<10周年イベントレポート> -マネーフォワード・トークセッション- 「長期投資家が支える企業の成長」


<トークセッション>
辻庸介氏(株式会社マネーフォワード代表取締役社長CEO) 
伊井哲朗(コモンズ投信株式会社代表取締役社長) 
原嶋亮介(コモンズ投信株式会社運用部アナリスト)

「長期投資家が支える企業の成長」

コモンズ投信代表取締役社長 伊井哲朗
伊井  起業しようと思ったきっかけとは何だったのですか。

辻様   起業したいとは思ってなかったのですが、アメリカに留学した時、フェイスブックやGoogle、アマゾンといった新しいサービスが次々に出てきて、世の中が大きく変わっていく様を見てきました。
ところが日本には、そういう変革を起こす人が非常に少ないという印象を強く持つようになりました。それで、ビジネススクールでの勉強が終わった時、もうインプットはいいんじゃないか、そろそろ世の中にとって役に立つアウトプットをしないと、日本という国全体が前に進まないだろうと思ったのです。

伊井  辻さんの目でご覧になられて、日本の金融業界のここがおかしい、こんな課題があって、このように変わっていくのではないか。そこでどのようなビジネスチャンスがあるのか、という点について教えていただけますか。

マネーフォワード代表取締役社長CEO 辻庸介様
辻様   当時、銀行はなぜ午後3時に窓口を閉めてしまうのだろうとか、初めて株式投資をする時、有名な会社の株式を買ったのにどうしてこんなに株価が下げてしまうのだろうという、分からないことのモヤモヤがあって、そこに日本は少子高齢社会によって年金制度がもたなくなる、日本経済そのものがダメになるといった話もあって、私たちはどうしたら良いのだろうという疑問が非常にありました。それらお金の問題を解決するために、金融機関としてもっと出来ることがあるのではないか、それもテクノロジーの力を使って新しいサービスを生み出すことによって、社会課題が解決できるのではないかと思いました。

伊井  マネーフォワード担当アナリストの原嶋さんからも、辻さんに質問してもらいましょう。

コモンズ投信アナリスト 原嶋亮介
原嶋  今、お金の姿かたちが大きく変わろうとしています。電子マネーや仮想通貨、QRコード決済など、デジタルを用いた決済手段が増えるなかで、お金の課題も変わっていくと思うのですが、その点については、どのようにお考えですか。

辻様   日本人の支払いって、現金決済がまだ80%もあって、キャッシュレス決済は20%に過ぎないのですが、それでも最近は「〇〇ペイ」といったQRコード決済が注目を集めるようになって、現金を用いない決済手段がどんどん増えています。恐らく5年後、10年後を想像すると、現金決済はかなり減っているイメージを持っています。
もともとお金自体、デジタル的な特性を持っていて、インターネットをはじめとするテクノロジーとの相性が良いので、キャッシュレス化は自然な流れといっても良いでしょう。将来的には画像認識や音声認識が進むので、店舗に入って欲しいものを手にとったら、財布を出さずに決済が完了して、そのままお店を出られるという時代になると思います。お金の存在を意識せずに済む時代が来るのでしょうね。

原嶋  そういうなかで、御社としては今後、どのようなサービスや取組みを検討していらっしゃるのでしょうか。

辻様   いろいろチャレンジはしています。たとえばお金の運用とか、家計の節約方法などについて、3つくらいの選択肢を出して、これをすれば、こう良くなるといったアドバイスを提案し、実際のアクションまでつなげていけるようなサービスを作れないものかと考えています。

伊井  サービスを作るのにエンジニアが必要ですが、日本国内ではもうエンジニア不足という話も聞きます。人材採用という点で、海外は視野に入れていらっしゃいますか。

トークセッションの様子
辻様   弊社はベンチャー界隈では採用力はある方だと思うのですが、やはり、他のテック企業と人材の取り合いになることもあります。そのため、エンジニアが働きやすい環境を整えていくのも大事だと考えています。
あとは日本国内だけでなくグローバルに採用することです。インドやベトナムは理系人材が非常に多く、仕事ぶりも真面目なので、積極的に採用しています。私たち経営陣は語学に堪能な人間が多いので、グローバルな人材確保を視野に入れて、どんどんチャレンジしていきたいと思います。

伊井  今のベンチャー企業の経営者を見ていると、昔のようにカリスマ性があって、トップダウンで物事を進めていくというタイプが減ってきて、どちらかというと組織は非常にフラットで、理念を大事にしている経営者が増えているように思えます。辻さんご自身、経営者としてどういう点に注意してマネジメントをしているのですか。

辻様   今はインターネットで一斉に情報共有できる時代なので、ピラミッド型よりもフラット型の組織の方が、意思決定が早いという面があります。私達も一度、ピラミッド型に変えてみたことがあるのですが、あまりうまくワークしなかったので、結局フラット型に戻しました。チームごとに優秀な人に来てもらい、チームに権限委譲して、僕に聞くよりも、どんどん作ってリリースし、お客様の反応を見る方が改善のスピードも速まります。ですから、大事なのはチームをどう作るか、そこに優秀なメンバーを集められるかということで、そうしたことにマネジメントの重きを置いています。いざという時は僕が決めないといけないのですが、基本的に日々のことは信頼できるチームリーダーに判断を任せ、彼らの裁量でチーム経営をしてもらいます

会場の様子

伊井  ガバナンスについてですが、社外取締役に結構うるさ型の人を入れていらっしゃいます。成長企業では珍しいケースだと思うのですが、これはどういうお考えによるものなのですか。

辻様   弊社は社内の取締役が7名、社外取締役が4名で、社外取締役については東芝CEOの車谷暢昭さん、日本ペイント会長の田中正明さん、Draper Nexusパートナーの倉林陽さん、プロノバ代表取締役社長の岡島悦子さんに入っていただいております。皆さん、経営者として大先輩の方々なので、非常に良いアドバイスをいただいております。
以前、オフィスを移転させるのに、1年半前に契約をする必要があり、それを相談したのですが、一瞬で否定されました。いわく「1年半後に絶対発生するコストを、ベンチャーである君たちが今、意思決定するのか。ベンチャーはスピード感が大事なのだから、固定要素をつくるべきではない」と言われ、その場で止めたことがあります。

伊井  最後に、日本の個人投資家に対して何かアドバイスがあれば、お願いできますか。

辻様   まず私たちのビジネスはサブスクリプションなので、新規獲得コストを踏めば踏むほど、直近の業績は赤字になります。将来のライフタイムバリューは、解約率が悪化しない限りは上昇していくので、将来の成長を考えると、どんどん投資した方が合理的です。
そういう性質ですから、短期的な観点で黒字を出せと言われると、その時点で成長が止まることになります。なので、このビジネスモデルを理解していただき、長期投資家の方々に支援していただけるのは、非常にありがたいことです。ロンドンや香港、シンガポールの投資家は、それを理解しているので、「あ、もっと投資した方が良いですね」という答えがすぐに返ってきます。日本でもそういう長期投資家がたくさん出てくれば、大きなチャレンジが出来る企業も増えていくでしょう。
やはり僕たちがソニーやトヨタにならないと、日本経済は良くならないので、投資家の方たちと一緒に頑張っていければと思います。

伊井  ありがとうございました。

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