<講演抄録>リンナイ株式会社「品質こそ我らが命、だからいたずらに成長を追わない」
コモンズ30ファンドが2011年から投資している、リンナイ株式会社。その工場見学が、6月23日に行われました。参加して下さった、コモンズ投信の投資仲間30名と共に、同社執行役員・工場長の松本和彦さんのブリーフィングを受けた後、工場見学をし、さらに取締役専務執行役員経営企画本部長の小杉將夫さんから、リンナイの企業文化について話を伺いました。
企業にとって大事な資産は、バランスシートに記載されている数字、つまり目に見える資産だけでなく、企業文化、社員が持っている技術やノウハウなど、目に見えない資産もあります。順調に成長を続けているリンナイ株式会社の見えない資産とは何なのでしょうか。小杉さんから伺った話と共に、コモンズ投信のメンバーと共に行った対話の内容を再現してみました。
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リンナイ株式会社
取締役専務執行役員経営企画本部長 小杉 將夫 様
「品質こそ我らが命、だからいたずらに成長を追わない」
熱を通じて快適な暮らしを社会に提供する
リンナイ株式会社は現在、家庭用の熱器具を作っており、80か国で使われています。
簡単に業績についてご説明しますと、連結決算、単独決算のいずれにおいても過去、一度も赤字になったことがありません。また、単月でも過去110カ月程度、黒字を続けています。
このように、持続的に成長している主因は、やはり企業文化にあると思います。
創業者は林兼吉と内藤秀次郎で、2人の苗字から一文字ずつ取って、リンナイという社名になりました。1918年11月、技術者だった内藤が今川焼のお店の横を通りかかった時、青白い美しい炎を見たそうです。欧州製のコンロで今川焼を焼いていたのです。その予備品を、お店の人にお願いして譲り受け、仕組みを研究して商品化のメドを立て、営業畑だった林と共にリンナイ商会を立ち上げたのが、リンナイのルーツです。
この時、内藤が見たコンロは、1900年あたりから欧州で普及した石油加圧式コンロです。容器の中に燃料を入れて圧力をかけ、先端のノズルを開放すると、霧状に燃料が噴出し、そこに着火することで、綺麗な炎になるというものです。これを日本製で実用化し、台所で調理をする女性を支援したいと、二人は考えました。当時のカタログには、「高価な燃料代の節約をはかり、科学的製造の理想を実現するだけでなく、卓越した技術で信用を築き、製造能力を高めて社会に貢献する」と記されています。リンナイの企業使命観は、この考えを引き継ぎ、「熱を通じて快適な暮らしを社会に提供する」となっています。
しかも当時、ステンレスという素材もない時代に、見よう見まねでコンロを作るには、大変な苦労があったと思われます。そういう創業者のモノづくりに対する熱意が、今もリンナイのDNAとして、引き継がれています。
今年3月に亡くなった前会長の内藤明人は、創業者の一人である内藤秀次郎の三男で、父親が経営していた小さな町工場の経営を引き継ぎ、「どうせやるなら世界に打って出よう」と一念発起しました。その頃、給湯器が儲かるということで、多くの家電メーカーも給湯器製造に参入し、厳しい競争に直面しましたが、前会長は「品質が全て。品質を高め、お客様に安心して使っていただけるようにすることが大事だ」と言い、「品質こそ我らが命」を原点思考に掲げたのです。
また、社是になっている「和氣眞」には、一緒に仕事をする相手を思いやり、力を合わせ、個々が強い責任と誠意を持ち、何事にも勤勉さと科学的視点を持って挑戦する。そういう精神で仕事をしていこうという意味が込められています。