(2)アベノミクス3本目の矢がいよいよ花開く

2020年、その先へ
~あの頃の未来に僕らはたっているのだろうか~

■アベノミクス3本目の矢がいよいよ花開く

―  著書(2020年までに資産を倍にする法)の中では、2014年以降、2020年までを3つのステージに分けて予想していましたが、すでに足元ではその最後の局面、2016年7月~2020年までの局面にあります。そこでは、アベノミクス3本目の矢(成長戦略)がいよいよ花開くステージにあるだろうということでしたが。

即効性のあるコーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード(※)の効果が強く出ると予想していました。これは究極には日本企業の稼ぐ力、すなわちROE(株主資本利益率=株主から預かった資本を元手に、1年間でどれくらい稼ぐことができたかを見る指標)の上昇が目的でした。2014年時点では、日本企業の平均のROEは9.1%と、他の先進主要国が10~17%の水準にあるのに比べてもとても低かったのです(P69)。
もちろん、これは本来、個々の企業の努力に委ねられるものであって、しっかり結果を出せばそれに株価はついてくるわけですから、本来政策云々ではありません。
しかし、日本企業は総じてそれが低いことが問題視されてきました。言い換えれば、まだまだ資本効率を上げながらしっかり稼ぐ余地がある、とも言えるわけです。

―  これを後押ししたのが、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードだったというわけですね。

そうです。コーポレートガバナンス・コードとは、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化に向けて、企業が尊重すべき事項を定めた規範です。具体的には、株主との対話促進や、持ち合い株を保有する理由・方針の開示、女性を含めた多様性確保の推進、独立社外取締役を2人以上選任すること、などの規範を定めました。これは義務ではなく任意適用ではありましたが、守れない場合は、その理由を開示する義務があるのです。

―  企業経営に緊張感が生まれますね。

その通りです。そして実際は、企業統治に真剣に取り組んでいた企業というよりは、その”余地”の大きかった企業にとって大きな契機となりました。いかに資本効率を高めるか、株主還元は適切か、社外の意見をいかに取り入れるか、など、直接であれ間接であれ、ROEを高めるために必要な要素に期限付きで取り組まねばならなくなったわけです。

―  スチュワードシップ・コードの整備はどんな役割を果たしましたか?

スチュワードシップ・コードは、企業の持続的な成長を促す観点から機関投資家(コモンズ投信もそのひとつ)が、受託者としての責任を果たすための原則です。具体的には、株主としての議決権の行使にあたって、運用会社としての方針を示したり、その行使結果を公表するなどです。例えば、取締役の選任や、配当金額の決定に関する議案などでは、自分たちが掲げた原則に従って賛成・反対票を投じることになります。これまで日本企業の中には株式の持ち合いなど、なれ合いともとれる関係の中で議決権行使においても”甘え”がないとはいえない状況がありました。しかしこの原則に則って機関投資家が受託者責任をしっかり果たしていくことになるので、企業にとっても、企業価値を上げるための努力がより要求されることになるのです。

―  これら2つのコードが、まさに「日本企業の稼ぐ力」を高める施策だったのですね。

そうです。そして今、これらがスタートして3年目になり、いよいよその成果が具体的に現れる局面に入ってきています。こうしたことをこれまで当たり前のようにやっていた企業より、まだまだ手付かずだった企業が3年かけていよいよ成果を問われるときがやってきていると言えるのです。2018年の株主総会では、大きな変化が見られると思っています。

(※)コーポレートガバナンス・コード・・・企業が自らの経営のチェック体制を明確にした規範。企業の持続的成長、及び中長期的企業価値の向上が目的。上場企業は当コードの実施、実施しない場合はその理由の明記が求められる。
スチュワードシップ・コード・・・機関投資家(お客様の資金を代わって運用する企業)に定められた行動規範。機関投資家は、お客様の利益のために、投資先企業に対して持続的かつ中長期的な成長を積極的に要求すべきだという考え方。投資先企業の成長が不十分な場合は、経営者の交代を要求する。

次のページへ:(3)ここから2020年、そしてそれ以降