<バズセッション>日立製作所「本人の意欲」と「上司の期待」


トークセッションに続いて、グループごとに感想や疑問点などを共有し、会場全体でバズセッションを行いました。

会場からの質問 (回答は日立製作所武内様)

- やはり、いざ自分が管理職に推薦されても、やり切れる自信がないという女性が多いと思います。

確かに、管理職につくと仕事量と責任は増えます。しかし同時に裁量権や情報量も増えるので、育児などの自分が抱える時間の制約に対して管理職になることがネガティブにだけ影響するわけではないです。

私の例ではありますが、子どもが1歳のときに復帰し、翌年から管理職につきました。当時、私を推薦してくれた上司に「子どもも小さいし管理職は無理です」と言ったら、「やれると思っているから推薦したのだから、昇格のオファーを断るな」と言われました。
そのとき改めて、やれると思ってくれている、期待してくれている、と認識してお受けすることにしました。

やはり、はじめは女性の、しかも育児をしながらの管理職というものの像というかイメージがわかないです。身近にいる先輩社員が一人でその人が強烈なキャラクターだったりすると、あんな風にはなりたくない、となりますしね。

日立ではグループ全体で、入社3年目の女性社員向けに先輩女性社員の話を聞く機会を設けています。働く女性にとって出産というライフイベントはインパクトが大きいです。そのとき考えても遅い。だから3年目の社員を対象に行っています。

そしてひとりひとりにあった指導が必須であり、今と昔とではマネジメントのやり方も違う。男性管理職のロールモデルだっていないのです。
やり方や世の中が変わって、どこにもでき上がったロールモデルはいないのです。皆で話し合って、人がやっているいいところを取り入れて、よりよい姿に近づいていく努力を続けるということです。


- 産休から戻ったけれど、子どもに後ろ髪を引かれサポート的な仕事でいいと考えてしまう。そんな人をどう説得しているのですか

子育てはいつか終わります。サポート的な仕事だけを10年したあと、自分の仕事のスキルやキャリアがどうなっているか、想像してみてください。
また、例えば日立では育休を最長で3年取れますが、育休を長く取ることのメリット・デメリットをしっかり整理して上司ともよく話しあうこと。
今はそう思っても1年後には変わっているかもしれない。定期的にきちんと確認し合うことが必要だと思っています。

社員が辞めてしまうのは、会社にとって損失。
そのときは先が見えず仕事を辞めるしかないと考えたりしますが、必ず育児の出口は訪れます。説得ではなく本人の意欲と上司(職場)の期待を認識しあうことが重要です。

- 女性の管理職登用に際し、評価制度は変わりましたか

変わっていません。「下駄を履かせる」といって評価制度を変えて女性管理職の人数を増やすという話もよく耳にしますが、日立では、きちんと育成し、仕事を与えてスキルをあげて昇進させるということを実行しています。

- 実施している施策で一番効果的なものは?

ダイバーシティというのは何かをやればすごく進むというタイプのものではありません。複合的な取組みを継続してやり続けることが重要です。

産休・育休取得者を対象とした研修の参加が、本人だけ、上司だけ、パートナーとセットでというのは他社でもよくあると思います。
日立が行っている、「本人と上司セット」で、しかも面談の時間を強制的に設定している。直接の評価者であり必要なアサインメントを与える立場の人と一緒に研修を受けるのはとても効果的だと思っています。

- 取締役に外国人も多い日立では、定年制度をやめる、という話は出ていませんか

いまのところ出ていません。定年は60歳となっています。なかには十分働いたからもう休みたいという人もいますから。延長や再雇用というかたちで希望のある方の95%以上は定年をこえて働いています。


- ダイバーシティというのは反対の意見を言える土壌があることなのだと改めて思いました。

日立のアイデンティティに「和・誠・開拓者精神」があります。
和とは予定調和であることではなく、それぞれの意見を真剣に交わし、しっかり議論して、決まったら皆で一致協力して推進するという意味です。

私はいつでもどこでも言いたいことを言っていますよ。


- ダイバーシティは業績にどんなポジティブな影響がありますか?

よく、ダイバーシティをやると儲かりますか?と、聞かれます。実はBtoCの会社はダイバーシティの取り組みをすることでいい影響が出やすいということがあるのですが、しかし日立はBtoBを中心に展開しているので効果がなかなか見えづらいと思います。それでも、事実として、今後もグローバルで成長していくためにダイバーシティは必要なのです。
意見の多様化によって、新しいビジネスやサービスの発想などが生まれているのも事実です。

渋澤 「やらなかった場合どうだったのか」を考えると違う視界が開けますよね。
今日やって明日結果がどうなるというような短期的な話ではなく、長期かつホリスティック(全体的)なことなのだと私は考えています。

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昨今、「見えない価値」の重要性は今まで以上に高まってきています。
成績表だけ見ていても全体像はわからないということです。

サン=テグジュペリの星の王子様でもキツネが王子様に言います。「一番大切なものは目に見えない」と。
そして今業界で話題の本ですが、ニューヨーク大学の研究でThe End of Accountingという本の中でも「昔は財務情報を見ればその企業のことがほとんどよくわかったけれど、今は財務情報だけでは5割くらいしかその会社の株式の価値はわからない」と書かれています。

コモンズ投信は対話を重ねることで企業の見えない価値、本質的な価値を見出す努力を続けています。
30塾、周年イベント、こどもトラスト、企業見学、そして投資先企業30社と共に取り組んでいるワークショップなどを開催し、この対話の場を、投資先企業・ファンドの受益者(個人投資家)・コモンズ投信との「共創」と位置づけています。
この先も皆さまとの対話を絶やすことなく、目に見えない価値を運用に取り入れていきます。

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