<10周年イベントレポート> -講演抄録- 株式会社ベネッセホールディングス代表取締役社長 安達 保 氏「ベネッセはこうして創業以来の危機を乗り越えた」

<基調講演>
安達保氏(株式会社ベネッセホールディングス代表取締役社長)
「ベネッセはこうして創業以来の危機を乗り越えた」

ベネッセホールディングス代表取締役社長 安達保氏
2016年10月にベネッセの社長に就任しました。もともとカーライルというプライベートエクイティファンドにいたのですが、2003年にベネッセの社外取締役を拝命し、それ以来、ベネッセの事業に関わってきたのですが、2014年に顧客情報の漏洩事件があり、前社長が退任したことで、私が代表取締役に就任したという次第です。

社長就任当時は、ベネッセも非常に苦しい状況に立たされていました。ざっくりした数字で申し上げますと、売上全体の4割強が国内教育事業で、そのうち約半分が進研ゼミという通信教育事業でした。進研ゼミは小学生、中学生、高校生が対象で、さらに未就学児を対象にした「こどもちゃれんじ」があり、これらを合計して一時期400万人以上の会員がいたのですが、情報漏洩事件の影響で会員数が激減し、私が社長に就任する時には243万人になっていました。
進研ゼミは、固定費が非常に高いビジネスで、売上が固定費を超えれば大きな利益が出る反面、固定費を下回ってしまうと大赤字になってしまいます。事件の影響で会員数が激減し、大赤字を抱え、ベネッセというブランド価値が毀損し、社員は自信を失いかけていました

もちろん悪いことばかりではなく、明るい材料もありました。国内教育事業で進研模試という、高校生を対象にした、大学入試のための模試を行っている事業ですが、ここでGTECというスコア型英語4技能検定、つまり読み、書き、聞き、話すという4技能に関するテストがあり、徐々にマーケットを広げていました。今年度は125万人が受けており、大学の入試にも使われます。
またClassiという、教育現場を支援するICTプラットフォームがあり、これも徐々に広がりつつあります。これは簡単に言うと、教師と生徒がこのプラットフォーム上でさまざまなコミュニケーションが取れるシステムです。今、全国の高校の約半分、およそ2000校が導入しています。

その他、国内教育事業においては東京個別指導学院や鉄緑会という、東京大学に合格した学生の6割が学んだという塾の運営があり、その事業も順調に拡大しています。
あと、未就学児を対象にした「こどもちゃれんじ」ですが、中国で非常に伸びています。2016年には会員が100万人を超えました。日本の会員が約80万人ですから、日本国内の事業よりも大きくなっています。
そして教育事業とは別に、ベネッセの事業にとって第二の柱ともいうべき介護事業の売上が、全体の25%に達し、利益も100億円に届くような事業になっています。

ただ、いくつか看過できない問題点があったのも事実です。
語学事業のベルリッツは、世界中の英語を勉強している人の中ではナンバーワンのブランドなのですが、その競争力が後退していました。留学の支援事業として、サウジアラビアの学生を大勢、アメリカに留学させるという事業を展開していたのですが、原油価格の暴落によってサウジアラビアの財政が苦しくなり、アメリカに留学させることが困難になってしまいました。これが非常に大きな赤字要因になっていました。

このように、いくつか元気のよい事業はあったのですが、ベネッセにとって大きな収益の柱だった通信教育事業の落ち込み、そしてベルリッツの赤字が重なり、全体で見るとかなり厳しく、社員の士気も落ちていたのが、2016年に私が社長に就任した時の状況です。
では、どうしたら社員が元気を取り戻し、会社の業績も回復するのか。そのために私は3つの方向性を提示しました。

第一人々の豊かな生活を支える、無くてはならない会社として、圧倒的なブランドにしようということです。当時、多くの社員が自信を失っていましたので、世のため、人のためになる事業を行うことで、社会に無くてはならない存在になろうということです。

第二もう一度、日本の優良企業になろうということです。2016年は営業利益も大きく減り、貧すれば鈍するではありませんが、全体に余裕がなくなっていました。なので、再び利益を上げて、本当に正しい投資をし、会社を伸ばしていこうと考えました。そのためにも、優良企業に返り咲く必要があったのです。

第三「よく生きる」というベネッセの企業理念を見つめ直し、原点に戻ってもう一度頑張ろうということです。

会場の様子
そのうえで、事業面でいくつか手を打ちました。

まず「既存事業の立て直し」ということで、進研ゼミの事業見直しです。通信教育事業は長い歴史があり、やり方をわかっている社員も多いので、自分たちの強みをもう一度見直して、しっかりやっていけば、情報漏えいにより失った会員を取り戻せるはずだと考えたのです。お陰様で2017年4月には会員数の減少に歯止めが掛かり、2018年4月には再成長のサイクルに入りました。ベルリッツをどうするかについては悩みましたが、いろいろ中身を精査すると、経営に問題があることに気付きました。ここに良い経営者をつれてくれば、間違いなくターンアラウンドができると思いました。そこで、外部から新しいCEOを招聘し、新しいチームを作り、大規模な構造改革を行いました。

加えて、「事業の選択と集中」ということで、ノンコア事業であるコールセンター事業を行う子会社をセコムに売却しました。

「社内風土の改革」にも着手しました。これが一番重要だったと思うのですが、とにかく現場を回り、大勢の社員と議論を交わし、よい取り組みは全社員にメールで周知し、皆が少しでも自信を取り戻せるような工夫をしました。

また、これはこれからの話になりますが「第3の柱の創出」ということで、教育、介護に続く事業を私が社長をやっている間に創っていきたいと思っています。

これらをベースにして、2017年に中期経営計画を発表しました。
2018年度が1年目、2019年度が2年目です。数字としては、2020年度に売上5000億円。営業利益350億円を目指します。さらに2022年度には、売上6000億円、営業利益600億円が目標です。
それに加えて、非財務的目標として、サステナビリティ活動に力を入れていきます。SDGsという、国連が採択した17の開発目標を中心に、社会課題の解決を図っていきたい。ベネッセは、もともと教育や介護といった社会課題の解決を仕事にしてきましたから、SDGsに対して高い親和性を持っています。社員の意識も非常に高いので、ここにより一層力を入れていきたいと考えています。

最後に瀬戸内海の直島についてお話をしたいと思います。直島は瀬戸内海の小さな島ですが、30年以上前から現代アートを通じて、地域づくりを行ってきました。今、世界的にも注目されている場所になっています。各国から年間100万人くらいの観光客が見えられて、地元の人たちが案内したり、一緒にコミュニケーションしたりなど、新しいタイプの地域活性化が行われています。
ベネッセがなぜ直島で現代アートの美術館やホテルを経営しているのかという質問を受けることがあります。ベネッセのコア事業とは何の関係もないだろうということですが、私はこう考えています。
AIやデジタル化が社会全体に浸透するなかで、逆にAIやデジタル化が進まない分野があります。教育はその最たるものでしょう。感性を養うという部分は、やはり人間ならではで、それはアートの世界とつながるものがあります。それを体現できるのが直島であり、ベネッセの企業理念である「よく生きる」を実験する場であると考えています。
ご清聴ありがとうございました。

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-対談- ベネッセ安達保氏 × コモンズ投信会長渋澤健

<10周年イベントレポート> -対談- ベネッセホールディングス安達保氏 × コモンズ投信会長渋澤健

<対談>
安達保氏(株式会社ベネッセホールディングス代表取締役社長)
渋澤健(コモンズ投信株式会社取締役会長)
「対話力があるからこそ可能になった長期投資」


渋澤  ベネッセは、コモンズ30ファンドのかなり初期から投資している会社です。「よく生きる」という言葉にあるように、人間の生涯における、さまざまなステージで巡り合う仕事をされている会社です。コモンズ投信もロゴが親子をかたどっているようにファミリーを支える会社でありたいと思っています。そういう2社が投資というかたちでもタッグを組めば何か素敵なことが起こせるのではないかという期待もありました。
また、私たちが投資で大事にしているのは「対話」です。この点において、ベネッセは対話感が優れた会社であるということも重要な要素でした。
コモンズ投信取締役会長 渋澤健
顧客情報の漏洩事件があった時、私たちはこどもトラスト(未成年口座)をお持ちの受益者に、事件に関する意見を募りました。なかには非常に厳しい意見もありましたが、一方で進研ゼミがなくなると困りますという意見や、社員さんのことが心配ですという声もありました。それをベネッセの担当者に渡した時、きちんと受け取って下さったのが印象的でした。この会社はきちんと対話できるという確信を持ったのです。
安達さんがベネッセの代表取締役社長に就任された時、現場を回って、いろいろなお話をされたということですが、その時と今とでは、どういう点が変わってきたと思われますか。

