企業のチャレンジを応援するコモンズ30ファンド
おはようございます。渋澤健です。先週の木曜日(10日)に、コモンズ30ファンドの投資先であるベネッセホールディングスの2018年3月期決算説明会に数年ぶりに出席しました。2016年10月に就任された安達保社長が、丸一年、経営トップとして指揮を執った1年(2017年度)の定点観測となるよい機会でした。
前回、当社の説明会に出席したのは2014年7月に発覚した個人情報漏えい事件後の10月末に開催された2015年度第2四半期決算説明会でした。その会場で私は原田前社長へ社員の様子や意気込みについて質問し、また、コモンズこどもトラストをお子様のために設けていらっしゃる親御さんから預かったメッセージを届けました。
前回と今回の違いで印象的だったのは、説明会および質疑応答を終えたときの対応でした。原田前社長はさっさと退場して会場から去ってしまったので、預かったメッセージは会場に残ってご挨拶してくださった福原前副社長へ手渡ししました。
今回は、安達社長、小林副社長の経営トップのお二人は会場に留まり、立ち寄った参加者の挨拶や質問に丁寧にお応えしていました。経営トップのコミュニケーションが社内外に著しく改善していることは一目瞭然です。
漏えい事件の後に何回も原田前社長との面会をお願いしましたが、結局、実現することがなかったです。一方、安達社長の場合、就任されてからちょっと時間を空けてから面会を申し込んだところ、就任後の8カ月後に実現し、経営戦略のお考えをお伺いする対話を通じて会社の状態が改善している感触を得ることができました。
漏えい事件はマスコミで大きく追及され、「進研ゼミ」の会員数が激減するなどコモンズ30ファンドが目指している「持続的な価値創造」に適しているかという疑問は社内外でも上がりました。しかし、原田前社長との面会は叶いませんでしたが、他の幹部や社員との対話を続けていた私が着眼したのは、「まだ、社員の目は死んでおらず意気込みがある」という「見えない価値」でした。
会社(そして、やる気ある社員)が苦しんでいるときこそ、一緒に踏ん張ることができることが長期投資家として要だと思います。会社が苦しんでいるときは株価も反応して下落していますので株主(投資家)も苦しみを感じます。しかしながら、その会社の「持続的な価値創造」の可能性が、対話を通じて、失せていないという判断と下すことができれば、逆に、長期投資家は割安な状態で会社の株式をコツコツと積み増すことができます。
2017年度のベネッセの業績は、4年ぶりの増収、かつ5年ぶりの増益でした。大雨の後に地を固めることができたので、これからは守りから攻めへと転じている経営の意気込みを感じました。
国内事業の確たる回復、海外事業のテコ入れ、ベルリッツの構造改革による回復の見通し、介護の安定成長、そして、M&Aなどで「第3の柱」の創出する航海図を描いていました。第1の柱である教育領域においては、競合と比べてコンテンツの質の自信を感じることができて心強かったです。
また、第3の柱となるM&Aの財源を確保するために、会社として初めて減配を示しました。高配当はベネッセの株式保有の魅力のひとつでもあるので、市場の第一反応はネガティブであると思いました。また、創業家の意向を丁寧に考慮する必要もあったと思います。このような戦略的な減配の勇断を下した経営に私は感銘を示し、質疑応答のときの質問で敬意を示しました。
ただ、M&Aの対象は500~1000億円の事業となるようなので、確立した事業の会社が想定されます。そういう意味で、市場価格と比べるとプレミアムを支払うほどの成長が見込める事業になるのか、ベネッセが入ることによって支払うプレミアムに見合うバリューアップの期待の想定について質問しました。
安達社長は「とても良い質問」と返していただき、単独の案件ではなく、安定的な事業をコアとして、いくつかを買う選択肢もあると答えていただきました。また、例えば事業承継の場合だと、比較的に割安な状態な買収することができるという考えも示しました。つまり、プレミアムを払ってでも、一発で買うということだけが選択肢ではないということです。また、ベネッセの経営ノウハウ、顧客ベースからのシナジー効果が期待できるとのことでした。
この経営戦略に果実があるかは、現在からは見えない未来です。しかし、見えない未来にチャレンジする企業は、持続的な価値創造の可能性が高い企業であると考えます。コモンズ30ファンドは、しっかりと対話に応じてくださる投資先企業のチャレンジには引き続き末永く応援することを目指して参ります。
漏えい事件の後、あれほど追求していたマスコミ陣が、どのように減配のニュースを取り上げるかと思って、次の日の新聞をめくったところ、何も掲載されていませんでした。改善に努力している会社経営は、ニュースにならないのでしょうか? と、思って、今回のブログは長文になりました。早朝から失礼いたしました。