SDGsの総本部の会合に出席しました

おはようございます。渋澤健です。先週はとんぼ返りのNY出張。

目的はUNDP(国連開発計画)が企画しているSDG ImpactSteering Group(運営員会)に出席するためでした。



帰りの飛行機は、かなり空いてました。シンガポール代表は移動中の機内感染を恐れて一日会合の午前中を電話で参加。中国代表はビデオ会議で現地から(マスクしながら)NYの夕暮れまでフル参加しました。

SDG ImpactとはUNDPが主導しているSDGsの基準づくりおよび認証のプロジェクトです。

ご存知の通り、SDGsには17の目標、169のターゲットが儲けられていますので、プライベートエクイティ投資、債券の発行、または企業の行動がSDGsの達成に沿っているという簡易な基準および認証という存在があれば、SDGs投資への関心は広がるでしょう。これが、SDG Impactの狙いです。

SDG Impactの「プライベートエクイティ」「債券」と「企業」における基準を一言で表し、4~8の行動指針に整理して評価を示すことが基本方針です。「プライベートエクイティ」「債券」の基準づくりは最終形に近づいており、夏までに「企業」の基準づくりを完了させる計画のようです。

また、SDGsを達成するための新たな資金となる財源に「インパクト投資」への関心が世の中で高まっています。

インパクト投資とは、良き社会的インパクトと経済的リターンの両立です。私は現代風の「論語と算盤」と思っていますw。

実は人によって、インパクト投資の定義が若干異なっています。社会的インパクトがあるならば、市場期待リターンより低い、あるいはゼロでも良いと思っている人もいれば、通常のグロース(成長)投資に社会的インパクトが「おまけ」として付いていると思う人もいます。

私は、インパクト投資の本質とは、慈善・援助活動や「おまけ」ではなく、良き社会的インパクトを意図し、その持続可能性のために必要な市場期待リターンを目指すことだと思います。

そのインパクト投資の要になるのが社会的インパクトの「測定」です。世界で色々なプレイヤーたちが試行錯誤を繰り返しながら、この「測定(メジャメント)の基準づくりに挑んでいます。最も投資家指向なのが米国民間NPOのThe GIINだと思います。

UNDPの本来の役目は新興国の経済開発であり、社会的インパクトの測定の事務能力や予算配分が潤沢な訳ではありません。現在、インパクト測定はOECD、PRIという政府系機関からThe GIINやGSGなどの民間イニシアティブ、世界中に色々な側面で進んでいて航海図が複雑です。UNDPがアレンジャーとしてone voiceを提示することに大きな意味があると思います。

そして、今回の参加でちょっと気になったこともありました。現在、日本では官民でSDGsへの認知度、関心、そして行動も高まっていることを肌で感じています、しかし残念ながら、その存在感がSDGsの一丁目では薄く、SDGsについて日本が世界でもっとプレゼンスを高めることが急務であると感じました。



UNDP総裁が、SDGsは西欧だけのイニシアティブではなく、アジアから学ぶこともあるのではというディスカッションを促したところ、「SDGsのリーダーシップは中国である」という委員の発言に驚きました。けれども、そのような認識が国外では常識なのでしょう。

また、これからは企業のESG/SDGsに関する情報開示だけでは十分ではなく、社会インパクトの測定が要求されるという時代の潮流も感じました。日本社会で認識が高まっているだけに、 SDGsガラパゴスになってはならないと痛感しました。


今年はオリンピック・イヤーで日本は世界から脚光を浴びるはずです。また、11月にはESGの「総本部」であるPRI(責任投資原則)の総会が日本で開催されるようです。日本は、今年というタイミングを活用して、もっとSDGsへのコミットメントを世界へ発信すべきです。