安達様  社長に就任した時、社員の方々と話をしましたが、ベネッセは、この手の対話をすると、多くの社員がアンケートを書いて感想を述べてくれます。最初の洗礼とでも言いますか、非常に厳しいことを書かれていました。「前の社長と言っていることが変わらないのでは?」とか「この人は本当にベネッセの価値観を理解しているのだろうか」といった厳しい意見の羅列で、正直そのアンケート読んでいると、暗くなりました。その後もこのような会を続けてきました。ただ、つい最近の創業日の朝礼で私がサステナビリティの話をした時、皆の賛成、共感という熱っぽさが伝わってきました。
ベネッセホールディングス代表取締役社長 安達保氏
今から思うと、2年半前は不祥事の影響で、会社が疑心暗鬼であり、社長に対する信頼もありませんでしたし、なかなか同じベクトルに進んでいなかったというのが正直なところです。
この2年半で、ほんの僅かですが、私への信頼も少しは高まったのかなとは思います。加えて、どの方向に進めば良いのかについても、徐々にコンセンサスが取れてきたのではないかと思います。

渋澤  現場の声が安達さんのところまで上がってくる仕組み、取り組みはどのようなものなのですか。

安達様  まずアンケートです。広報経由で、何か会が開かれた時は必ずその感想を教えて下さいと社員に周知されます。また、これは会社のカルチャーかも知れませんが、社員もかなり細かく感想や意見を書いてくれます。
またラウンドテーブルに行く時は、上司と部下で来ないでくれと言ってあります。それは、上司に気を遣うことなく、現場の声をきちんと吸い上げるためです。また、私が出したメールへの返信もよく来ます。

渋澤  日本の大企業になると、社長の顔を見たのは入社式以来なんてことが普通に起こります。その点、ベネッセの取組みはとてもいいですね。
ところで、ベネッセの株式は配当利回りが高いという印象でしたが、昨今はM&A戦略を推進するため、配当を下げました。何か社内的な変化はありましたか。

安達様  配当下げたことで、社員が何かを感じているかというと、それはほとんどないでしょう。業績が下がっていたので、減配もやむなしという認識だったのではないでしょうか。キャッシュフローから考えると、高い配当によって内部留保がどんどん取り崩されていましたから、この会社を永続的に成長させるためには、配当の方針を変えるのはもちろん、必要な投資をきちんと行っていく必要がありました。それは私だけでなく、社員も同じ認識だったと思います。

渋澤  こどもちゃれんじの海外展開のポテンシャルはいかがですか。

安達様  しまじろうは、子供が育っていく成長の過程をサポートする、たいへん良い教材だと思います。生活習慣は、国によって異なる部分はありますが、世界共通の部分も非常に多いと思うのです。だから、生活習慣を学ぶことのできる非常に質のよい教材という意味では、どこの国でも使ってもらえるポテンシャルはあると考えています。しまじろうは生後3ヶ月からを対象としてますが、中国などでは生活習慣だけでなく勉強も提供してほしいというニーズがあります。私たちは時代の変化やお客さんのニーズの変化によって、サービスや商品も変えていく必要があります。


渋澤  介護についてですが、どのような方向を目指しているのですか。

安達様  入居しておられる方、一人一人にとって、その方らしい生活を提供することです。「ベネッセの介護」は“徹底的に、とことんその人に寄り添う”ということを一番に考えて大切にしています。そのような価値観を持っていることが、ベネッセの介護で働く人たちの要件で、M&Aで事業拡大することは、すぐにはこの価値観を共有することが難しいので、やはり自分たちで一から作っていくことが多いです。

受益者とともに行った直島ツアー(2014年2月)
渋澤  直島の話がありましたが、30年前には何もなかった島ですよね。今は現代アートの島として有名になりましたが、これから資産としてどのように活用しようと考えているのですか。

安達様  AIやデジタルが広まったとしても、それらに取って変わらないもの、それは感性や感じることだと思います。その象徴的な場になるとすれば、それは非常に良いことで、社員にも、ベネッセが直島を持っていることに誇りを持ってもらってよいと思っています。直島は日本よりも海外で知られています。海外にベネッセのブランドを発信していくための、非常に大きなツールになると思います。

しゃちょうさんへの手紙
渋澤  例えば今日のような会場でサステナビリティについてお話しすると、とても勉強っぽい感じになるのですが、直島では時間がゆっくり流れていて、そこには「体で感じるサステナビリティ」があります。また、現代アートなどを見ていると、それこそ、よくわからない。正しい答えがないです。しかし、これこそ、これからの教育に必要なことではないかと思うのです。正しく答える力ではなく問う力。これからの教育事業の一端を担うベネッセが直島という資産をお持ちなのは大変意味があると思っています。本日はありがとうございました。

<10周年イベントレポート>よりよい未来へ「想いを込めて使うお金」



<パネルディスカッション>
上杉英太氏(株式会社堀場製作所管理本部経営管理部IR担当副部長)
鬼丸昌也氏(認定NPO法人テラ・ルネッサンス理事/創始者)
深尾昌峰氏(全国コミュニティ財団協会会長)
伊井哲朗(コモンズ投信代表取締役社長CIO)
原嶋亮介(コモンズ投信運用部アナリスト)

コモンズ投信 伊井哲朗
伊井  さて、ここからは、このようなお金の循環について、それぞれの立場からご意見や役割についてお話を伺っていきたいと思います。まずは民間企業である堀場製作所の上杉さんから、お願いします。

上杉氏  私、2009年のリーマンショック直後からIRを担当していますので、その後の右肩上がりの中でIRを担当してきました。
10年前の状況は今と全く違っていて、ESGという言葉はありませんでしたし、仕事といえば、ひたすら業績について説明するだけでした。当時から見えない資産について注目していたのは、コモンズ投信くらいだったと思います。投資した企業と一緒に成長しようというコモンズ投信の考えに感銘を受けたことを覚えています。

伊井  次にNPOの立場ではどうかお話を伺いたいと思います。鬼丸さんは、お金の循環や、お金の持つ力について、どのようなお考えをお持ちですか?

鬼丸  テラ・ルネッサンスというNPO法人を運営しております。もともとは、立命館大学の4年生の時、テラ・ルネッサンスを1人で立ち上げました。当初はカンボジアの地雷除去の支援や、地雷被害者の生活を立て直すための支援活動をしていたのですが、今はアフリカ3カ国で、子供時代に兵士だった人たちの職業訓練や、識字教育、あとは起業の計画を立ててもらい、自分たちでビジネスをして、稼いだお金で自分たちの生活をより良くしていく、社会復帰の支援に取り組んでいます。年間予算が2億5千万円くらいで、大半は皆さんからの寄付や会費、国際機関などの助成金で組織を運営しています。
鬼丸昌也氏(テラ・ルネッサンス)

紛争後の地域で活動すると、あることを感じることがあります。お金には変化を促進する性質がある、というのがそれです。良い方向に変化を促進することもあれば、悪い方向に変化を促進させることもあります。アフリカのコンゴ民主共和国では、コンゴ紛争によって540万人が亡くなり、5000人近い子供たちが兵士として戦っています。
紛争の原因は、レアメタルや貴金属、石油で、それを違法に開発するため、外国から大量の武器と資金がこの国に流れ込んできます。それによって多くの人たちが、傷ついています。これリアルで見た時、お金に変化を促進する性質がある以上、私たちはお金を使って、どういう社会を作るか、どういうものを子供たちに残すかという意思が、今一番必要だろうと思いました。

伊井 何に、どういう風にお金を使うのかによって、今も未来も変わっていく、ということですね。深尾さんはどうですか?

