【コモンズ30塾】ダイキンサスティナビリティレポート②環境課題解決への貢献なしに、事業の発展はない

ダイキン工業山田様プレゼンテーションの様子
弊社の成長を実現してきた基盤は、この戦略経営計画FUSIONシステムです。
FUSIONとは“融合”という意味ですが、短期の収益力と長期の成長性の両立や、他社との連携など、さまざまな局面での融合という意味がこめられています。FUSIONシステムは5年サイクルで回していますが、まず、グループ経営理念と現状認識をもとに、5年後のめざす姿と、そこに向けた重点戦略および3年後の定量目標を設定します。
そして、2年経過した段階で、市場や環境の変化をふまえて、改めて最終年度の定量目標と重点戦略を設定します。中間時点で見直しを行うことで、事業環境の変化に柔軟に対応できる仕組みとなっています。

2020年度の目標として、売上高2兆9,000億円営業利益率12%を掲げています。設備投資・研究開発投資については、2018年度から2020年度の3年間で6,000億円ほど計画しています。M&Aについても、事業戦略の一環として、引きつづき積極的に実施していきます。
 
空調市場は、エアコンなどの機器販売だけでなく、サービスや部品販売などの空調周辺市場、食品などの冷凍・冷蔵庫や貯蔵倉庫、それらを輸送する海上コンテナ向けの低温・冷凍市場、エコキュートなどの暖房・給湯市場があります。
グローバル全体では年平均5%程度で成長しており、2020年には39兆円の市場規模になる見込みで、エアコンは右肩あがりの最後の白物家電ともいわれています。
また売り切りだけでなく、工事を伴って初めて製品の品質が保たれるなど、非常にユニーク、幾分ニッチなビジネスです。
地域別に見ますと、近年、経済発展の目覚ましいアジアでは、所得水準の向上により、空調需要が急速に拡大しています。気温の高い地域でもありますので、今後も大きな市場成長が期待できます。
一方、日本などは空調の普及率も高く、成熟市場であると言えますが、安定的な更新需要が見込まれます。エアコン生誕の地のアメリカも、省エネ性能でいうと、まだまだこれからという市場です。

空調機器は多くの電気エネルギーを使用するため、弊社は、「環境課題解決への貢献なしに、事業の発展はない」という考えのもと、製品や事業に起因する環境負荷の低減に尽力してきました。
環境長期ビジョン2050では、長期的な視点で、深刻化する環境課題の解決をめざしています。弊社が解決に貢献しうる社会課題である、気候変動・エネルギー需要の拡大・大気汚染に対して、環境性能の高い製品・サービスの創出、環境ソリューションの創出、空気の価値の創出など、あらゆる取組みを進め、2050年に向けて温室効果ガス排出実質ゼロをめざしています。

温室効果ガスであるCO2排出削減の取組みのひとつに、インバータ機の普及があります。
インバータとは、モーターの動きを細やかにコントロールする省エネ技術です。
従来のエアコンでは、一気に冷房して、冷えすぎたらモーターをオフにし、部屋の温度が上がってくると、またモーターをオンにして一気に冷やす、ということを繰り返していました。
空調機にインバータを搭載することにより、消費電力を約58%削減できます。
日本ではほぼ100%がインバータ機ですが、海外での普及率はまだまだ低い水準にとどまっています。インバータ機を世界で普及させることにより、空調機使用時のCO2排出量の削減を進めています。

CO2排出削減の取組みのもうひとつは、ヒートポンプ、とくに暖房の普及についてです。
ヒートポンプとは、空気中の熱を汲みあげて移動させることで、冷却・加熱を行う技術で、エアコンにも活用されています。
ヒートポンプ暖房は、ガスや化石燃料を燃やす燃焼式の暖房に比べ、CO2排出量を2分の1以下に削減できます。この環境性の高さが、ヨーロッパを中心に高い評価を得ています。ヨーロッパでは、気候が比較的寒冷であることから、家庭でのエネルギー消費の80%以上を暖房・給湯が占めています。
従来は燃焼式暖房が主流でしたが、EUでヒートポンプが再生可能エネルギー技術に認定されたこともあり、ヒートポンプ式暖房への転換が進んでいます。インバータやヒートポンプは、弊社が得意とする省エネ技術です。環境意識の高まりを追い風に、これらの製品の普及を進めることにより、環境課題解決と事業成長の両立をめざしています。