<10周年イベントレポート>トークセッション「寄付は未来への投資」


【トークセッション】未来を信じる力を合わせて~寄付は未来への投資~

一般社団法人日本知的障害者水泳連盟専務理事・コーチ 谷口裕美子氏
認定NPO法人PIECES代表理事 小澤いぶき氏
コモンズ投信株式会社マーケティング部 馬越裕子

「寄付は未来への投資」

馬越  まずそれぞれ自己紹介をお願いします。

認定NPO法人PIECES代表理事 小澤いぶき様
小澤様  私たちの団体は、子どもたちが孤立しない寛容な社会を目指して活動しています。私が子どもの精神科医をしていた時、子どもたちが孤立して社会のことを信じられなくなる明日よりも、子どもたちの周りに人の想像力から生まれる優しいつながりに溢れる未来をつくっていきたいと思い、このNPOを立ち上げました。

谷口様  日本知的障害者水泳連盟でコーチをしています谷口と申します。専務理事もさせていただいています。団体の名前のとおり、知的障害の選手たちが、この連盟に所属をし、水泳の活動を通して社会に参加していくことをお手伝いさせていただいております。来年はいよいよ東京でパラリンピックが行われるので、選手が輝く笑顔で皆の前に立てるよう、日々努力しています。

馬越  私たちは長期的な視点で投資や寄付をさせていただいていますが、きっとお二人も長期的な視点で子どもたち、あるいは選手たちと対峙していらっしゃると思います。今の活動内容について教えていただけますか。

小澤様  子どもたちが孤立しない状態とは、子どもたちの日常の中に「ああ、この人には頼っていいんだ」と思えるような安心感や、やさしい関係が、営みとしてあることだと思うのです。そういう文化を築き上げたいと考えています。もちろん今日、明日で出来ることではなく、長期的な視点が必要ですし、私たちだけで出来ることではなく、一人一人の市民が子どもたちに関わっていくことが大事だと思います。

馬越  いぶきさんが寄付先に選ばれた時、虐待死というとても悲しい事件が重なってしまいました。

小澤様  そうですね。私たちが生きていく中で、普段はあまり意識しないのかもしれませんが、人のつながりの中で生きています。困った時に助けてと言える、あるいは何だか嬉しい時に、嬉しさを共有する、新しい世界への扉が開かれる。誰かと何かを共有し合えたり、頼り合える、そういったつながりがない環境では、孤立が生まれやすくなります。改めて、人と人が頼りあえる関係性を再構築する必要があるのではと考えています。

馬越  谷口コーチは、知的障害者水泳の選手たちに対する指導は、どのように行っているのですか。

一般社団法人日本知的障害者水泳連盟
専務理事・コーチ 谷口裕美子様
谷口様  2020年の前年ということで、今年の秋には世界選手権が行われます。ちょうど、代表合宿を行っているのですが、いろいろなタイプの選手がいます。
会話が成り立たない、会話は出来ても頭の中が混乱してしまう、話しているうちにやるべきことを忘れてしまう、という具合なのですが、何度も何度も繰り返しているうちに、徐々に出来なかったことが出来るようになります。これは他の指導も同じだと思うのですが、言葉を変えてみたり、彼らが興味を示すものをうまく絡めて説明したりするなど、工夫をしてコミュニケーションを図っています。

馬越  コモンズ投信に対して、どのようなことを今後、期待されていますか。

小澤様  私たちは、一人ひとりが子どもたちの日常に何らかの形で関わり、まわりの道をつくっている当事者でもあると考えています。子どもたちにとって「よき隣人」として、良い関係を築いていけるような仕組みをつくろうとしています。その私たちの活動の伴走者として、寄付してくださる方や、コモンズ投信さんのような企業が連鎖していくことで、強い信頼で結びついた関係が出来るのではないでしょうか。子どもの応援者がどんどん増えていくことによって、信頼できる社会が築き上げられると思います。

谷口様  共生社会という言葉があるものの、やはり知的障害者である彼らが自立して生きて行くのは、非常に難しいことです。それを支えている家族、周りの方々がいて、そういう人たちを応援して下さる人のつながりが大事だと思います。コモンズ投信さんのみなさまのように、人のつながりを大切にしてくださる方々や社会に受け入れられていることが必要ですね。

馬越  ありがとうございます。最後にひとことずつお願いします。

小澤様  私は、子どもたちが自分の人生の当事者であることを諦めないですむ社会とは、私たちひとりひとりがこの世界の当事者であることを、諦めない社会でもあると思っています。子どものこと、自分のこと、そして世界のことを諦めないという点でつながりながら、子どもたちの日常に優しさが生まれて、その優しさが連鎖していく、そんなうねりを生んでいけたら嬉しく思います。

谷口様  知的障害者は先天性の障害です。選手やそのお母様、お父様とお話をさせていただくと、やはりお母様が一番悩まれています。「この子とどうやって向き合っていこう」、「私たちが亡くなった後、この子はどうやって生きていくのだろう」といったことです。
私たちが水泳を通してお手伝いしている理由は、そういう社会的弱者である彼らが、水泳の大会で勝つと非常に嬉しい顔をする。それは子どもだけでなく、ご両親も同じです。この活動を通じて、そういう子どもたちが少しでも社会の注目を集め、皆が支え合うような社会を築く原動力になればと思います。

馬越  ありがとうございました。

当セッションの冒頭でこどもたちが寄付について発表してくれました!
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