深尾  全国コミュニティ財団協会の会長を務めております深尾です。普段は龍谷大学で教員をしています。あと、社会的投資の金融会社も経営しています。

深尾昌峰氏(全国コミュニティ財団協会)
22歳の時に、NPOがもっと仕事がしやすくなるための基盤、たとえば法律や仕組みをつくるNPOを立ち上げました。そのようなNPOを支えるNPOを作って活動していく中で、「社会変革をしたい、困っている人を助けたいという志を持ってNPOを立ち上げても、なかなか活動資金が集まらない」という現実がありました。それを解決するために、志のあるお金を、そういう人たちに何とか届けられないものかということで設立したのが、コミュニティ財団です。2009年、京都で鬼丸くんたちと、京都市民とで、京都地域創造基金という財団法人を作りました。市民の間で「地域に根ざしたこういう取組、こういう人を応援したいよね」という気持ちがあっても、行政としてはなかなかサポートできない部分があります。なので、民間で民間をサポートできるような仕組みを作り、今では全国にこれをモデルにしたコミュニティ財団が30くらいできました。要するに寄付の仲介です。京都で立ち上げた京都地域創造基金は、6億円ぐらいのお金を仲介できました。
このような仕組みを回していくことで、社会を良くしたいという志を持っている人たちが参加できる仕組みを、これからもつくっていきたいと思います。

伊井  私も自らの仕事の役割と責任として、投資家がどのような企業に投資するかというのも持続可能な未来をつくることに繋がっていると確信しているわけですけれど、企業のIR担当からみて投資家のESGに対する関心はどうですか。国内外の投資家の違い、あるいは短期的な視点の投資家と、長期的な視点の投資家の違いはありますか。

上杉英太氏(堀場製作所)
上杉氏  やはり企業文化などの非財務情報に関しては、ヘッジファンドなどはほとんど質問してきません。一方、長期目線のファンドは、積極的に財務以外の情報についてもヒアリングしますし、経営トップの意見を直接聞きたいというリクエストが、結構あります。最近は特に、海外の投資家でも企業の経営方針や、投資をどこに重点をおいているのか、などの質問が増えてきました。また日本でも、スチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードが制定されたことで、環境は良くなったと思います。
堀場製作所は分析計測機器、なかでも自動車の排ガスや工場排水などを分析する環境計測機器が多いので、昔からSRIや社会貢献ファンドには注目していただいており、投資して下さっている投資家は、どちらかというと長期目線だったと思います。
事業内容がそういうものですから、堀場製作所には今もCSR部がないのです。環境計測機器の製造を生業にしているので、事業成長そのものが堀場製作所のCSR貢献であるという考え方です。

伊井  2月からコモンズ投信の運用チームに入った原嶋さんにも意見をもらいたいと思います。彼は企業でIRの仕事からコモンズ投信のアナリストへ転身というキャリアの持ち主です。

原嶋亮介(コモンズ投信運用部アナリスト)
原嶋  5年前、コモンズ5周年イベントに日東電工としてブースを出したのが、コモンズ投信との出会いです。当時思ったのは、ここまで個人投資家に丁寧に対応している金融機関はないなぁ、ということでした。コモンズ投信が、個人投資家の想いを企業に、企業の想いを個人投資家に、相互対話を促すことによってよりよい関係を築こうとしていることに感銘を受けました。こういう会社に自分も加わって力になりたいという気持ちが湧きあがり入社した次第です。

伊井  インベストメントチェーンの中で一番重要なのは、この会場にいらっしゃる皆さん、つまり資金の出し手アセットオーナーといいます)です。皆さんの想いが出発点です。ここで実際にお金の出し手となる方のお話も聞いてみましょう。コモンズ投信のお仲間で本日のイベントでボランティアをして下さっている中小路さん。どういう気持ちでコモンズで投資そして寄付をしていらっしゃるのでしょうか。

中小路  コモンズ投信で資産運用をしていて、SEEDCapを受賞されたNPOに個人的にも寄付をさせていただいております。大事なのは、繋がることと共感だと思います。これを実感できれば、自然とコモンズ投信が目指している資金循環の輪が広がっていくのではないでしょうか。
中小路様
あとは、民間企業とNPOが実際に共感し繋がっていけば、もっと日本で投資も寄付も広がっていくのではないでしょうか。

伊井  今日のテーマは「投資は未来を信じる力」でしたが、最後にお三方、一言ずつお願いします。

上杉  今日のイベントには堀場製作所とシスメックスという2つの企業が参加していますが、両社とも「はかる」装置を世の中に提供しています。
私は、「はかる」ことがあらゆるイノベーションの始まりではないかと思います。例えば自動車の排ガスを測ることによって、よりクリーンなエンジンを開発するというイノベーションに繋がっていきます。最近は、電気自動車が主流になったら排ガスが出ないので、その時、堀場製作所はどうするのか?といったご質問をいただくこともありますが、その時は、電気自動車の効率的な開発をサポートするパートナーとなって社会に貢献していければと思います。

深尾  寄付の仲介という仕事をしていると、寄付したい人たちの想いは様々だということに気付きます。例えば、財務情報や成果に関して、きちんとした報告書がないと嫌だという方がいらっしゃる一方、報告など無くても頑張って取り組んでくれればそれで良いとおっしゃる方もいます。その点では、多様な選択肢を示せるようになることが大事だと思います。
あと、日本には寄付文化がないと言われていますが、それは違うと思うのです。実は「やり方がわからない」のではないでしょうか。たとえば京都などは、小学校を寄付で造ったという歴史もあるくらいで、町を自治してきたわけです。なので、共感をつなぎ、参加できる場を創ることが出来れば、自然のうちに人やお金が集まるのではないかと思います。

会場の様子

鬼丸  寄付も投資も、未来に繋ぐものなのだと思います。私の尊敬する方が、「人間は未来に恋する動物である。未来を想うことができる動物は、唯一人間だけなのだ」と言いました。だからこそ私たちはお金を通じて、もちろん100年後、200年後は生きていませんが、私たちの意思を未来の人々に渡すため、投資や寄付を行うのだと思います。ただ、深尾さんがおっしゃるようにやり方が分からないから、投資や寄付に対して消極的にならざるを得ないのが現実でしょう。その意味では、投資と寄付を繋いでいるコモンズ投信の役割は、とても大事だと思います。

伊井  最後、鬼丸さんに見事にまとめていただきました(笑)どうもありがとうございました。

<10周年イベントレポート>インベストメントチェーン ~投資と寄付で未来を繋ぐ~

インベストメントチェーン
~投資と寄付で未来を繋ぐ~
コモンズ投信株式会社 代表取締役社長&CIO 伊井 哲朗

コモンズフェスタ2019京都の最後は、お金をどう回していくのかをテーマに進めていきたいと思います。
コモンズ投信は、皆さまから大切なお金を預かり、運用によって増やしていくのと同時に、寄付活動を通じて社会的なリターンも追及します。社会起業家の方々あるいは障害者スポーツの方々を応援することを通じて、社会的な課題を発見しそれを解決しようというチャレンジです。

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コモンズ投信の寄付のしくみは、形式的には金銭的なリターンを求めない寄付ですが、コモンズの想いとしては、よりよい世の中を次世代へつなげる利他の「長期投資」です。
当社が受け取る信託報酬の1%程度を目処とする金額を寄付します。
コモンズSEEDCap(シードキャップ)はコモンズ30ファンドの受益者の皆さんと一緒に社会課題の解決に取り組む社会起業家を応援する寄付プログラム、コモンズPOINT(ポイント)はザ・2020ビジョンの受益者の皆さんと一緒に障がい者スポーツのチャレンジャーを応援する寄付プログラムです。
~・~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~・~~・~

こうした支援によって社会的課題が解決すれば、社会全体が非常に安定します。社会が安定すれば、企業もしっかり成長できます
日本にいるとなかなか実感できせんが、例えばイギリスを見て下さい。BrexitでEUから離脱すれば、一部の企業は、イギリスから出て行ってしまうでしょう。そうなると社会が不安定になります。米国だって、さまざまな社会的課題を抱えており、それが企業の安定的な成長に支障を及ぼします。逆に、社会的な課題が解決されれば、結果的に企業は長期的に成長できるでしょう。企業の経営者は、先行きの見通しがしっかり持てた時にこそ、その力を発揮できますので、安定した社会をつくることが大事です。
金融は、身体における血液ですから、頑張って事業に取り組んでいる人に、お金をしっかり回すことが金融の使命です。
それと同時に、社会的な課題解決に取り組んでいる方々に、お金が回っていくようにするのも、金融の本来の役割であります。
こうした金融本来の役割を果たすことで、最終的にお金を提供した皆さんのところにリターンが返っていく。最終的にはみなさんの夢の実現だったり、不安を解消することにつながったりしていくものと思っています。

昨今、そういった資金の循環を「インベストメントチェーン」などと言います。投資に際して、何でもいいから儲けてくれということになると、利益は出ているけれども、たとえば環境に悪いことをしている会社に投資することも考えられます。あるいは兵器を製造している会社に投資した場合、戦争が起これば会社が儲かって株価が上がりますが、果たしてそれで良いのかという疑問も生じてきます。
そうではなくて、社会を良くしていく会社に投資をし、その結果、環境がよくなる、あるいは世界的な紛争が解決するのが理想です。

