株式市場の格差
おはようござます。渋澤健です。
あっ暑いですね~! 猛暑とコロナ禍のダブルパンチの夏ですが、くれぐれもご自愛ください。
さて、株式市場の温度も高いですね。経済社会の課題、政治の課題、など様々なリスクがあるのに、お構いなし。一体、市場はどこへ行くのでょう。青天井?
特に、色々な問題が経済、社会、政治の側面で顕著なアメリカの株式市場の上昇が目を奪います。なぜ?
財政金融政策、悪材料の折り込み、今後の回復等、色々な理由はあると思いますが、ひとつ注目すべきは「株式市場」の構成です。
アメリカの大企業を代表するSP500を構成する企業を時価総額(全体の割合)のランキングを検証すると、上位5社が全体の22.6%を示していることがわかります。(注:Alphabet=Google)
なるほど、こちらGAFAMの業績はコロナ禍の悪影響があまりなく、むしろプラスになっているかもしれませんね。
Components of the S&P 500
# Company Weight
1 Apple Inc. 6.718578
2 Microsoft Corporation 5.673433
3 Amazon.com Inc. 4.747293
4 Facebook Inc. Class A 2.252184
5 Alphabet Inc. Class A 1.632619
6 Alphabet Inc. Class C 1.593182
累計 22.61
上位10社には「老舗」企業もランクインしていて、全体の3割弱を示します。
7 Berkshire Hathaway Inc. 1.478605
8 Johnson & Johnson 1.398895
9 Procter & Gamble 1.205605
10 Visa Inc. Class A 1.195897
累計 27.88
上位20社で4割弱。
11 JPMorgan Chase & Co. 1.119067
12 UnitedHealth Group 1.093957
13 Home Depot Inc. 1.086809
14 Mastercard Incorporated 1.032596
15 NVIDIA Corporation 1.010128
16 Verizon Communications 0.868767
17 Walt Disney Company 0.848652
18 PayPal Holdings Inc 0.813299
19 Adobe Inc. 0.776848
20 AT&T Inc. 0.76456
累計 37.22
上位30社で全体の4割強。Before GAFAMの時代を代表する大企業の名前も見えてきます。
21 Pfizer Inc. 0.760682
22 Netflix Inc. 0.759461
23 Merck & Co. Inc. 0.756279
24 Bank of America Corp 0.73813
25 Intel Corporation 0.73763
26 Comcast Corporation 0.709022
27 PepsiCo Inc. 0.686711
28 Coca-Cola Company 0.670919
29 Walmart Inc. 0.669799
30 Exxon Mobil Corporation 0.652431
累計 43.6
上位40社でほぼ5割。Before GAFAMの「ハイテク」企業も色々と登場していますが、そういう意味では同じITC分野でも主役が入れ替わっているのがわかりますね。
31 Cisco Systems Inc. 0.649975
32 Abbott Laboratories 0.641579
33 salesforce.com inc. 0.630777
34 Chevron Corporation 0.601621
35 AbbVie Inc. 0.598631
36 Thermo Fisher 0.590296
37 McDonald's Corporation 0.550831
38 Costco Wholesale 0.53176
39 Accenture Plc 0.529602
40 Bristol-Myers Squibb Y 0.513366
累計 49.44
そして、上位50社、全体のたった10%が時価総額ウェイトの5割強を示しています。
41 Amgen Inc. 0.507479
42 NextEra Energy Inc. 0.499399
43 Medtronic Plc 0.487337
44 NIKE Inc. 0.473307
45 Broadcom Inc. 0.472482
46 Linde plc 0.469619
47 Danaher Corporation 0.467733
48 Union Pacific 0.461865
49 QUALCOMM 0.457701
50 Eli Lilly and Company 0.453345
累計 54.193
大企業であることは間違いないですが、「へえ、GAFAMとこんなに差があるんだ」という思った会社のランキングです。IBM, GE, GM, DuPont, Dowは上位50社から外れています。
54 Oracle Corporation 0.403377
58 IBM 0.398271
61 3M Company 0.342271
62 Advanced Micro Devices 0.341615
64 Wells Fargo & Company 0.334905
79 Caterpillar Inc. 0.273147
103 Applied Materials Inc. 0.214461
108 General Electric 0.205557
142 DuPont de Nemours Inc. 0.153354
159 General Motors Company0.123717
167 Dow Inc. 0.11757
207 Ford Motor Company 0.097924
224 Motorola Solutions Inc. 0.08923
285 Southwest Airlines Co. 0.065402
303 Delta Air Lines Inc. 0.058939
368 Hewlett Packard 0.04448
419 United Airlines 0.032462
499 Xerox Holdings X 0.011608
500 Gap Inc. 0.011409
一昔のアメリカを代表していた企業の会社のプレゼンスが、SP500でこれほど下がっているのか、と改めて時代の変化を感じます。特に工業・製造業の相対的な下落は著しいですね。
これほどの「格差」が株式市場に生じているのであれば、その指数が必ずしもアメリカの経済社会の全体を反映していないことがわかりますね。
アメリカでさえ、このような経済社会の実態との株式市場の乖離が存在しているのであれば、トヨタ自動車がいずれ時価総額トップである日本の株式市場は尚更です。
長期的な積み立て投資でパッシブ運用を好む方々が少なくないですが、アメリカの株式市場は、「全体」の反映ではないかもしれませんが、新陳代謝によって時代の変化を反映していると言えるでしょう。
市場の行方が永遠に青天井になるはずないと思いますが、やはり時代の変化に適応できているアクティブ運用の方が、(過去ではなく、これからの)長期投資に期待できると思います。もちろん、その「アクティブ」の手腕にも格差がありますが。
その手腕を信じることなく投資家全員がパシッブ運用に留まるとどうなるか。時価総額が大きい会社には買いが増え、ますます時価総額が拡大し、格差もますます広まってしまう。
これが、健全な株式市場とは思えません。