未来予想図 6:『Society 5.0』における勝ち組の条件

未来予想図
6:『Society 5.0』における勝ち組の条件
2017-03-24-FRI

2017年3月11日(土)に弊社8周年イベントの「2020年に向けて」において、「Preferred Networks(プリファード・ネットワークス)」のCOO長谷川順一様と対談しました。同社は、人工知能の分野で高い研究成果を挙げるなど、この分野においては知る人ぞ知る会社です。長谷川様からのお話で、トヨタやファナックなど世界中の優良なデータを持つ企業でなければ、生き残れないというお話がありました。
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<講演動画>https://youtu.be/ZvUmydz8s-8
<対談記事>http://park.commons30.jp/2017/04/ai.html
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日本では、まだ人工知能の導入にあまり積極的ではありません。なぜならば、日本の経営者の多くは米国に比べてITリテラシーが劣後している場合が多く、人工知能が云々と議論する前に、IT(システム)を活用することで事業の競争力を高める「攻めのIT投資」を実践すらできていないからです。裏を返せば、日本企業の多くはこれからそうした変化の局面を迎えるため、その数だけ投資チャンスが潜んでいるとも言えます。これらの企業はまず、人工知能の導入というよりも、企業が有するコアの機能とITを融合させてビジネスを革新するため能動的に変化することに着手しなければなりません。ECや金融業など既にITと親和性の高い企業ではなく、むしろモノづくりの企業(製造業)こそ、ITとの融合が急務であると考えます。日本の自動車や機械、電子部品などの技術力は、世界から高く評価されていますが、いつまでその地位を保つことができるでしょうか。製品を販売して終わる売り切りビジネスから、高い技術力とITを掛け合わせることで、製品の利用を通して集められるデータを元に新たなサービスを提供するビジネスモデルへ変化させなければ、彼らに明るい未来はないと確信しています。

こうした変化は、日本が掲げる『Society 5.0』に通じる話です。『Society 5.0』とは、ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取り組みと小難しく定義されています。 簡単に言うと、「超スマート社会」が実現すれば、あらゆる人が必要なサービスを受けることができ、年齢や性別、地域などのさまざまな違いを乗り越え、活き活きと快適に生活できるということです。
政府は10年後にこうした社会を実現するため、基盤技術の戦略的強化に乗り出しており、超スマート社会サービスプラットフォームに必要な技術(サイバーセキュリティ、IoTシステム構築、ビッグデータ解析、AI、デバイスなど)と、新たな価値創出のコアとなる強みを有する技術(ロボット、センサ、バイオテクノロジー、素材・ナノテクノロジー、光・量子など)の強化に対して、高い達成目標を設定しています。

ザ・2020ビジョン」は、5~10年先を見据えた中長期視点で「時代の変化に対応する企業」を投資対象としているため、『Society 5.0』にはとても注目しています。このテーマを調査してきた中でわかってきたことは、AIやロボットなどある一つの技術に長けていたとしても、ビジネスの勝ち組になることは難しいということです。 「AI+サイバーセキュリティ」や「ロボット+センサ+IoTシステム構築+AI+再生医療」など、複合技術を組み合わせた製品であることに加えて、その分野の学会や監督省庁との高い信頼関係を構築し、社会保険制度などから認可を得るなどのビジネスモデルが求められます。技術の高さ、経営ノウハウ、マネジメント(社長)の品格の三拍子が揃うことは、極めて稀です。そうした貴重な企業との出会いを日々探し求めています。

シニアアナリスト兼ポートフォリオマネジャー
鎌田 聡