コモンズ投信が生み出すお金の循環

私たちは皆さんの大事な志の入ったお金の運用を託されています。
こういう運用をしますということをお伝えし、それに共感していただけたら、ファンドを購入していただき、民間企業や、社会起業家にお金が流れ、それが経済的リターン、そして社会的リターンとして返ってくる。この循環によって私たちの暮らしが良いものになっていくものと信じています

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<パネルディスカッション>よりよい未来へ「想いを込めて使うお金」

ワクワク! 資生堂のS/PARK

おはようございます。渋澤健です。

4月13日に一般公開した資生堂の国内研究施設であるグローバルイノベーションセンター S/PARKの数日前のオープニングセレモニーに参列しました。資生堂は、コモンズ30ファンドが設定された10年前から投資を続けている会社であり、コモンズとの「対話」にいつも積極的に応じてくださる会社です。(このセレモニーにご招待された運用会社は二社だけでしたが、その一社が世界最大の運用会社。そして、コモンズ投信。ちょっとうれしかったですw。)


施設に入ってすぐに目を奪うのは、このカラフルな「壁」。実は超大型スクリーンです。すごく鮮明で、コンテンツの動きがカラフルでダイナミック。でも、目が疲れません。(It's A Sonyです)

また、大スクリーンの左側に見えるのはCafe。健康志向のメニューが色々と用意されています。とても、良い感じ。


同じメインホールにはガラス張りのラボが設けられています。実は、Beauty Barの一角であり(予約制で)自分の肌など個性に合った自分化粧品のマイコスメをつくってくれます。



また、カップルで二室に分かれているブースに入り、向かい合いながら、相手の顔が老いてくこと、あるいは、若かった頃のBeyond Timeを表現してくれます。化粧品とエイジングについて色々な思考が湧いてきそうで面白いですね。


メインホールから二階へ上がると、そこには体験型ミュージアムがあり、自分の好みの香りなどミックスするなど色々な実験ができます。

また、一般公開はされない実際のラボも視察させていただきましたが、個室などが設けられないオープンな職場を意識していることがわかります。ラボの中に、マンション部屋を再現していて、そこで、生活感を意識しながら商品開発に務めるという取り組みも面白かったです。

外国人研究者も多く、ダイバーシティに富んでいると感じました。そして、みんな楽しそうに仕事をしている。私たちの視察班のツアーガイドはサン・スクリーンの研究者でした。

クリエイティビティが創発しやすいように設計されている空間で、こんなところで働いてみたい!と思いました。w

コモンズ30ファンド資生堂に投資した理由は、同社のブランド競争力だけでなく、実は先端技術の研究という「見えない価値」に評価、期待していた側面もあります。その先端技術がラボに引きこもることだけでなく、社会と接点を持つ空間を美のセンスで融合されていることに、さすが資生堂と感銘を受けました。

ここから、色んなクリエイティブな創発に価値創造が実現できるとワクワク感が高まりました!魚谷社長、よろしくお願いいたします!



<10周年イベントレポート> -講演抄録- 株式会社堀場製作所 代表取締役会長兼グループCEO 堀場厚氏「惚れられることで組織の求心力を高める」

<基調講演>
堀場厚氏(株式会社堀場製作所 代表取締役会長兼グループCEO)
「惚れられることで組織の求心力を高める」


堀場製作所 代表取締役会長兼グループCEO 堀場厚氏
堀場製作所のCEOをしております、堀場でございます。
私、京都観光協会の副会長をしております。分析計や計測器を作っている堀場製作所が、なぜ観光なのでしょうか。
それは、私たちのビジネスがグローバルだからです。現在も売上の6割が海外で、1割が日本のお客様を通じて海外に出ていっているので、製品の7割が海外の市場へ展開しています。
ビジネスのグローバル化と共に、従業員の国際色も強まってきました。現在、従業員数は8000人近くになっていますが、そのうちの6割が、外国人従業員です。
そのような会社ですので、私をはじめとして、役員はほとんど毎月、海外を走り回っています。結果、堀場なら海外の実情、あるいは事情をよく知っているだろうということになり、京都観光協会の副会長のポストに白羽の矢が立ったというわけです。
京都はご存じのように、人口150万人の都市なのですが、その1割に相当する15万人が学生です。京都の上場企業は、ほとんど東京に本社を移していないという特徴を持っています。ところが、京都から新幹線で30分程度の距離にある大阪の上場企業は、大半が東京に拠点を移してしまいました。
なぜこれだけの違いがあるのでしょうか。
それは、京都が観光地であるのと同時に、前述したように学園都市だからです。総人口の1割が学生なので、優秀な学生を集めることが出来るというメリットもあります。結果、それが京都企業の高い競争力につながっています。
また、なぜ京都企業はグローバル化が進んだのか、ですが、最近でこそ新幹線で2時間の距離にある東京ですが、昔は8時間、あるいは10時間くらいかかりました。京都にとって東京は非常に遠い場所だったのです。
すると、東京を中心とした関東圏への営業、あるいは政府との折衝を行うのにわざわざ8時間、10時間をかけるくらいなら、ニューヨークやロサンゼルス、ロンドン、フランクフルト、パリに行くのも同じじゃないかということになり、多くの京都企業は海外にマーケットを求めました。これが、京都企業がグローバル化した一番の理由だと思います。
わが社の場合、6割いる外国人従業員のうちフランス人が12%を占めています。実数で申しますと1000人くらいです。しかも、1000人のうち80名近くが博士号を保有しています。

なぜ、これだけのフランス人をマネージできるのか、ということに驚かれることもあるのですが、私が思うに、京都人とフランス人は似た者同士なのではないか、ということです。
たとえば「よそ者に嫌われる」のは、その代表的な事例でしょう。
なぜ、よそ者に嫌われるかということですが。やはり自分たちの価値観、歴史、ベースにこだわり、それらを非常に大事にしているからです。だから、多少批判的なことを言われたとしても、あまり意見を変えません
あるいは、人のまねをするのが嫌いで、常に一番でないと気が済みません大きさよりも中身であり、本物であるかどうかが問われます。
一方、大都市圏の価値観は売上が大きい、従業員が多いなど、とにかく大きいことは良いことだという風潮が強く感じられます。
本物であるかどうか、の価値観が京都にしか通用しないものなのかということですが、決してそうではありません。
今、私たちの売上が2000億円を超えてきました。コモンズ投信は10年前にわが社に投資してくださったのですが、この時、私たちの会社は、リーマンショックの影響もあり、1400億円あった売上のうち400億円も落ち込みました。絶対に赤字必至です。でも赤字にならなかったのは、事業ポートフォリオがうまく分散されていたからです。
具体的には自動車、環境、医用、半導体、科学への分散です。2009年の時は、自動車と半導体がガタガタになったのですが、医用と科学が貢献してくれて、赤字にならずに済みました。


私どもの社是は、「おもしろおかしく」。英語だと「Joy and Fun」になるわけですが、その価値観に惚れてM&Aに応じて下さった海外企業はたくさんあります。20数年前からM&Aを行っていますが、フランスの会社2社、ドイツ2社、米国1社を買収してきました。
こうして外国人従業員の比率が6割まで増えたわけですが、みなさんの感覚で言うと、買収に対して、あまり良いイメージがないのではないでしょうか。それこそ札束で頬を引っ叩いてというイメージが思い浮かんでくる人もいると思いますが、私たちが買収した5つの海外企業は、先方から堀場製作所の傘下に入りたいといってきてくれました。企業文化を変えるには5-6年はかかるのに、先方から来てくれればM&Aの翌日からオペレーションに入ることができるのです。
大事なのは、「惚れられる」ことです。堀場で勤めたい、堀場の傘下でオペレーションしたいと思われることが大事なのです。つまり企業の大切さとは、財務諸表、損益計算書など目に見える数字で示せないものをどれだけ持っているかが勝負だと思います。
会社を買収する時、デューデリジェンスといって買収する会社の内容をチェックするのですが、これを私たちは全部自前でやっています。堀場の社員を私はホリバリアンと言っているのですが、ホリバリアンが現地に行き、現地の弁護士、公認会計士と一緒に買収予定の会社の現状を解析していきます。そして、その報告が私のところに上がってきたら、私がその会社を訪問し、マネージしている人たちと面談します。特に我々は製造業ですから、研究開発部門に綿密なヒアリングを行います。その時、彼らがどれだけのものを持っているのかを判断します。私の感覚で申し上げますと、数字で把握できる部分と、目に見えない財産の部分とで、半々くらいの比率で判断します。この「会社を見極める目」を重視しています

