NISA「2階制度」の複雑化はNG
おはようございます。渋澤健です。
土曜日の日本経済新聞は日本政府・与党のNISA制度の刷新の方針を一面のトップ記事で報道しました。皆さんは、どのように反応されましたでしょうか。
私は現状のNISA制度の刷新については100%賛同します。しかしながら、「2階建て」という方針は残念ながら評価できません。
制度の普及のために必要なのはユーザー、つまり、国民の視点からの簡素化です。今回の「2階建て」は、色々な意見を取りまとめるための妥協、複雑化であり、本来の政策目的を達成できないリスクが高まると思います。
簡素化という側面では答えは極めてシンプルです。現状のNISA、(現状では超複雑な)ジュニアNISAを廃止して、つみたてNISAの恒久化および未成年にも適用する一本化という刷新です。つみたてNISAは、極めてシンプルで優れた制度だと思います。
NISAを廃止しなくて、2階建てという複雑化を増す制度にする方針を示している理由は、「株やってる」顧客層から手数料収入を得る既得権益ある業界への配慮であると推測します。つみたてNISAは金融庁から認定された投資信託しか適応されなく、その条件として販売手数料がゼロでなければなりませんから。これでは、業界が儲からなく、不満の声が上がっていることでしょう。
しかし、NISAという制度は業界のために施行された税優遇制度ではないはずです。国民のためです。そして、その政策意図は、より多くが「貯蓄から投資へ」に関心を持ってもらうことです。
人生100年の生活を踏まえ、今まで貯金しかしてこなかった国民が、長期的な資産形成のために、少しずつ投資に目を向けるための呼び水となることがNISAの政策的意図です。既に「株やってる」層への税優遇制度ではないはずです。
現に、つみたてNISAが施行されてから、若手や女性の投資セミナーなどへの参加率が高まっていると実感しています。この傾向を、つみたてNISA制度の恒久化により、更に後押しすべきです。
また、これからの日本の人口動態(逆プラミッド)を見据えれば、未成年の未来のためのNISA制度は不可欠であるものの、現状の「ジュニアNISA」の制度設計は複雑すぎます。せっかく、大変意義がある制度なのに利用が少ないのはニーズがないのではなく、制度が複雑だからです。つみたてNISAを未成年に適応できるだけで、この問題は解決できます。極めてシンプルなことです。
NISAの刷新は急務です。でも、それはあくまでもユーザー視点のため。「2階制度」が、本当により多くの様々な世代の国民を「貯蓄から投資へ」と動員する制度設計なのか、しっかりと政府・与党に吟味していただきたいと思います。お願いいたします。