未来予想図 1:VR・ARで広がる○○の世界

未来予想図
1:VR・ARで広がる○○の世界
2016-10-07-FRI

9月15日から18日に幕張メッセで開催された世界最大級のゲーム展示会「東京ゲームショウ2016」の総来場者数が歴代最多となる27万人を突破しましした。今年も発売目前の新作ゲームや様々なジャンルのコンピューターエンターテイメントの最新情報が発信されましたが、その中でも今年の主役はVR(バーチャル・リアリティ=仮想現実)対応のゲームでした。 VRとは、コンピューターグラフィックを用いて完全に仮想の世界を作り、その世界を体験するというものです。ヘッドマウントディスプレイをつけて完全に仮想世界の中に入り込む「没入感」がキモ となります。10月13日には日本を含む世界で「プレイステーション ヴィーアール(PSVR)」の発売が予定されており、同会場でも特に注目度が高く、終日長蛇の列が見られました。ただし、現段階ではVR酔いと言われる映像酔いを引き起こしてしまうゲームがあるなど改善の余地もありそうです。

ところでゲーム業界最大手の任天堂は、一度も東京ゲームショウに参加したことがないことをご存知ですか?業界では有名な話ですが、その理由は「入場料が有料」や「東京近辺の人しか来られない」などと言われています。そんな不思議を秘めた任天堂が生み出した「ポケットモンスター」をキャラクターとしたゲーム「ポケモンGO」が全世界で空前のヒットになっています。 同ゲームは最初の1週間で史上最多のダウンロード、Google Playでの最速5000万インストール、そしてゲーム史上最速の売上5億ドル達成という新記録を樹立しました。デビュー当初、株式市場では、ソニーや任天堂を含むゲームメーカーや電子機器メーカーなどがARやVR関連ということで注目を集め、大活況となりました。同ゲームはまだ10%程度しか完成していないと言われており、ユーザーは今後のバージョンアップを心待ちにしているようです。
ゲームの全容が明らかになっていない中ですが、 現段階で同ゲームがヒットした理由は4つあると言われています。①ポケモンという元々世界中の幅広い世代から支持されているキャラが活躍するゲームであること、②AR(拡張現実)という目新しい技術を使った現実の世界にあたかもポケモンが本当にいるかのような体験ができること、③自分自身の歩行によってポケモンを捕獲、育成していくという課金に頼らない仕組み、④最後にこれら3つの要素を融合させたゲーム設計があったからであると、専門家は分析しています。 同ゲームでは、現実世界にある公園や池、有名な建物などを訪問することがゲームを進める上で必要となりますが、日本ではマクドナルドの約2900店舗も重要な役割を担っています。実際にゲームのユーザーはマクドナルドを来店、ついでにハンバーガーなどを購入しており、日本マクドナルドの狙い通り売上向上に貢献しているようです。

こうしたネット・ゲーム上(オンライン)から現実世界(オフライン)での行動を促す施策をO2O(Online to Offlineオーツーオー)と呼ばれ、具体的には、実店舗をもつ飲食店や販売店などがオンラインで割引クーポンやサービス追加クーポンなどを提供することで、店舗の認知や誘導につなげることです。AR技術はO2Oの発展に大いに寄与するものと見られており、今後の広告やマーケティング活動になくてはならない技術になるかもしれません。 しかも、スマートフォンには、インターネットの閲覧履歴やECでの購買履歴、そして移動履歴など極めて重要な情報が収められており、人物属性をかなり詳細に把握することができます。もちろん全ての情報が無許可に活用されるわけではありませんが、ユーザー同意の下、このような情報を広告に少しでも活用できれば、広告のあり方は大きく変化していくと考えています。 我々消費者が受けるメリットとしては、自分にカスタマイズされたクーポンを利用することで安く買い物ができることや、例えば初めて来店するアパレルショップであっても洋服の購買履歴や趣向が事前に共有されることで、自分好みの洋服を時間かけずに選ぶことができるなどのメリットがあります。

インターネットの普及拡大を背景に、上記の事例に見られるような広告と最新テクノロジーを組み合わせた「アドテク(Advertisement technology)」という造語が生み出され注目を集め始めています。最新技術によって発展しているアドテクは、インターネットやゲームなどの新しい媒体だけでなく、新聞やテレビなどがデジタル化されたことによる再評価により、活躍の場は大きく拡大すると見られています。 つまり、アドテクは、新たに創出される広告だけでなく、伝統的な広告媒体においても、一段と注目される存在となり得ます。VR・ARなどの様々な最新技術を取り込んで今後も成長していく「広告の世界」において、アドテクの発展はまだ始まったばかりです。引き続き注目していきたいと思います。