<プレゼン抄録1>株式会社デンソー「研究開発とモノづくり、人づくりを重視」

コモンズ30塾「企業との対話」~統合レポートを読み解く~株式会社デンソー セミナーレポート

2019年2月4日、コモンズ30ファンドの投資先のひとつ、株式会社デンソーをお招きして、統合レポートワークショップを開催しました。これまでコモンズ投信が開催した統合レポートワークショップは7回で今回が8回目。株式会社デンソーは2017年の第6回に登場して2回目になります。
当日は株式会社デンソーの杉浦グローバル戦略部長のプレゼンテーションに続き、コモンズ投信取締役会長の渋澤健が、杉浦部長と共にトークセッションを行いました。
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【プレゼンテーション】株式会社デンソーが統合レポートで訴えたいこと

株式会社デンソー グローバル戦略部長 杉浦正則さま

分かりにくいことを分かりやすく伝えるための「統合報告書」

まず、デンソーという会社の紹介からさせていただきます。
弊社、株式会社デンソーは1949年に設立され、今年ちょうど70周年を迎えます。と申しましても12月ですから、まだ少し先ですね。
売上は、5.1兆円です。この数字は2017年度決算のもので、初めて5兆円企業になりました。営業利益は、連結ベースで4127億円となりました。営業利益が4000億円に乗ったのも初めてです。このように2017年度は、売上、利益とも非常に良かった1年でした。
従業員数はグローバルで16万8813人です。このうち日本の従業員数は7万4604人で、デンソー単独だと4万人弱です。これに日本のグループ企業を含めると、前述した7万4604人になります。それ以外が海外拠点で働いている従業員数です。海外拠点は北米、欧州、アジア、その他南米というようにグローバル展開しています。
今までの70年間を振り返ると、数字はほぼ右肩上がりで成長してき
ました。主な事業は自動車部品の製造、つまり、自動車という完成品の中に組み込まれているパーツを作っています。そういうこともあり、日頃、私どもの製品を目にする機会は、あまりないと思います。BtoCというよりもBtoBであり、どういう事業を行っているかという点は、消費者向けのサービスや製品を提供している会社に比べて、分かりにくいところは多分にあります。
統合レポートワークショップ中の参加者の様子
そういう意味でも、統合報告書はとても大事だと考えています。私どもの事業を少しでも分かりやすくお伝えすることによって、一人でも多くの人に、デンソーが行っている事業への理解を深めていただき、デンソーという会社に興味を持っていただければと思います。

事業の柱は6つ

具体的に、株式会社デンソーの事業内容について説明してまいります。現在、自動車部品以外の事業も含めて6つの事業分野を持っております。(非自動車部品事業を1つとしてカウント)
統合報告書の「事業別概要」に製品別の概況が書かれています。売上の28.4%が「サーマルシステム」といって、カーエアコン関連の事業で占められています。
参加者からの質問に答える杉浦さま
次いで「パワトレインシステム」で、これが24.7%です。パワトレインシステムとは、エンジン周りの製品で、インジェクター(燃料噴射装置)や排気ガスを浄化するためのシステムです。
「エレクトリフィケーション」は、これから市場が大きく拡がっていくと期待されているもので、ハイブリット自動車や電気自動車に採用されているインバーターやモーター、バッテリーをコントロールするためのECUを製造しています。現時点で、売上全体に占める比率は15.9%で、主力のサーマルシステムには及びませんが、今後の成長が大いに期待できる部分でもあります。
売上の4番目を占めるのが「モビリティシステム」で、14.4%です。これも将来性の高い分野ですね。自動運転がいよいよ現実化しており、自動車の走行進路にある障害物を検知するためのセンサーやカメラ、それらを制御するためのコンピューター、走行状況などを表示するためのメーターやナビゲーションシステムのディスプレイなどが、この事業に該当します。エレクトリフィケーションと共に、モビリティシステムもこれからの成長が期待できます。
5番目が「電子システム」で12.0%です。この中で最も大きな部分を占めているのがエンジンの制御関連です。エンジンの出力や燃料噴射を制御するためのコンピューターがこれに該当します。
以上、ここまでは基本的に自動車関連の部品ですが、実は非車載事業ということで、自動車以外の分野にも力を入れ始めました。特にロボット関連がそうです。もともとは自社の工場で使う産業用ロボットを内製していたのですが、最近はIoTが大きな流れになるなかで、飛躍的な生産性の向上という共通の課題を持った他社向けの外販にも力を入れようということで、ロボットをメインにした生産システムも販売しています。ここはこれから伸ばしていきたい分野のひとつです。現在の売上に占める比率は3.1%と小さいのですが、まだまだ伸びしろはあるとみています。
テーブルごとにディスカッションしながら理解を深める
そして、売上全体に占める比率は1.5%と、これまた小さいのですが、その他として農業にも進出しています。デンソーが農業というと、関連が見えないかもしれませんが、弊社の最大の事業はカーエアコンということで、温度や湿度をコントロールするための技術を持っていますので、まずはこれを農業に活かせないものかと考えているわけです。

研究開発とモノづくり、人づくりを重視

以上の6分野において、私どもは事業展開を図っているわけですが、統合報告書にも
記載しておりますように、デンソーとして一番大事にしているのは研究開発とモノづくり、そして人づくりです。いずれもデンソーが創業以来培ってきた強みでもあります。
研究開発については未来を見据えた先端研究に力を入れていますし、世界初の製品を生み出すことに注力しています。
モノづくりに関しては、創業以来、一貫して内製技術にこだわり、設備、生産ライン、素材、加工方法に至るまで、自社で設計・製造しています。
そして、それらを支えるのはやはり人ですから、人づくりには力を入れています。特に若手技能者の育成です。これまで培ってきた技術を伝承していくため、さまざまな取り組みを行っています。その証左として、世界最高レベルの技を競い合う技能五輪国際大会のメダリストを多数輩出しています。2017年10月にアラブ首長国連邦のアブダビで開催された「第44回技能五輪国際大会」においては、日本、タイ、インドネシア、ベトナム、メキシコから8業種、17名が出場し、金、銅のメダルを獲得しました。

ワークショップに参加したコモンズ運用部の原嶋
さらに、デンソーとして大事にしてきた取組み姿勢や価値観を、デンソースピリットとして明文化しております。日本人だけで働いていた時は、何となく阿吽の呼吸で、会社の精神、価値観を共有できましたが、2000年前後から海外拠点を積極的に展開するようになり、社員もグローバル化が進みました。何しろ売上の6割は海外ですし、従業員も6割は日本人以外の国籍を持った方々です。今や、デンソーのビジネスは海外なしでは成り立たちません。ですから、海外の従業員の方たちとも、デンソーの諸先輩方が築き上げてきた精神、価値観を共有していきたいということで、デンソースピリットとして明文化しました。

「先進、信頼、そして総智・総力の精神」というのがそれです。先進はデンソーにしかできない驚きや感動を提供する、信頼はお客様の期待を超える安心や喜びを届ける、総智・総力はチームの力で最大の成果を発揮する、というものです。



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