未来予想図 17:注目のがんゲノム医療

未来予想図
17:注目のがんゲノム医療
2018-4-6-TUE

2018年4月1日から「がんゲノム(遺伝情報)医療」が全国111病院でスタートしました。

がんゲノム医療とは、がん患者個々の遺伝子を解析してどの遺伝子に異常があるか見つけ、その結果に基づいて最適な治療薬を選択するなどの治療方針を決定するもので、効果が高く副作用の少ない医療として期待されています。

今回臨床試験の対象となるのは、標準的な治療が効かなくなった進行がんや希少がんなどで、実際に遺伝子の異常に基づいた治療を受けられるのは検査した患者の10~20%になる見通しです。

今回スタートしたがんゲノム医療は、がんゲノム医療推進コンソーシアムの一環として、がんゲノム情報の集積・利活用により革新的新薬の開発やゲノム医療提供支援などを実現することで、国民がより有効で安全な個別化医療を早期に受けられることを目的としています。

この背景として、がんは1981年から死因第1位であり、現状では生涯のうち約2人に1人が罹患すると推計され、国民の生命と健康にとって今後も対策を強化しなければならない重大な疾患であるということです。

第3期がん対策推進基本計画(2018年3月9日閣議決定)では、「がんの予防」、「がん医療の充実」、「企業がんとの共生」が2022年度までの全体目標3本柱とされ、中でもがんゲノム医療は患者本位のがん医療の実現として具体的に取り上げられています。

日本は世界一の高齢社会であり、がんゲノムを集積・利活用できる環境は恵まれていると言えるでしょう。

現時点で日本はゲノム医療の普及において、欧米だけでなく、中国や韓国から相当な遅れを取っていますが、日本固有の好環境を大いに活用して、革新的な治療法の開発や医療費削減への仕組みを構築する可能はあると思っています。

がんゲノム医療の基盤は国民共有の財産であり、国益に資する日本企業の利益・時価総額の増大などの経済効果を期待しています。

シニアアナリスト兼ポートフォリオマネジャー
鎌田 聡