価値の同時実現が必要と言っています。例えばエネルギーに関して言えば、原油よりも環境負荷の少ないLNGを注力分野としています。

渋澤   環境に対する負担について、投資家からIR担当者への質問内容は、3年前に比べて変わってきましたか。



横尾さま   欧米の投資家は、当然のように環境問題への取り組みについて聞いてきますが、国内の機関投資家は、まだこの点についての関心度は低いと思います。

武久さま  確かに環境問題への関心は高まっています。国内に関して言えば、例えばGPIFがESG投資を行う等の動きにも見られるように、関心は高まっていくでしょう。

末山   長期的に見て、両社のビジネスモデルはどう変化していくのでしょうか。

横尾さま   建設鉱山機械メーカーであることは変わりませんが、自動運転など周辺ビジネスはもっと深くなっていくと考えています。

武久さま   我々は総合商社ですので、長期的な視点に立てば今後も環境変化に対応して事業ポートフォリオを変えていくのではないかと思います。
総合商社の強みはあらゆる産業への接地面積が広いことです。接地面積が広いからこそ、変化に対応しやすいと考えています。

渋澤   今日は皆さま、ご参加いただきありがとうございました。