「イールドカーブ」が逆転している意味

おはようございます。渋澤健です。お盆休みモードから仕事モードに戻っている方々が多いと思いますが、ごゆっくりと休養されたでしょうか。

ここから爽やかな秋口へと向かいたいところですが、ちょっときな臭い感じがしています。米中、日韓、印パキスタンなど世界中で色々な対立がヒートアップしていますし、台風・地震・噴火など自然災害も気になるところです。そして、アメリカのイールドカーブが逆転しています。

「イールドカーブ」と聞いてもピンとこないかもしれません。「イールドカーブ」は長短金利を比べる「利回り曲線」のことであり、マーケットのプロにとって大切な、今後、景気動向のシグナルを送る指標となっています。

一般的に長期の方が不確実性(リスク)が高いと考えるため、通常、長期金利の方が短期金利より高く、イールドカーブが「立って(右肩あがり)」の線を描きます。時々、長期・短期金利の格差が縮まって、イールドカーブが「寝る(水平に近い)」場合もあります。将来の景気動向が鈍化すると市場が読み取って、実際に実現する前に長期金利を下げる(債券価格を上げる)からです。

そして、長期金利が更に下げてイールドカーブが「逆転(右肩下がり)」する場合もあります。それが、現在のアメリカの債券市場の現状です。下記をご覧ください。


これは、アメリカの10年長期債と3か月短期債のスプレッド(差異)をグラフ化(簡易なイールドカーブ)したものですが、それが、直近ではマイナスの値になっている、つまり、イールドカーブが「逆転(右肩下がり)」になっています。

そして、グラフで灰色になっているところは米国が不況期に入った時期です。今までのパターンではイールドカーブが逆転した後に不況になっています。ということは、今回も。。。 という予想に現実味があるのです。

トランプ大統領は米国債券市場が「逆転」していることについて、パウエルFRB議長が「何も分かっていない!」(つまり、短期金利が高すぎるから逆転現象が起こっている)と苛立ちを隠せません。ただ、ご本人が理解すべきことは、米国債券市場が正常に機能していて、将来の景気動向のシグナルを送っているという現実です。

一方、日本の場合は、日本銀行の長年の長期国債の大量な買い入れによる超金融緩和政策でイールドカーブが常に「寝た」状態であり、日本の国債市場の景気の予測機能が壊れています。

これから景気が減速するのであれば、、、当然、株式市場も下げるはずです。ただ、教科書的な動きより現実を複雑にしているのが長年の超金融緩和の影響です。経済社会に余剰資金をじゃぶじゃぶと供給している状態で株式市場が、経済が減速することを無視して無理矢理に支えられているという不自然な感じもあります。特に、日本の場合は日本銀行が「金融緩和」の策として、ETF買いにより、直接に株式市場に介入していますから、市場の「価格発見機能」も阻害しています。

株式投資家であれば、株式市場の機能が壊れていたとしても価格(株価)が上がれば良し、結果オーライじゃないかという考えがあるかもしれません。でも、長期投資家、つみたて投資家の場合は違います。

大切なことは企業の持続的な価値創造であり、健全な市場の持続性です。長期的に、毎月、積み立てて投資をしているので、むしろ、下がるべきときにはきちんと下がってほしい(定額で毎月買い入れているので、価格が下がればもっと多くの口数が買えますので)、そして、上がるべきときはきちんと上げてほしいと考えるからです。

持続的な価値創造というツボをきちんと押さえていれば、下がった価格は必ず再び上がります。そのとき、下がったときに多く購入できた口数が効いてくるのです。だから、長期投資家として大切な心構えとは、不況になったから、株式市場が下がったから、不安になって積み立て投資を停止することなく、解約しないことです。むしろ、増額・新規開設する進取の気持ち、これが大切です。不況は間違いなく、長期的な積み立て投資のチャンスですから。