堀場製作所は毎年140~150人の新卒社員が入社してきます。それと同時に、その半分近くの人材を、中途入社で採用しています。当然、新卒の社員は自社で育てていくわけです。一方で堀場で働きたい、この会社で社会に貢献するような仕事をしたいという優秀な才能を持った人たちを外部から集めることによって、今の堀場製作所は成り立っています。かつ、その3分の2近い従業員は外国人で、その3%程度は博士号を持っています。
こういう人たちが、ぜひ堀場でユニークな製品を開発し、世界一のブランドで勝負したいと考えています。そして、安いから買うのではなく、製品そのものに高い付加価値があるから買うのだというように、自社製品を高めていくことが極めて重要だと思います。

-対談- 堀場製作所堀場厚氏 × コモンズ投信会長渋澤健

<10周年イベントレポート> -対談- 堀場製作所堀場厚氏 × コモンズ投信会長渋澤健

<トークセッション>
堀場厚氏(堀場製作所代表取締役会長兼グループCEO)
渋澤健(コモンズ投信取締役会長)
「一人ひとりの力を合わせてスーパードリームチームをつくる」


 渋澤  企業を買収する時、数字に現れる価値と、現れない価値があるということですが、御社の価値で外から見えていない、理解されていないものとは何ですか

堀場様  ホリバリアンですね。日本の従業員は3000名なのですが、5つのマーケットで世界一のシェアの製品を供給しようとすると、開発、エンジニアリング、生産、営業、サービスにおいて、従業員1人あたりの生産性が高くないと、絶対にカバーできません
また自動車、半導体、医療用、工業用、研究開発など、堀場製作所が製品を供給している様々な分野において、それぞれ要求されることや言葉や価値観が違います。そのため、自動車なら自動車、半導体なら半導体という、それぞれの分野の言語でコミュニケーションを取らなければなりません
たとえば20数年前ですが、フランスの医療用関係の会社を買収しました。すると次の日、私はフランスの医療用関係企業のトップになるわけです。お医者さんのところに行った時、ちゃんとその業界の言葉で話をしないと、「トップのくせに何もしらない」と思われてしまい、製品を買ってもらえなくなる恐れがあります。
ただ、人間はひとつ柱をしっかり持つと、他の分野について話をする時も、その柱を応用して話が出来ます。だから、自分の柱をしっかり持つようにと、ホリバリアンには常に言っています。
そうして育ってきた人財(人材のざいはホリバでは財産の財といっています)の優秀さは、なかなか外部からは分かってもらえるような、分かってもらえないような部分だと思います。

コモンズ投信取締役会長 渋澤健
渋澤  私たちも、企業の見えない価値で最大のものは何かいうと、勤めている人なのではないかと思います。
堀場製作所の例では、堀場さんのお姿は見ますが、そこで働いている従業員一人ひとりの人物像はなかなか見えてきません。どの企業も「最大の財産は人です」と言うのですが、企業のバランスシート上に、人はどこにも載っていません

堀場様  そこで働いている人の礼儀を見ると、分かります。従業員の礼儀がピシッとしている時は士気が上がっていますから、業績も良くなります。
ところが、会社の業績が良くなると慢心が出るのでしょう。徐々に礼儀が悪くなり、それが業績の悪化につながっていきます。M&Aをする時、相手先がどういう会社なのかを見るわけですが、設備やオフィスを見るのではなく、そこで働いている人が、どのような応対をしているのかを見るようにしています
まあ、海外企業の場合、日本のように礼儀云々という話はあまりしないのですが、職場の空気感にそのようなものが滲み出てきます。この“空気”を読むことが大事ですし、これからの時代は空気を読むというか、肌感覚のセンスが重要になってきます。
このことは経営だけにとどまらず、たとえばこの技術は本物かどうかを見分ける時にも有効です。そして、これは決して知識があるからどうにかなるというものでもありません。もちろん知識は必要ですが、それを使って何を新たに生み出すかが大事なのです。何かを生み出そうとする創造力、クリエイティビティを養う教育が行われていないところに、日本が弱体化する原因があると思います。現に堀場製作所でも、日本に比べてフランス、イギリス、ドイツの子会社の方が、新たなアイデアによる製品が生まれやすくなっています。日本人は、すでにあるものを改良したり、製品の質を高めたりすることには強いのですが、全く新しいアプローチになると途端に弱くなります。日本全体が地盤沈下しているのは、ここに最大の原因があり、それを悪化させないようにするためにも、京都における教育システムを変えていこうと考えています

渋澤  以前、御社に対話をお願いした時、ダイバーシティ担当の方が「ステンドグラスプロジェクト」のお話をされていて、感動した記憶があるのですが、もう一度、それを話していただけませんか。

堀場製作所代表取締役会長兼グループCEO 堀場厚氏
堀場様  ステンドグラスは、恐らく皆さん、教会の壁を飾っている、さまざまな彩を持った綺麗なガラスというイメージだと思います。ところが、ステンドグラスに顔を近づけてじっと見ると、意外と歪で、あまり磨かれていないことに気付くと思います。そういうものの集合体がステンドグラスなんですね。いろいろなガラスが組み合わされていて、どれかひとつが抜けると、おかしなステンドグラスになってしまう。これを堀場製作所の人財に当てはめて話すのです。一人ひとりのホリバリアンが大事であり、ダイバーシティなどさまざまな活動をするにあたって、一枚一枚のガラス、一人ひとりのホリバリアンが、ステンドグラスというチームの一員でさえあれば光ることができる、そういう組織にしたいと思います
また、スーパーマンやスーパーウーマンはいらないという話もしますね。社会はそれらを求めてしまいがちですが、皆がそうなるのはまず不可能です。でも会社の良いところは、何かひとつ良いものを持っていれば、一人ひとりが組み合わされることによって、スーパードリームチームが作れます。まさに多様性なのですが、堀場製作所は昔から海外の人たちと一緒に仕事をしてきたこともあり、肌に沁み込んでいます。

渋澤  堀場さんが創業者で御父上の堀場雅夫さんの後を継いで社長になられたのが、1992年でした。社長になった時の苦労話はありますか。

堀場様  社長になる2、3年前から2代目社長をサポートする専務として会社全体をみるようになっていたのですが、やはり社長とそれ以外は全然違います。
私が社長になった途端、減収減益になりました。で、3年目に偏頭痛になったのです。針に行っても整形外科に行っても全然治らない。どちらかというと私、楽天家だと思っていたのですが、社長になって3年も減収減益が続くと、知らずしらずのうちに精神的に追い込まれたのだなと思い、創業者だった自分の父に、「意外と僕デリケートやった。減収減益で偏頭痛になったみたいだし、これは何かせんとアカンかな」と言ったら、「だいたい物事を改革しようと思ったら、そんなもんや。目先の成績は落ちる。でも、信念があって続けられるなら、いつか結果が出るだろう」と言ってくれたのです。
ああ、そうかなと思って続けていたら、95年から上向き始めました。まあ、偏頭痛の原因は、実は精神的ストレスではなく、スキーで転び、軽いむち打ちのようになっていたからというのが真相だったのですが。

渋澤  事業を進めていくうえで、どういう点を重視していますか。

堀場様  経営者で一番大事なことは、自分の実力だけで事業が成り立つなどとは思わないことです。
誰も同じですが、人間は24時間365日しか時間がありません。もし私一人で仕事をしていたら、こんな業績は絶対に出せません。それでも会社はきちんと数字を出してくれます。
昨年買収した、フューエルコンというドイツの会社は、燃料電池の試験装置をドイツで開発し、ドイツ国内では8割のシェアを持っているのですが、私たちの傘下に入ってきてくれました。これによって今、最も脚光を浴びている技術を持った会社が、堀場製作所に入ってきてくれました。今から2年前、フューエルコンという会社の名前など、私は知らなかったのですが、フューエルコンはすでに堀場製作所を知っていて、自分たちが持っている技術を世界一にするためには、堀場製作所の傘下に入った方が良いという判断を下しました。
これ、絶対に私の実力ではありません。それでも彼らは来てくれました。持っていなかった技術を、M&Aによって手に入れられたのです。
なぜ、M&Aによって得た技術を日本に持ってこないかというと、企業体の裏にアカデミア、つまり大学があるからです。産学連携がきちんと出来ていて、かつワークしています。日本では一時期、アカデミアの独立という点で、企業と一緒に研究するのは良くないことだという風潮があり、結果的にアカデミアの力が失われていきました。
それに対して危機感を持っている大学も多く、そういうところと一緒に研究開発をしたり、中国の大学とも産学連携を行ったりしています。この動きは今後も続けていきたいですね。

