<10周年イベントレポート> -対談- ベネッセホールディングス安達保氏 × コモンズ投信会長渋澤健
2019年4月26日金曜日
<対談>安達保氏(株式会社ベネッセホールディングス代表取締役社長)
渋澤健(コモンズ投信株式会社取締役会長)
「対話力があるからこそ可能になった長期投資」
渋澤 ベネッセは、コモンズ30ファンドのかなり初期から投資している会社です。「よく生きる」という言葉にあるように、人間の生涯における、さまざまなステージで巡り合う仕事をされている会社です。コモンズ投信もロゴが親子をかたどっているようにファミリーを支える会社でありたいと思っています。そういう2社が投資というかたちでもタッグを組めば何か素敵なことが起こせるのではないかという期待もありました。
また、私たちが投資で大事にしているのは「対話」です。この点において、ベネッセは対話感が優れた会社であるということも重要な要素でした。
コモンズ投信取締役会長 渋澤健 |
安達さんがベネッセの代表取締役社長に就任された時、現場を回って、いろいろなお話をされたということですが、その時と今とでは、どういう点が変わってきたと思われますか。
安達様 社長に就任した時、社員の方々と話をしましたが、ベネッセは、この手の対話をすると、多くの社員がアンケートを書いて感想を述べてくれます。最初の洗礼とでも言いますか、非常に厳しいことを書かれていました。「前の社長と言っていることが変わらないのでは?」とか「この人は本当にベネッセの価値観を理解しているのだろうか」といった厳しい意見の羅列で、正直そのアンケート読んでいると、暗くなりました。その後もこのような会を続けてきました。ただ、つい最近の創業日の朝礼で私がサステナビリティの話をした時、皆の賛成、共感という熱っぽさが伝わってきました。
ベネッセホールディングス代表取締役社長 安達保氏 |
この2年半で、ほんの僅かですが、私への信頼も少しは高まったのかなとは思います。加えて、どの方向に進めば良いのかについても、徐々にコンセンサスが取れてきたのではないかと思います。
渋澤 現場の声が安達さんのところまで上がってくる仕組み、取り組みはどのようなものなのですか。
安達様 まずアンケートです。広報経由で、何か会が開かれた時は必ずその感想を教えて下さいと社員に周知されます。また、これは会社のカルチャーかも知れませんが、社員もかなり細かく感想や意見を書いてくれます。
またラウンドテーブルに行く時は、上司と部下で来ないでくれと言ってあります。それは、上司に気を遣うことなく、現場の声をきちんと吸い上げるためです。また、私が出したメールへの返信もよく来ます。
渋澤 日本の大企業になると、社長の顔を見たのは入社式以来なんてことが普通に起こります。その点、ベネッセの取組みはとてもいいですね。
ところで、ベネッセの株式は配当利回りが高いという印象でしたが、昨今はM&A戦略を推進するため、配当を下げました。何か社内的な変化はありましたか。
安達様 配当下げたことで、社員が何かを感じているかというと、それはほとんどないでしょう。業績が下がっていたので、減配もやむなしという認識だったのではないでしょうか。キャッシュフローから考えると、高い配当によって内部留保がどんどん取り崩されていましたから、この会社を永続的に成長させるためには、配当の方針を変えるのはもちろん、必要な投資をきちんと行っていく必要がありました。それは私だけでなく、社員も同じ認識だったと思います。
渋澤 こどもちゃれんじの海外展開のポテンシャルはいかがですか。
安達様 しまじろうは、子供が育っていく成長の過程をサポートする、たいへん良い教材だと思います。生活習慣は、国によって異なる部分はありますが、世界共通の部分も非常に多いと思うのです。だから、生活習慣を学ぶことのできる非常に質のよい教材という意味では、どこの国でも使ってもらえるポテンシャルはあると考えています。しまじろうは生後3ヶ月からを対象としてますが、中国などでは生活習慣だけでなく勉強も提供してほしいというニーズがあります。私たちは時代の変化やお客さんのニーズの変化によって、サービスや商品も変えていく必要があります。
渋澤 介護についてですが、どのような方向を目指しているのですか。
安達様 入居しておられる方、一人一人にとって、その方らしい生活を提供することです。「ベネッセの介護」は“徹底的に、とことんその人に寄り添う”ということを一番に考えて大切にしています。そのような価値観を持っていることが、ベネッセの介護で働く人たちの要件で、M&Aで事業拡大することは、すぐにはこの価値観を共有することが難しいので、やはり自分たちで一から作っていくことが多いです。
受益者とともに行った直島ツアー(2014年2月) |
安達様 AIやデジタルが広まったとしても、それらに取って変わらないもの、それは感性や感じることだと思います。その象徴的な場になるとすれば、それは非常に良いことで、社員にも、ベネッセが直島を持っていることに誇りを持ってもらってよいと思っています。直島は日本よりも海外で知られています。海外にベネッセのブランドを発信していくための、非常に大きなツールになると思います。
しゃちょうさんへの手紙 |