環境・社会における企業のインパクト
おはようござます。渋澤健です。九州方面の方々は気が休まることない一晩だったと思いますが、超大型台風による災害・被害が最小限で収まったことを祈願しています。
今年は長引いた梅雨、史上最強の猛暑、そして大型台風など明らかに天候が乱れており、地球温暖化と少なくとも相関関係があり、私は専門性ありませんが、因果関係もあると思ってしまいます。いずれ、地球温暖化は遠い未来や遠い場所のことではなく、我々の日常生活や企業の事業・業績にも悪影響を与えるリスク要因であるということに直視する必要があります。
海外の論調では、アンチESGのトランプ政権の下でも、炭素税の導入をリアルなリスクとして企業経営トップら討議しているハーバード大学のフォーラムなどの動きがあります。日本企業も、地球温暖化が自社の事業の重要なリスク要素とする問題意識を高めることが急務ではないでしょうか。
実は多くの日本企業がTCFD「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」に署名しており、賛同機関数は2020年7月末において290社で世界一です。(他は英国210、米国193、オーストラリア71、等。)しかし、情報開示に賛同する署名に留まることなく、積極的に地球温暖化への解決策に取り組んでいるという姿勢を世界に見せることの方が重要だと思います。
また、時代は非財務的な企業価値の情報開示だけでなく、Impact WeightedAccountsという会計制度へにも反映するという次のステージへと進む動きが世界にあることに日本企業は認知し、乗り遅れることないように期待しています。
以下は先週に掲載された、Impact Weighted Accountsの研究をリードしているジョージ・セラファイム教授とシニア・アドバイザーのロナルド・コーエン氏のハーバード・ビジネス・リビューへの投稿です。英語ですが、一読をお勧めします。
In recent years, most major international
airlines have reported healthy profitability. But our calculations show this to
be a mirage. In the case of Lufthansa and American Airlines, for example,
accounting for their environmental costs of $2.3 and $4.8 billion respectively
would make both companies unprofitable.
空港会社のリアルな収益性は、環境関連のコストを考慮すべきではないかという主張です。
To date, there has been no way for
companies to account for their benefits and costs to society and the
environment. We have been working to change that.
今まで企業の経済的・環境的インパクトを計上する術がなかったが、それを変えようとしている。
The era of impact transparency has begun,
and it is moving the goal posts for businesses and investors. Technology and
Big Data have combined with longstanding efforts by many individuals and
organizations to make the measurement and valuation of corporate impact a
reality. With the arrival of impact transparency, impact and profit set the new
rules of the game.
(企業の)インパクト透明性の新しい時代が始まり、インパクトの測定・価値創造が現実となる新しいルールメイクへの動いが始まっている。
It is not all negative though. Companies
also create positive impacts through their products and employment, which do
not show up in their bottom line.
そのインパクトの全てがネガティブではない。商品や雇用創出というポジシティブなインパクトも存在しているが、それが会計制度では現状では反映できていない。
In the meantime, we each have a valuable
role to play. If you lead a company, then measure and communicate your
impact-weighted performance. If you are an investor, demand impact transparency
from the companies in which you invest and use impact-weighted numbers to
assess opportunities and risk. If you are a regulator or government official,
mandate the publication of impact-weighted accounts, and use taxes and other
incentives to motivate companies and investors to create positive impact. And
since we are all consumers, let’s buy the products and services of companies
that deliver positive impact to improve our planet and society.
この新しい流れを促進するために、経営者、投資家、規制当局、そして何よりも消費者が果たせる役割がある。
Impact transparency will reshape
capitalism. By shifting the pursuit of profit away from negligently creating
problems to purposefully creating valuable solutions for the world, it will
redefine success, so that its measure is not just money, but the positive
impact we make during our lives.
インパクトの透明性を高めることで、資本主義をつくり変えられる。収益を求めることが問題を産む現状から、課題解決を提供する地球規模の価値創造へと転換できる。
この「インパクト」という言葉を投資や企業経営の文脈において聞き慣れていない方が多いと思いますが、これからどんどん普及して行くと感じています。大事なことは、企業は環境や社会にネガティブなインパクトを与えるだけではなく、むしろ、ポジティブなインパクトをつくっているということが企業の存在意義の要になるという時代になってきているということです。
もっとインパクトについて理解を深めたいという方へ。
GSG Global Impact Summit 2020 #gsgsummitが、今週の9日、10日、11日に開催されますが、オンラインで聴講が可能です。世界におけるインパクト投資の先端の大イベントです。こういう世界的イベントに、日本人の参加がもっと増えることが、これからの時代の日本にとって大切だと痛感しています。