【コモンズ30塾】ダイキンサスティナビリティレポート③「CO2排出ゼロ」をめざす
今年のサスティナビリティレポートの概要についてお話しをしたいと思います。まず環境面では気候変動、地球温暖化は今後どうなっていくのか。
ご存知のとおり、地球温暖化は「温室効果ガス」の排出増加によって従来放出されていた熱が地上にとどまり起こっていると考えられています。
サスティナビリティレポートを読み解く 会場の様子 |
世界の温室効果ガス排出の傾向、とりわけ温室効果ガスの中でも多くの割合を占めるCO2について見てみると、18世紀後半の産業革命以降、CO2は増加傾向が続いており、特に最近は急増しています。つまり経済発展に伴い増加が大きくなっているので、今後新興国の発展に伴いますます排出が増えることが予想されます。
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル、という世界の科学者や専門家がまとめた評価)が色々なシミュレーションをしていますが、現状を上回る温暖化対策をとらなかった場合、21世紀末の世界の平均気温は、2.6~4.8℃上昇、気温上昇を低く抑えるための対策をとった場合でも0.3~1.7℃上昇する可能性が高いと予測しています。つまり、対策をとった場合でも気温上昇は避けられない、ということです。
手がつけられなくなる前に、いますぐ対策をとらなくてはいけない、ということです。
ようやく2015年に、世界で温暖化に関する画期的な協定として、パリ協定が合意されました。パリ協定では、<世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃よりも十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること>を、世界共通の目標として合意しました。
日本も、2016年11月に締結国となりました。
この協定は、歴史上初めてすべての国が参加した合意であり、2℃よりも十分に低く、1.5℃に抑える努力ということは、温暖化対策の大きな転換点になると考えられています。
これらを受けてダイキンがどう動くのか、ダイキンの長期・中短期の目標を私どものサスティナビリティレポートにも記載しているので、そちらにそってお話したいと思います。
今年の大きなトピックとしてこのレポートでも取り上げていますが、2018年5月、IEA(国際エネルギー機関)が「The Future of Cooling」を発表しました。
世界の冷房需要は2050年に3倍となり、電力需要もそれに伴って3倍になる、という報告です。
先ほど来のお話しの通り、エアコンは電力を多く消費する商品です。電力を多く使うということは、CO2を多く排出することにつながります。
温室効果ガス排出抑制に向けて世界が動いている中にもかかわらず、今後冷房の需要が急増するという将来予測は、エアコンの会社であるダイキンにとって大きなチャンスとなる一方、それに伴うエネルギーの増大や、温室効果ガス排出量の増大など、空調事業のリスクにもなります。
「だからエアコン使用をやめよう」と呼びかけているのではありません。
いまやエアコンは私たちが健康で快適な生活を送るために欠かせないものです。このレポートでも、『こういう状況だからこそエアコンに注目が集まっている』ということを今年は記載しています。
またダイキンは「Climate Action 100+」に選ばれました。これはパリ協定目標の達成のため、国際的な大手投資家団体が注目している「世界でトップ100のCO2排出事業者リスト」です。
対象企業100社のうち日本企業は、ダイキンの他に10社が選ばれており、海外ではロイヤル・ダッチ・シェルやBoeing Companyなどです。
世界でトップ100のCO2排出事業者ということで、一見すると悪者に見えますが、ここに選ばれるということは、成長企業として期待されていることの裏返しでもあります。つまり気候変動からの機会やリスクが大きいと判断された企業であり、新たな事業機会を獲得できると期待されている企業ともいえます。
従来から取り組んできた、当社製品から生じるCO2排出のライフサイクル全体での削減に加え、社会と顧客をつないだソリューションの創出や、冷媒の回収・再生などに取り組み、「CO2排出ゼロ」をめざします。
長期ビジョンは、CO2ゼロという数字、結果のコミットではありません。
高いゴールをめざすためには、明確なビジョンが必要です。
ゴールはひとつでも、ルートは沢山あるのかもしれません。
行き当たりばったりにならないよう、ゴールを設定することで見通しをたて、ゴールへの最短距離を探していく活動が必要です。
また現段階では「CO2ゼロ」の達成は不可能だと思われる方もいらっしゃるとは思いますが、自社努力に加えて、再生可能エネルギーへの代替が進むなど、世の中も変化していきます。
社会の変化を取り込みながら、今後も5年ごとのFusionで目標・施策を立案・実行することでCO2ゼロを目指し続けたいという意志を示したものが、「環境ビジョン2050」であります。