こういうときこそ、投資の本質を貫く心構え


おはようございます。渋澤健です。この週末の紙面は、やはりこの衝撃的なニュースが一面を大きく取り上げられました。週明けから、世界のマーケットは、この新たな展開を消化しなければなりません。ただ、マーケットの役目は試行錯誤を繰り返しながらMarket Clearing Price(受給均衡価格)を探すことです。いずれ、落ち着くべきところに、落ち着きます。




「ショック」という言葉が、これから使われるでしょう。ただ、正確にはいえば「油断」だったと思います。離脱の可能性は十分予測されていたことですが、国民投票のちょっと前からの世論調査で残留の予測(祈願?)がマーケットに広まりました。株式市場など、それまで下がっていたマーケットが一転して上昇し始めます。

過去に私が勤めていたヘッジファンド業界の帽子をかぶれは、あ~これは残留という結果になってもさらなる上昇は難しいだろうし、かえって離脱するような結果が出れば、かなりの衝撃がマーケットに走るだろうなという感覚でした。だから、そういう意味では、離脱や下落幅は予想していませんでしたが、「ショック」そのものには驚きませんでした。

同じ帽子をかぶりながら、今後の展開はどうなるかと考えると、まずカバー(買戻し)が入ると思います。報道されているように、英国がEUから離脱するには2年ぐらいの年月がかかりそうです。実態経済の影響は、まだまだ先になります。

問題は、その後からです。不確実性がかなり残ります。英国の行動が他のEU諸国の離脱へと広まるか。大西洋の向こう側ではトランプ現象に勢いが増すかもしれません。中国から見れば自分たちが支配する領域からの離脱はありえなく、強硬的な姿勢を示すかもしれない。そして、我が国、日本は。。。。?

5月のサミットでは首相が「リーマン・ショック級の前夜」というような表現で財政出動の後押しを他の首脳に促しまたことが、見事に当たったという意見もあります。そのショックの定義が株式暴落幅であれば、その通りでしょう。

でも、経済的な観点から考えると「リーマン・ショック」と今回の「Brexitショック」は根本的に異なります。リーマン・ショックは民間セクターの過剰なレバッレジが原因で世界の金融システムの健全性が問われた出来事です。現在では、このような民間レバッレジはありません。

むしろ、現在、見え隠れしている問題は公的セクターのレバッレジです。政府という存在は永遠にお金を刷って、お金を借りれることができると主張する識者たちも少なくないので、やっかいです。

今回のBrexitの本質は、今までの成長が埋められなかった格差の不満、それが既存の政府・政治システムへの不満に市民が声を上げたことです。年寄りの世代は元に戻りたい、若い世代は新しい世を拓きたいという世代の意識格差もあります。

じゃあ、長期投資家の帽子をかぶったとき、現状をどのように考えるか。

投資の本質を貫く心構えが大切だと思います。

投資の本質は「価値」と「価格」の差異を見据えて行動することです。ただ、多くの場合、企業の価格である株価を、価値と勘違いする傾向があります。つまり、株価が下がることは価値が下がるので手放したい。株価が上がると価値が高まると思うので買いたくなる。だたら、常に、高い価格で買いたくなり、安い価格で売りたくなりますね。。。。これが投資の本質とはいえない。

現状では、急激な円高になったので今後の業績悪化が懸念される日本の輸出企業の株価も下がるので手放したい、あるいは空売りしたい。。これは短期的な視野であれば、合理的な考えかもしれません。

ただ、長期的視野から状況を見たとき、現在の世界情勢によって感情的に円高にいる状態が、特に日本の財政赤字・金融政策で、これからずっと続くのか。短期的な視野では「ずっと」かもしれませんが、長期的な視野では「ずっと」ではないでしょう。むしろ、これは900兆円という円現金を抱えている日本の家計が有利的な条件で円を売れる絶好の、最後のチャンスかもしれません。

また、日本の輸出企業は何回も過去に円高に悩まされてきました。そして、それを乗り越えてきました。つまり、鍛えられているんです。そのような鍛えられた会社の本質的な価値が棄損しているとは思えません。また、人口が増えている世界では、日本の優良企業が提供する製品などでより豊かな生活に恵まれる可能性があります。このような会社の価値が棄損されているとも思えません。

短期的な、感情的な要素で価格(株価)が安くなっているかもしれない。しかし、その会社の本質的な価値は棄損されていない。価値と価格の差異を見据えるのであれば、長期的な、合理的な行動は明らかだと思います。

新しい世界情勢には、繰り返しますが、いずれマーケットは均衡を見出します。新しい世界情勢に、いずれ優良企業は進化できます。長期投資の帽子をかぶった視野を持てば、このような世の中が見えてくると思います。焦ること、ありません。