3次元緩和の先に望むこと
2016年8月1日月曜日
おはようございます。 渋澤健です。
本日の午後9:15分から日経CNBCで放送されるヴェリタス・トークでコメンテーターとして出演します。いつも内容は前日(日曜日)の郵便箱を開けて初めてわかり、時々専門性が乏しいテーマになっていて惑わされるときあるのですが、今回は、これ。 ちょっと、話せる内容でした。かなり難しい課題ですが・・・(^^;
日銀黒田総裁=サプライズを、市場やマスコミが望んでいることが常です。 確かに、マーケットの材料になるので、90年代の前職のヘッジファンドであれば、市場の脈である価格を追うことが仕事だったので、サプライズによって市場のボラティリティ(変動率)が高まることは収益チャンスが高まることを私は望んでいました。
ただ、現在、長期投資家である私の視点は異なります。
目前のサプライズはいらない。未来への道筋がほしい。
こんな視点を持って、番組でコメントしようと思っています。
中央銀行の役目の本質とは「物価の番人」、ショックがあったとき等「最後の貸し手」です。その物価が「株価の番人」、「常の買い手」になりつつあることを危惧しています。政府との「協調」はとても大事です。しかし、政府が財政出動を増やしたいから、株価を上げたいから、その担い手になるということはどうなんでしょう。
これって、「国家資本主義」や「官製市場」への道筋ですよね。未来ではなく。
Market Clearing Price(市場均衡価格)が市場の役目の本質です。誰の価値観が絶対的に正しい・間違っているということではなく、時間が経って環境が変化する中、価値の適切な対価(株価)を幅広い参加者(長短志向を含む民間)が試行錯誤することによって、新しい情報を市場価格へ「織り込む」こと(これが、すなわち「均衡」)。これが市場の機能です。
そこに政府という存在が意図的に介入してしまうと、市場の機能を壊してしまう恐れが高まります。
現に、国債市場ではそんな状態になっています。日銀がオールマイティな絶対的な買い手になってしまっているので。 それが日銀のETF買いによって株式市場へにも侵入してきています。
民間企業の大株主が、バーチャルマネーを使っている(「お金を刷る」)中央銀行になっているんです。まだ、GPIFの方が大株主になる方が筋が通っていますね。彼らが運用するお金は未来の年金受給者の積立金というリアルマネーであり、且つ、最近ではガバナンスやESGへの取り組みを高めていますから。
株価が上がれば良いんじゃんと思う人々が世の中で多いです。
短期的には、そうでしょう。 ただ、長期投資が望んでいることは持続的な価値創造です。足元の株価が上昇しても、それに裏づく価値創造がなければ、未来への道筋が見えません。
じゃ、政府が何もしなくて良いの、と言っている訳でもありません。
持続的な価値創造を支えるために取り組む必要があるのは経済社会の構造改革です。労働基準法とか、戦後日本の高度成長の企業慣習(年功序列、終身雇用)は、過去の時代環境の産物であり、必ずしも現在、そして未来の時代環境に合っているとは言えません。
高齢者の弱者にはしっかりとした社会保障で支えるべきです。しかし、全ての高齢者が弱者ということでもありません。むしろ、貧困状態で育っている子供たちが増えていることを歯止めして改善させることが、未来への道筋になります。
そして、普通に働いている世帯が安心して子育てもできる。自身の将来の老後生活への蓄えを万全にする。このような政策を持っと多くが簡単に活用できるための制度改正も必要です。
ただ、既存の構造には強烈な既得権益があり、その改革への抵抗勢力となっています。なかなか政治では解決できない難しい問題です。
しかしながら、政治から目前の「大型経済対策」頼みの政治はいらない。政治から未来への道筋を執行できる英断がほしい。一個人、一長期投資家に過ぎませんが、3次元緩和の先には私はそれを望んでいます。