666Xの投資を逃した男からのレッスン

おはようございます。渋澤健です。


厳しい残暑。
終息の気配を見せない新型コロナ・ウイルス。
そして、安倍首相の退陣。

色んなことが起こってますね~  雲行きは油断できない状況ですが、どのような展開になるかわからない。だからこそ、こつこつと積み立てる長期投資を継続させることに理が適ってると思います。

さて、最近、昔の自分の個人的な投資エピソードについて、ふと思い出しました。

時は1996年。私はNYで大手ヘッジファンドのトレーダーとして勤めていました。ある日、とある米企業の株価が目に留まりました。安い…。この会社の商品は個人的に好きで使っていたけど、最近はパッとしないな。創業者はもういないけど、良い会社だと思うんだけど。安いな~。買おうかな。個人的に。

このような思いが頭に過りました。でも、個人用の口座をつくるのは色々と面倒だな思いながら、すぐに行動しませんでした。色々と忙しかったし。。。いずれ、その会社の株を買うことは自分の意識から失せていました。

さて、その会社の1996年当時の時価総額は30億ドルでした。日本円で3000億円程度。それなりに知名度がある会社でしたが、当時の大企業と比べて、そんなに大きな存在ではありませんでした。

そして、現在その会社の時価総額は、、、色々なところで報道されているようになりました。時価総額が2兆ドルになったアップルだからです。

あのとき、あの株価で買っていたら、、、、仮に100万円だったら、、、電卓を叩いて計算してみました。わお。今は、6億6667万円になっていた~・・・・涙。

この私の個人的な投資の失敗談で、長期投資の色々なレッスンがありますね。

企業価値の成長と長期投資は相性が抜群に良い!

けど、仮に、あのとき、あの株価で買っていて、アップルの株価が2倍になっていたら自分は売っていたかもしれません。10倍になっていたら確実に売っていたでしょう。

したがって、長期投資は価格を見ちゃだめ。あくまでも価値を見るべき。

ちなみに、あの時の翌年の1997年にアップルの業績は更に悪化し、創業者であるスティーブ・ジョブスが(最初はコンサルタントとして)復帰しています。それでも資金繰りの関係で倒産間際という危機に陥る。そんな時に、ジョブスのライバルであったビル・ゲイツのマイクロソフトが1億5000万ドルを出資して助け船を出したのです。さすが、ゲイツさん。アップルの価値をしっかりと見ていたんでしょうね。

でも、そのゲイツさんでもアップルの将来の価値創造を見据えることはできなかったようです。5年後の2002年から2003年にかけて、マイクロソフトは全てのアップル株を売却し、5億4500億円で現金化しました。5年で5倍弱。全然、悪くないですけどね。

でも、もし、マイクロソフトがずっとアップル株を保有していたら現在はどれくらいの価値になっているのか。。。1166億ドルです!

12兆円強ですから、日本株式時価総額2位のソフトバンクグループの時価総額にちょっと足りないくらい。ゲイツさんもアップルの長期的な価値ではなく、そのときの価格を見て売却して、悔しがっているのかな?でも、現在のマイクロソフトの時価総額は1.6兆ドルですから、彼らか見ると誤差の範囲と思っているかもしれません。

やや言い訳になりますが、アップルという666Xの投資を逃した1996年では、その時の株式市場の注目が自分の判断力に影響していたのかもしれません。当時、周りでは「モトローラは素晴らしい会社」と絶賛する声が多かったのです。携帯電話のリーディングカンパニーとしてモトローラは注目を浴びていましたが、PCメーカーの「旬」は去っていたのです。

1986年から1996年の10年間でアップルの株式は2割ぐらい上昇していましたが、一方、モトローラは5倍以上。同じICT部門でも、セクター・ローテーションが起こっていたのです。

でも、個別銘柄の勝ち負けはわからない。だから、投資銘柄を入れ替えるアクティブ運用よりも、株式指数のインデックスに投資する方が長期的に有利であると一般的に云われます。確かに、インデックスファンドの方が運用費用が低いので、長期的に投資する上でコスト的に有利なことは確かです。著名な長期投資家であるウォレーン・バフェットさんも素人はインデックスファンドで十分と言っています。

でも、バフェットさんはアメリカ人であり、アメリカ人の個人投資家を念頭に発言されています。日本の個人投資家の場合、ここが注目すべきポイントです。

1996年の世界の時価総額の上位5社以下でした。

1 General Electric
2 Royal Dutch Shell
3 Coca Cola
4 NTT  (なんと!)
5 Exxon Mobile

そして、もちろん現在の上位は(米国では)GAFAMが占めています。Coca Colaは28位、Exxon Mobileは30位、GEは108位まで落ちています。

一方、現在の日本株式市場ではNTTは未だに5位。(ちなみにNTTドコモは6位。) 

1996年と現在の二つのスナップショットを比べて見えることは、アメリカの株式インデックスの新陳代謝が著しく高いことに比べて、日本のインデックスの新陳代謝は低いということです。

つまり、アメリカ株のインデックスファンドに投資をしていれば、長期的には、その構成はアクティブに入れ替わっているということ。でも、日本のインデックスファンドの構成はまさにパッシブ。

だから、アメリカ株式のインデックスの長期投資は成長を獲得しているので理に適っているけれども、日本株式のインデックスの長期投資は必ずしも同じことが言えないということです。

また、アクティブ運用の場合は個別銘柄の成長ストーリーなどワクワクする価値の創造がありますが、パッシブ運用の場合は一社一社が見えなくなり、見ているのは全体の市場動向、つまり価格だけになります。

企業の価値創造に確信を持てるのであれば株価が下がっても気にならなく、むしろ安く買えるとうれしくなりますが、市場動向の価格を見ていて株価が下がると気分を害します

だから、私の場合は日本株式の長期投資はアクティブ運用の方がパッシブ運用より適してると思います。でも、将来のことは誰もわからないので、アクティブか、パッシブか、は好き嫌いの次元の話で良いかもしれません。長期投資には自分に満足感あることが大事ですから。

でも、アクティブ運用であろうが、パッシブ運用であろうが、共通点があります。長期的には、マーケット・タイミングで良い結果は出ない。666Xを逃した男だからこそ、断言できます。こつこつと積み立て投資を長期的に継続すべき。自分は、それに悔いはありません。