渋澤 ありがとうございました。
対談終了後、こどもトラストセミナーに参加したこどもたちから
「しゃちょうさんへのてがみ」を受け取る堀場氏

-講演抄録- 株式会社堀場製作所 代表取締役会長兼グループCEO 堀場厚氏「惚れられることで組織の求心力を高める」

<10周年イベントレポート> -トークセッション- コモンズ30ファンドと共に歩んだ10年の足跡

<トークセッション>
岡田紀子氏(シスメックス株式会社コーポレートコミュニケーション本部長)
伊井哲郎氏(コモンズ投信代表取締役社長)
末山仁氏(コモンズ投信運用部シニアアナリスト)
「コモンズ30ファンドと共に歩んだ10年の足跡」

伊井  シスメックスは、コモンズ30ファンドの組入銘柄のなかで最も値上がりした会社であり、ファンドの運用成績にも大いに貢献していただいたわけですが、御社自身もこの10年ですばらしい成長をされたと思います。この10年を振り返って、どのような点が印象的ですか。

シスメックスコーポレートコミュニケーション本部長
岡田紀子氏
岡田様  海外の売上がとても好調に成長しました。中国を新興国に入れるかどうかにもよりますが、中国を含め新興国全般が非常に伸びてきたと思います。今後、中国だけでなくインドネシアやインドなど、人口が多くヘルスケア分野が大きく伸びる可能性の高い市場がいくつもあるので、今後の成長に期待しています。


伊井  今、世界中で人口が毎年約7000万人ずつ増えていますので、多くの方々が検体検査など、ヘルスケア分野に対する関心がますます高まっていくでしょう。しかも、売上の約8割がグローバルシェアでナンバーワンという驚くべき成長ぶりですが、それを実現するには大変なご苦労もあったと思います。こうした苦難を乗り越えて成長し続けられる秘訣は何ですか。

岡田様  安定した売上が得られるビジネスモデルです。一度機械を購入していただくと、検査ごとに必要となる試薬だけでなく、サービス&サポート費用も発生しますので、それが安定した売り上げにつながっていきます。
しかもヘルスケア事業は、リーマンショックや米中貿易戦争のような大きな混乱が生じたとしても、影響を受けにくいという特徴があります。こうしたことが、厳しい環境でも成長できる秘訣だと思います。

伊井  これからの10年について伺いたいのですが、担当アナリストである末山さんは、シスメックスの今後10年を考えた時、どこに注目、あるいは期待しているのでしょうか。

コモンズ投信運用部シニアアナリスト 末山仁
末山  注目しているのはゲノム医療。それと血液検査のリキッドバイオプシーに期待しています。
また川崎重工と合弁会社をつくり、そこで外科医用の手術ロボットも手掛けていて近々、これがマーケットに出てくることが期待されています。これらを含めて、岡田さんとしては、どのような成長ストーリーをイメージしているのでしょうか。

岡田様  川崎重工とは、50%ずつの折半出資でメディカロイドという会社をつくり、手術支援ロボットの開発を進めています。これは2019年度中の発売をめざしています。現状、手術支援ロボットで上市されているのは米国企業の製品のみです。川崎重工は産業用ロボットで圧倒的な地位と技術力を持っていますし、私たちは医療分野でサービス&サポート、あるいは病院の先生方とのコネクションを持っています。それらを組み合わせれば、きっと面白いことができるのではないかと考え、日本初の手術支援ロボットの開発を開始しました。

伊井  この10年間、私たちはシスメックスに投資し続けてきました。岡田さんにはコモンズ30塾にも登壇していただきましたし、昨年は子供たちも一緒に、機械の生産工場であるアイスクエアにお邪魔しました。その工場は非常に清潔感があり、地元の方々がイキイキ働いているのが印象的でした。この時、参加してくださった子供たちに、「シスメックスに投資し続けても良いか」という質問をしたのですが、この時、子供たちの結論としては、「これからの社会を考えると、シスメックスは世の中になくてはならない企業である」ということでした。

末山  私も一度、アイスクエアに行ったことがあるのですが、本当に清潔感あふれる工場ですね。何といっても名前がアイスクエアですからね。○○工場ではなくアイスクエア。何となく働きやすいイメージが浮かんできますね。

伊井  岡田さんには、コモンズ投信への期待を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

岡田様  あの親子セミナーはとても楽しかった思い出として覚えています。あの時は工場の中を見学していただき、最後に血球計数器を製造する最終工程で部品をはめこむ作業を、親子でやっていただきました。非常に和気あいあいとした雰囲気が出ていて、とても良かったと思います。医療に関わる製品が、世の中でどのような役割を果たしているのかということもわかっていただけたようで、それは実に有意義だったと思います。
またこれからは、個別化医療が台頭してくるでしょう。遺伝子の変異を見て、各人にどのような抗がん剤が合うのかを把握して、個々人に合った医療サービスを提供する。それによって、健康で長生きできる社会を創るお手伝いが出来ればと思います。

伊井  現代社会においては2人に1人がガンに罹患すると言われています。シスメックスの血球検査を使って将来、どのくらいまでガン治療のサポートができるようになるのでしょうか。

岡田様  ガンといっても広いのですが、今は検体検査と遺伝子検査があって、身体から取り出した血液を検査する免疫検査で、ガンになった時に出てくるたんぱく質をマーカーで測るというのは、すでに世界でもあります。ただ、これからはガンになった時、遺伝子を検査し、診断に活かしていくことに、国立ガンセンターと共に取り組んでいます。

伊井  もうひとつ、エーザイと組んでアルツハイマーの分野でも研究を進めていらっしゃいますが、進捗状況はいかがですか。

岡田様  研究開発段階ですが、アルツハイマーを治す薬は、残念ながら今のところありません。ただ、進行を遅らせる薬はあります。そして将来は治す薬ができる可能性も大いにあると思っています。私たちのビジネスは診断のところに関わっているのですが、その診断には頭に針を刺し、脳骨髄液を取り出して脳の中のたんぱく質を測ることで、アルツハイマーであるかどうかを診断します。ただ、この方法だと患者さんの身体的負担が重く、費用も高額です。なので、それを血液から判別する方法ができないものかと考えて、血液中にしみ出てきた脳の中のたんぱくを測る研究を、エーザイと共同で行っています。ガンは徐々に治る病気になってきましたので、次はアルツハイマーの治療に貢献することによって、健康で長生きできる社会をつくることに貢献したいと思います。

伊井  ありがとうございました。

10周年コモンズフェスタ~未来を信じる力~ 開催レポート(京都)

10周年コモンズフェスタ~未来を信じる力~
開催レポート(京都)
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コモンズ投信が、第1号ファンドである「コモンズ30ファンド」を設定して10年が経ちました。
同ファンドが設定されたのは2009年1月。リーマンショックの影響が色濃く残された時で、スタート時の設定額は1億1814万円、お客様の数は153人という小さな、小さな規模での船出でした。
それが今は、大勢のお仲間と出会い、「コモンズ30ファンド」の純資産総額(公募)が約158億円、「ザ・2020ビジョン」の純資産総額(公募)が約40億円で、お客様の数は約8000人にまで成長しました(2019年3月末時点)。
また昨年は、金融庁の求めで投資信託の販売金融機関が公表した、『比較可能な共通KPI』で、運用損益別顧客比率(販売会社で取引しているお客さまのうち、どれくらいの方が利益が出ているか)の数字が97.7%となり、公表した金融機関の中で最高位となりました。これは必ずしもコモンズ投信の運用能力が一番優れていた結果にのみよるものではなく、長期積立投資を啓蒙し続けたきたコモンズ投信、そして何よりも私たちコモンズ投信を信じて長期積立投資をコツコツ続けて下さった大勢のお仲間の力の総和によるものです。
さて、コモンズ投信は次の10年に向けて新たな旅に出ます。それに先立ち、京都と東京で恒例の周年イベントを開催しました。まず、京都で行われた「10周年コモンズフェスタ~未来を信じる力~」の様子をレポートします。
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【レポート目次】

■基調講演
 -講演抄録- 株式会社堀場製作所 代表取締役会長兼グループCEO 堀場厚氏
 「惚れられることで組織の求心力を高める」
 -対談- 堀場製作所堀場厚氏 × コモンズ投信会長渋澤健

■企業との対話
 -プレゼン抄訳- シスメックス株式会社「豊かな健康社会づくりを目指して」
 -トークセッション- コモンズ30ファンドと共に歩んだ10年の足跡

■未来を信じる力を合わせて
 トークセッション


<10周年イベントレポート> -プレゼン抄訳- シスメックス株式会社「豊かな健康社会づくりを目指して」

<企業との対話>
シスメックス株式会社IR・広報部IR課長 表具佑樹氏
「豊かな健康社会づくりを目指して」

シスメックス株式会社IR・広報部IR課長 表具佑樹氏
みなさんこんにちは。シスメックス株式会社IR広報部の表具と申します。
またコモンズ投信の皆さま、本日は10周年おめでとうございます。私どもシスメックスを投資先として選んでいただき、株価の値上がりが一番高かったということで、ちょっとプレッシャーを感じておりますが、20周年、30周年を迎えた時も、同じように言っていただけるように頑張ってまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

