未来予想図 5:人工知能とファンドマネージャー

未来予想図
5:人工知能とファンドマネージャー
2017-02-07-TUE

2017年1月に開催した四半期運用報告会(東京・名古屋・大阪・福岡)において、「AI(人工知能)が発達していくと運用にどんな影響があるか。AIの発達は脅威ではないか」という質問がありました。質問者の意図としては、AIが発達していくとその役割をAIが完全に代替することができるので、ファンドマネジャーという職業がなくなるのではないか、言い換えれば、人間がファンドマネジャーであるよりもAIというシステムの方が運用成績を上げられるのではないかということなのでしょう。

何をもってAIと定義するかには議論もありますが、自動的に何か判断するシステムをAIとすれば、運用業務は既にAIとも言えるシステムをかなり使いこなしている産業の一つと言えます。いつの時代も運用(金融)業界は、より高いパフォーマンスを求めて時代の最先端テクノロジーを取り入れてきました。したがって、人間とAIの対立軸ではなく、共存共栄の道を歩んでいると私は思っています。重要なことは、人間よりAIが優る分野(単純なスピード競争など)はAIを大いに活用するべきであり、人間はAIで代替できない分野に特化するということです。例えば、現状のAIは過去情報に基づいて将来を予測するため、まだ発生したことのない事象を想定したり、それが発生した場合の対応策を事前に準備することは出来ないと言われています。Googleのアルファ碁がプロ棋士に勝利したことが話題となりましたが、運用業界で同じことが起きるにはまだ時間がかかるようです。

2045年にAIが全人類の知性を上回るという「シンギュラリティ」が起きると仮定すれば、ファンドマネジャーが人間からAIに完全移行するという議論を超えて、「お金」の概念が消滅した世界が到来するという予測があります。つまり、AIの発達によりエネルギーコストがゼロとなれば、人類は労働から開放され、衣食住にお金の心配がなくなると、人間から「お金を持ちたい、殖やしたい」という欲求が喪失するという考え方です。そうなればお金を殖やすための運用という産業は存在意義をなくします。それはいつか?早ければ30年後、遅くとも50年後にはそうした世界が見えてくると指摘する有識者が存在します。
この仮説が正しければ、私はファンドマネジャーという職業を失うことになりますが、同時に労働せずにお金の心配なく、やりたいことを思う存分楽しめる人生を満喫できるならば、それも悪くないなと思う今日この頃です。皆さんはどう思いますか?

シニアアナリスト兼ポートフォリオマネジャー
鎌田 聡