景気が良いのに、なぜ株式市場が下がる?

おはようございます。渋澤健です。
全国の天候の格差がすごいですが、連休はいかがお過ごしでいらっしゃいますか。



さて、先週に比べると今週は、黒田日銀総裁の再任のニュースもあり、株式市場は落ち着きを取り戻すのではないでしょうか。

そもそも、今回の下落の発端となった米国株式市場の下げ要因は、景気が好調であるということ。市場の心理は面白いですね。 


景気が好調であれば、長期金利が上がる。
長期金利が上がれば、債券投資の魅力が高まり、株式投資の魅力がなくなる。
だから、先に売りましょ。という感じです。

市場とは、目の前の現実だけではなく、将来を見込んで価格に「織り込む」特徴があります。それは、市場心理が、当然ながら、AI(人工知能)だけの打ち合いだけではなく、人間が形成するものであるからです。

人間の特長は想像力。つまり、現状から飛躍する力を持っているということです。

この想像力によって、人類は文化や文明を築くことができました。
現状が苦しくても、将来への期待、希望を抱いているから飛躍する力がもてる。
一方、飛躍することは、現状で起こっていないことでも、長くは続かないと想像して、将来を不安にもさせます。

AIには将来の不安はないですね。目の前に見えること(値動き)、そして、自分が知っていること(過去のデータベース)だけに基づいて行動しています。

けれども、人間は自分が見えることと知っていることとに加え、想像力が働いてしまうのです。だから、人間の想像力による値動きが、AIやシステムトレードによって増長される。そのような傾向があります。

現在、過去のデータベースの知見ではあまりない状態が、アメリカで起こっています。トランプという異端の大統領が登場し、財政規律を掲げていた議会の共和党がどんでん返して、大幅な法人減税を打ち出しているのです。

過去の例では、法人減税は市場にポジティブな影響を与えるはずです。

ただ、財政面からの刺激策は、景気が停滞しているときに実施することが今までの常識でした。現在の米景気は、失業率も低く、好調であると言われています。そのようなタイミングで、NYタイムズ紙によると、財政出動により米国の財政赤字は予測されていた$689 billion (~75兆円)から$1.2 trillion(~130兆円)へ倍増するのではないかという声が上がっています。

景気が停滞しているときには、供給のキャパが過剰なので、財政によって需要を刺激することは必要です。ただ、供給のキャパがひっ迫しているときに需要を刺激すれば、賃金上昇⇒物価上昇⇒想定以上のインフレになり、それが想定以上の長期金利の上昇の引き金になる。
そのような想定外なことを、人間は想像してしまうのです。

米国は、景気が良いところ、「異次元」の財政政策に入っているのに新しいFRB議長の手腕に頼ることは大丈夫なのか。

日本では、景気が良いところ、「異次元」の金融政策が続行させる日銀総裁の手腕に頼るだけで大丈夫なのか。

短期的に、目に見えるところは大丈夫かもしれないが、長期的に、目に見えないところは本当に大丈夫なのか。このような不安です。

さて、このような状態で、長期投資家はどのように考えて、行動すれば良いのでしょうか。

それは、想像力を活かすことではないでしょうか。先の先への飛躍です。

確かに、景気が過熱して株式市場が下落して、景気が縮小する側面が将来訪れるかもしれない。けれども、そのときに、つみたて投資を毎月コツコツと継続すれば、持続的に価値創造の可能性が高い企業の株式を安い値で口数を寄り多く仕込める。それが、次の景気の上昇局面、株式市場の上昇局面に活きてくる。そのような気持ちが大事だと思います。

長期投資を実施するのであれば、必ず、景気が弱い、株式市場が下落する局面が訪れます。けれども、必ず、景気が好転し、株式市場が上昇している局面もその後に訪れる。

コモンズ投信が提供することに努めている長期投資とは、目先の値動きや状態に喜怒哀楽するのではなく、「今日よりも、よい明日」というビジョンに希望を抱いて、「お仲間」(受益者)、投資先企業、社会起業家など社会のステークホルダーの皆さんと共に創ることです。 

このような、将来へのわくわく感という期待・希望も大事ではないでしょうか。
人間が持てて、AIが持てないものですから。