会社の概要について簡単に説明させていただきます。
私どもシスメックスは、主にヘルスケア業界でビジネスを行っております。お医者さんが患者さんを診る時、問診、診察・治療、そして完治というプロセスがあるわけですが、私どもシスメックスが手掛けているのは、「検体検査」といわれる領域です。
病気や健康診断で病院に行った時、採血された経験のある方は多いと思うのですが、その血液を測定・分析するための装置や試薬を作っています。具体的には血液の中にある赤血球などの細胞を測定しています。その他、尿検査やHIV並びに肝炎など免疫検査のための製品も作っています。
上場来の業績推移は、お蔭様で非常にきれいな右肩上がりです。好調な業績に支えられて、株価も順調に値上がりしています。しかも、2000年以降は海外における売上高が急速に伸びています。直近20年、海外の売上が堅調だったことが、シスメックスの経営基盤を強固なものにしました。

シスメックスの経営には3つの重要なポイントがあります。
安定した収益性。
成長を支える競争優位性。
高い海外売上構成比
以上について簡単に説明いたします。
第一の安定した収益性についでですが、私たちのビジネスは、プリンターとインクの関係に喩えることができます。
プリンターを買ったら、間違いなくセットでインクを買われるでしょう。したがってプリンターが継続的に購入されている限り、インクやカートリッジの売上も上がります。
私たちのビジネスモデルは、最初に検査をするための装置を販売します。すると、この装置で血液を測るために必要な専用の試薬を、継続的にご購入いただく形になります。この機械は平均で5~8年程度使われるので、一度機械を購入していただければ、5~8年程度は間違いなく試薬の収入が入ってきます。かつ2年目になると保証期間が終わるので、サービスサポート、メンテナンスの費用もいただくことになります。これらによって景気に大きく左右されることなく、長期的に安定した収益が得られるのです。


第二の競争優位性については現在、世界シェア、ナンバー1の分野を3つ持っています。
売上構成比をみると、ヘマトロジーといって血液の中の細胞を数える検査が62%。尿検査が7%。そして血液凝固検査が16%となっているのですが、これら3つの分野で、世界シェア、ナンバー1です。特に血液検査に関しては、市場シェア52%を誇っております。
第三のグローバル展開ですが、私たちは世界70か所以上に拠点を設けています。そして拠点がない国では、代理店を通じてビジネスを展開しており、結果的に現在190カ国以上で製品、サービスなどを提供しております。

シスメックスブースの様子
次に今後の成長戦略についてですが、ポイントは3つあります。
第一は新興国におけるヘルスケア市場の拡大です。世界人口の多くは新興国に偏在していますが、GDPに占める新興国の比率は3割未満です。つまりヘルスケア業界にとって新興国は、これからさらに大きなマーケットに拡大していくポテンシャルを持っています。したがって、私たちはエジプトやトルコ、ミャンマー、ガーナ、コロンビアなど、世界の新興国に新たな拠点を開設している最中です。

第二は患者さんの身体的負担が少ない検査の実現を目指しており、新しい技術を開発しているところです。たとえばガンの検査をする場合、今のところは細胞を取り出して検査する生検が主流ですが、私たちの取組みは、それを血液検査で実現するというものです。これを「リキッドバイオプシー」と言います。これが実現すれば、患者さんの身体的負担はかなり減ります。


第三は、ゲノム医療です。昨年12月、私たちは日本企業として初めて、ガンのゲノム診断に関して、厚生労働省から販売・製造の認可をとることができました。これによって、100以上の遺伝子を同時に診断できるようになります。その結果、ガン患者さんのどの遺伝子に異常があるのかについて、1度に100以上の遺伝子を診断できるようになります。

個人投資家で賑わうシスメックスブース
私たちはビジネスによって得た利益を、社会に還元していきたいと考えています。神戸マラソンの特別協賛や、社員のボランティアによる献血活動、ガン関連のチャリティラン、そしてフィギュアスケート選手のサポートとしては、坂本花織選手と三原舞依選手に所属していただいております。事業における成長だけでなく、社会における貢献活動も重視して、私たちは活動しているのです。


-トークセッション- コモンズ30ファンドと共に歩んだ10年の足跡

【お客さま事例紹介】田中さま(仮名)のコモンズストーリー

こんにちは。

コモンズ投信で仕事をしていると、お客さまの人生の転機やチャレンジに立ち合わせていただく機会があります。
そんなお客さまの人生の一幕をご紹介する『コモンズストーリー』。


今回は、コモンズ投信でつみたて投資してきたお金を息子さんの20歳の誕生日にプレゼントしたお客さまのインタビューを紹介します。
息子さんはコモンズのお金をブラジル旅行資金に役立てることができたそうです。

~田中ゆうこさん(仮名)のコモンズストーリー~

 - 息子さんとのコモンズストーリーを教えてください。

現在息子は20歳。大学2年生です。コモンズで息子名義でつみたてを開始したのは2014年8月。息子が15歳のときでした。4年間、コモンズ30ファンドとザ・2020ビジョンを、それぞれ5000円ずつ積立てていました。2018年8月に晴れて20歳になったので、それを機にコモンズの口座とファンドを渡しました。4年間、月1万円の積み立てで、渡したとき65万円くらいだったと思います。「君がチャレンジに使えるといいなと思ってつみたててきたものだよ。だからこれはあなたが決めて使っていいものだよ。あと、早くからこういったものを知る、慣れることも大事だと思うから、渡します。」と言って渡しました。
少し緊張している感じに親には見えました。受け取った時は、「将来にとっておく」と言ってました。あとから聞いたら「信頼されてるみたいで嬉しかった」そうです。

彼の将来の夢は観光業に関わること。そして大学1年の後半にブラジル一人旅を計画。その資金にコモンズの残高の一部を充てることに。彼にとって縁のある人たちを訪ねる旅でしたが、留学のための奨学金をとるため勉強に励みながら、バイトでは不足していた分を、コモンズ30ファンドとザ・2020ビジョンが補ってくれたようです。

 - 彼の使い道についてどう思いましたか?

時間がたくさんあるという学生ならではの財産と共に、一人旅というチャレンジに使ってくれたことは嬉しいことでした。たくさんの素敵な出逢いと、地球の反対側の景色をその目にしてこれたことは、彼の人生におけるはじめての自分への投資としては、大成功だったのではないでしょうか。帰ってきたときの表情をみてそう感じました。
自分自身で旅行を自力でアレンジしたことで自信を得られたということもあるのでしょうね。今回の旅は一生の宝になったのではないかと思いました。
また、自分でコモンズの口座の管理者を親から本人に書き換えたり、ファンドを売ったりすることも、またもうひとつの新しい経験でした。その様子も、はじめてのチャレンジでドキドキしているようにも見えましたが、コールセンターの方々に優しく対応していただき、自力ですべて対応していました。
改めて、こどもたちというのは、挑戦を積み重ねて成長するのだなと感じましたし、親だけでなくいろいろな制度、人々にサポートしていただいて、こどもたちは大人になっていけるのだと思いました。

 - 息子さんへのメッセージをどうぞ!

お金のことは知ることが大切。自分はどうやってつきあっていきたいのか、自分なりの価値観を育てて探ってみてね。きっとあなたの夢とあなたが暮らす未来の世界に繋がるよ。

 - 最後にコモンズ投信へのメッセージもいただけますか?

プレゼントがきっかけで始めたこどもトラスト!あの時始められていてよかったです。途中子育て&家事&仕事に忙殺される時期を経て(その間はつみたては続けてるだけのほったらかしw)、いざこどもが巣立つ時、お金とのつきあいが始まる時に、つみたててきたものだけでなく、コモンズの考え方も含めて、こどもに手渡せたこと、とてもよかったです。後は小さな失敗をしながらも、自分なりの付き合い方を見出していってくれたらと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

田中ゆうこさん(仮名、女性・東京都・40代)


息子さんは、65万円のうち30万程度を売却して旅の資金にあてて、残りは運用継続中&つみたても継続中、とのこと。
こんな素敵な親子のストーリーのお役に立てたことをコモンズ投信としてもうれしく思います。

私達はいつでも仕事も子育てもがんばる現役世代の皆さまのお役に立ちたいと思っています。
こどもたちへの応援資金だからこそ、長い時間を味方につけて、コツコツしっかり、お金と想いを育てる一歩を踏み出しましょう。

第2回をお楽しみに!!


投資信託は渋沢栄一の「合本主義」の現代版


おはようございます。渋澤健です。先週、新一万円札の刷新で渋沢栄一の肖像が使われることが発表されました。渋沢栄一がクロースアップされる週となりましたが、日本経済新聞コメンテータの梶原誠さんは良いところに目を付けたと思います。

2019/4/13 2:00日本経済新聞 電子版

実は、資本主義の父といわれる渋沢栄一は「資本主義」という言葉を使った形跡がありません。「合本主義」という言葉を使っていました。会社を支配する大株主より少数株主のの方が会社が創造する価値を多数へ分配できて、結果として、国が富むと考えたからです。

渋沢栄一とガチンコの関係だったといわれる三菱財閥の創始者である岩崎弥太郎は才能ある経営者が資本も掌握して会社を舵取るべきと考えたようです。理がある考えで、現在の世の中でも同じような経営者・投資家の存在があります。

一方、栄一はあくまでも合本主義によって会社の利益が多数へ還元され、国が富むことを目指していました。一人ひとりが富むことによって、国が富む。民間力の向上がなくして、国力が高まることがないという考えです。渋沢栄一は、強烈な「未来を信じる力」の持ち主でした。

渋沢栄一が日本初の銀行である第一国立銀行を創立した際の株主募集布告で指摘しています。「銀行は大きな河のようなものだ。銀行に集まってこない金は、溝に溜まっている水やポタポタ垂れている滴と変わりない。折角人を利し国を富ませる能力があっても、その効果はあらわれない。」 
            
これは銀行に集まってくる「お金」だけではなく、少数株主という「滴」にも同じことが言えます。一滴一滴の滴が、共感によって寄り集まり、共助によって互いを補い、「今日よりもよい明日」を共創することが渋沢栄一が提唱した合本主義であると、玄孫(孫の孫)である私は解釈しています。

投資信託とは、小口であっても複数の会社の少数株主になれる金融商品です。

ただ、「機能」としてだけの投資信託ではなく、
「今日よりもよい明日」を共創するという「意味」も必要になると思っています。

投資信託を通じて、様々な出会い、気づき、自己実現、成長、つながり、そして、感謝。
このような「意味」がある投資信託、すなわち、合本主義の現代版をコモンズ投信は目指しています。

ぜひ、ご一緒にコモンズのお仲間にお入りください!



<10周年こどもトラストセミナー>お金にはどんな使い方があるでしょう?

<こどもトラストセミナー>

お金にはどんな使い方があるでしょう?
おやつを買う?貯金する?他にはどんな使い方があるかな?

お金には4つの使い方があります。
「使う」「貯める」「寄付する」「ふやす」です。



*お金を使うときに大切なことは、本当にほしいかよ~く考えること。
アレもほしい、コレもほしい、欲しいままにどんどん使っていったらお金はすぐになくなってしまう。

*お金を貯めるっていうのは今ほしいものを少し我慢して、少し先にとてもほしいものを買うこと。
とても欲しいからといって、人からお金を借りてはいけない。
人からお金を借りたら後で自分がほしいものが買えなくなってしまうから。

*お金を寄付するという使い方もある。
困っている人、応援したい人を自分の代わりにお金で手伝うこと。
たとえば100円あればブータンのこども10人分の給食を買うことができる。
何もかも我慢して寄付をするのがいいと言っているわけではないよ。
でもお金を使うときには、そのお金でできること、お金の価値をしっかり考えて使おうね。

*4つめの使い方はふやす。
使う(マイナス)なのにふえる(プラス)ってどういうこと?!
お金が育つってどういうこと?
ためるとふやすはどう違う???

お金は「成長するものに代えておくとふえる」、これを投資と言います。
成長して価値があがる、というのが”お金が育つ”のからくりです。

ただ、忘れてはいけないポイントがあって
成長するものに代えておく間、「栄養」「愛情」「時間」を注ぐ(かける)こと。

そうすれば大きく大きくお金が育つっていうわけ。


・・・「栄養」「愛情」「時間」を注ぐ(かける)のは企業活動そのもの。
・・・そして、企業と共に歩むコモンズ投信の運用スタンスにも直結する考えです。

4/6(土)に開催された10周年コモンズフェスタでは
メイン会場でおとなが聞いていることと同じ内容を
こどもたちはホワイエでお勉強していたのでした。

大きくなるには「栄養が必要」
大きくなるには「愛情が必要」
大きくなるには「時間が必要」

こどもたち、覚えてくれたかな?



※お金の教室はハッピー・マネー四分法の考え方をベースにして作成しています。

10周年コモンズフェスタ!感謝!

おはようございます。渋澤健です。土曜日(4月6日)に東京大手町で開催した10周年コモンズフェスタにお越しくださった皆様、本当にありがとうございました!穏やかな晴天に恵まれ、大勢のご参加をいただけましたこと、心より御礼を申し上げます。

詳細なレポートは後日に改めて掲載されますが、ご参加できなかった方々でも下記で当日の雰囲気をどうぞお楽しみください。



開会前に着々と準備を進め、良いテンションが高まります!


今回のフェスタの運営にはコモンズ投信社員は総出動。大学生、そして、「コモボラ」(コモンズ投信の受益者)もボランティアスタッフとして入っていただきました。「お客様」が一緒に運営側に入っていただけるとは、コモンズ投信は何と幸せな会社なんでしょう。感謝!



さて、準備やリハーサルも完了し、時間通りに開会です!


トップ・バッターは株式会社ベネッセ・ホールディングス、代表取締役社長の安達保さんの基調講演です。2014年の個人情報漏えい事件で経営トップが交代した2016年10月にご就任されてから、個人投資家向けの講演は今回が初めてだったようで大変光栄でした。


コモンズ投信は「モノ申す株主」です。ただ、あくまでも「対話」を。真なる長期的な姿勢で。そして、我々の(直販の)受益者のうちおよそ16%を占める子どもたちがコモンズ30ファンドを通じて間接的にベネッセの株主です。子どもたちが社長への手紙を書いた「エンゲージメント」の後の記念写真。いい笑顔です!


投資先企業の経営トップに、コモンズが提供する対話の場にご参加いただき、私たちの投資理念を理解していただけるのは本当に大事なことだと思います。お忙しいところ、講演にお越しくださった安達社長、およびベネッセのIR部等の皆さまに心より御礼を申し上げます。


さて、会場では、コモンズ30ファンドの投資先企業のIR担当のプレゼンおよびパネルディスカッションが続きます。


登壇していただいた旭化成株式会社エーザイ株式会社、そして、東京エレクトロン株式会社は、ベネッセと同様、コモンズ30ファンドの運用初期から投資を継続しているベテランプレイヤーたちです。


そして、コモンズ投信が「本業」と掲げている寄付活動もご報告するセッションも設けて、コモンズ30ファンドの信託報酬を財源とするコモンズSEEDCapの応援先の認定NPO法人PIECES、および、ザ・2020ビジョンの信託報酬を財源とするコモンズPOINTの応援先の一般社団法人日本知的障害者水泳連盟のご紹介もいたしました。


さて、会場の外のホワイエでは、コモンズTシャツなどのポップアップストアも設けました。そこそこ売れたようですw。


そして、この風船は、、




キッズに用意しました!


もちろん、お遊びだけではなく、こどもトラストセミナーで、お金の教室、貯金箱づくり、寄付の教室などお勉強もちゃんとしました。これほどキッズがたくさん集まる投資セミナーは、コモンズ投信の他に無いのではないでしょうか!日本全国のファミリーに長期投資をご提供する投信会社として、とてもうれしいです。


こちらベビーくん達は、コモンズ投信のお仲間(受益者)の最年少クラス!こども達がすくすくと育ちながら、資産もすくすくと育つ。これが、コモンズ投信が目指す長期投資です!


今回は、コモンズのお仲間より、口座開設していない方々のお申込みの方が多く、コモンズ投信への関心が広まっている手触り感があって、とてもうれしく思います。たくさんの方々から、応援メッセージの寄せ書きをいただきました♪どうもありがとうございます!


長時間、最後まで会場に残ってくださった皆さんと記念写真! 


最後に、改めて、今回のフェスタの運営にボランティアスタッフと入っていただいた大学生と「コモボラ」の皆さんに心より感謝を申し上げます。このような近い距離感がいつでも「顧客本位」とは言えないでしょう。でも、一緒に喜んでくださるお仲間がいることは、これからの金融においては「本位」だと思います!本当にありがとうございました!